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2019.03.13(2019.03.15 更新)

海外NGOとの交流~地域住民と守るベンガルトラ~

報告

専門度:専門度2

▲南インドにおける野生動物の研究をまとめた本と、保全活動を紹介した記録映像。

テーマ:生息環境保全

3月6日に、日本自然保護協会に、インド自然保護財団(NCF)でプロジェクトコーディネーターをされているサントスさんが訪問、国際自然保護連合(IUCN)会員団体と共に、ベンガルトラの保全の取組についてお話をうかがいました。


サントスさんは、世界自然遺産でもあるインド西ガーツ山脈の南端のベンガル地域でトラ保全事業に従事されています。

この地域には、40年前にトラの保護のために設立されたBRT野生動物サンクチュアリ(Biligiri Ranga Temple wildlife sanctuary)があり60頭近いトラが生息していましたが、中々個体数が増えるなどの改善が得られなかったそうです。

その生息状況を改善するため、BRT野生動物サンクチュアリに連結する形で2つの新しい保護区を設立を提案、2013年と2014年に二つの保護区が実現しました。これにより、BRTサンクチュアリもあわせて、2500平方キロメートル(神奈川県とほぼ同じ)の森林が新たにトラの生息地となることになりました。

トラだけではなく、ドール(アカオオカミ)やゾウ、ヒョウなども生息する野生動物の豊かな地域であり、かつ、6000万人の人々の飲み水や農地用水を、この保護区の森が水源となって守っていることから、人々の生活にとっても欠かせない森となっているそうです。

2000年代初めまでこの森には、高度に組織化された密猟集団がいたそうです。そのために森に人が近寄ることもできず、自然環境調査も出来ていませんでした。密猟集団は、野生動物を違法に捕獲し、象牙や毛皮などの違法野生動物取引にも関与していたそうです。

違法捕獲によって、野生動物も殆どいないのではないかと考えら得てきたそうですが、この密猟集団が逮捕されてから、インド自然保護財団がセンサーカメラなどの調査を始め、豊かな自然が残されていることを明らかにしました。

サントスさんは、現在、企業に勤めるエンジニアリングをされています。その傍ら、自然保護財団のトラ保全事業の中で、保護区と保護区が丁度連結している1.6キロメートルの森を現場に、地域住民の理解向上や連結部分を走っている道路による悪影響の緩和のための科学的調査を担当しています。

エンジニアの技術を活かし、GISやセンサーカメラ、AI技術をつかったセンサーカメラの解析精度向上などに取り組み、インド英字紙デカンヘラルドの「2019年に期待する19人」に選ばれています。(https://19in19.deccanherald.com/santhosh-sl

保護区と保護区の隣接部分には4つの集落があるそうです。集落の人々は、野生動物による農作物や人的被害を受け、また、保護区内の木を伐採して燃料にするという暮らしがあり、様々な面で人と自然の衝突に直面していました。

この問題に対して、サントスさんたちの自然保護財団は、被害補償制度の改善や、LGPガス・太陽光発電技術等の提供、演劇をつかった普及啓発などを通じて、また、その効果を科学的に示すことで、地域住民の支援や、IUCNの支援を受けながら事業を展開しているそうです。

 

 

▲Fuelling Change :保護区の地域住民に燃料転換を説得する様子を描いたドキュメンタリー

 

地域の住民の生計や暮らしを、科学的でありながら、同時に地域に根付いて地道に自然保護に貢献する形に変えていく取組が非常に新鮮でした。

サントスさんと、日本とインドでどのような連携が今後ありうるかというテーマで意見交換も行いました。資金的な協力関係も考えられますが、日本で起きている野生動物管理の事例やノウハウの共有なども大いに参考になるのではないかとアイディアも交わされました。

特に、日本自然保護協会が、赤谷プロジェクトで行っているシカの低密度管理の取組や、ニコンさんと協働している動物画像の自動検出技術開発に関心を示されました。

 

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