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2017.09.01(2023.09.22 更新)

新手法でニホンジカの捕獲試験を開始

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専門度:専門度5

テーマ:森林保全獣害問題

フィールド:

ニホンジカの増加を止め、害獣から森の住人へ

2018年度ニホンジカ捕獲試験

ニホンジカの増加は、日本の森における最大の課題です。農林業の被害や生態系の破壊など、たくさんの問題を抱えています。
いま各地で対策が行なわれていますが、被害が確認できるほど数が増えてしまっては、捕獲はもちろん、傷ついた森林管理に膨大なコストが必要となります。
日本自然保護協会では、シカの被害が起きる前の段階で管理・対策が行われていないことに着目しました。森林が長く健全であるためには、シカが増える前の“低密度” の状態で管理することが、不可欠ではないかと考えます。
そこで、群馬県の赤谷の森をフィールドに、日本初となるニホンジカの低密度管理を今年度より行います。害獣として扱われるシカを生み出さないように、野生動物と共存する新しい技術として、この取り組みへのみなさまのご支援をお願いします。


群馬県みなかみ町にある赤谷の森は、昔ながらの森の姿を取り戻すために、長年私たちが活動を行ってきたエリア。2017年にはユネスコのエコパークにも認定されています。赤谷の森では、シカは激増ではないものの着実に個体数が増え、10年後にはかなりの数になると予想されます。その対策として、早い段階(=低密度)でシカの頭数制限を行なっていくことが、このプロジェクトの重要なポイントです。
ニホンジカがまだ少ない段階で効率的に捕獲するためには、学習したシカをつくらないことが重要と考えられるため、シャープシューティングを中心に、低密度エリアにおけるニホンジカの試験的な捕獲を開始し、捕獲技術開発を行ないます。3年間をメドに蓄積した情報と技術は、ニホンジカの高密度化が見込まれる地域で活用できるよう積極的に発信していきます。

 

1 スマートディアを増やさない

10頭のシカに遭遇した場合、すべてのシカを獲ることはできません。生き延びた残りのシカは、銃の音や人の気配に敏感となり、警戒心の高いシカに変身してしまいます。そういったシカをスマートディア(スレジカ)と呼びます。スマートディアが増えると、捕獲の効率は悪化し、多くのコストがかかってしまうのです。

 

2 シャープシューティングを導入します

先ほどのシカ10頭に遭遇した際、どうすればいいでしょう? 答えは、何もしないことです。そのかわりに、3頭程度以下の少数のシカにあった時に全頭を猟ることを目指します。海外ではこのような猟の仕方をシャープシューティングと呼んでいます。スマートディアを生み出さないための技術の一つです。

 

シカが増えると、私たちの飲み水がなくなる?

シカの増加は、人の暮らしにどう影響するのでしょうか? 農林業への被害はもちろんですが、水源に関わることをご存知でしょうか?
シカは下草や樹皮ばかりでなく落葉まで餌にするなど何でも食べます。シカが過度に増加してしまった森林では、下草がなくなって裸地化することにより土壌が流出し、雨が降るたびに土砂崩壊が起こりやすくなり、森が水を蓄える力を失います。そのため、シカの増加した水源林の土砂崩壊を食い止めるために、コンクリートをつかった土木工事が行われている地域もあります。対策に莫大な費用がかかるばかりではなく、自然が失われていく悲しい例ではないでしょうか?
赤谷プロジェクトにおけるシカ管理の取り組みは、シカの影響が顕著ではない段階で低密度状態を維持するとを目的としており,これまでのシカ対策には前例のない画期的な取り組みです。この取り組みは、今後、まだシカの密度の低い地域や、シカの密度を下げることができた地域での管理に役立つことが期待されます。

梶光一(東京農工大学教授/兵庫県森林動物研究センター所長/知床世界遺産地域委員会エゾシカ・陸上生態系ワーキンググループ座長/日本自然保護協会評議員)

エゾシカ・ニホンジカを中心に、野生動物を科学的に管理するための研究と、社会課題を解決するための実践を続けている。赤谷プロジェクトの哺乳類ワーキンググループ座長として、赤谷プロジェクトエリアでのニホンジカのモニタリングと、低密度管理を実現するための検討を進めてきた。

 

赤谷の森でシカの低密度管理を行います。

低密度管理の試みはとても先駆的なものですが、これまで5年にわたり、行政、猟友会、専門家、地域住民、自然保護団体が集まり意見を交わしてきました。そういった地道なプロセスと科学的なモニタリングがあってこそ導き出された取り組みといえます。

▲モニタリングのための誘引物の塩を
舐めにきているニホンジカ

赤谷の森では2008年より、シカのモニタリングを行なっています。一般的には、シカが増加してから調査を行うため、その前段階のデータがあることはとても貴重なこと。

2016年までのシカの分布変遷を見ると、出現地点数は8年間で8.5倍に増えていることがわかります。また、3年間の植生調査では、ニホンジカによる摂食地点数が約3倍に増え、深刻な影響を受けている湿地も確認されました。

 

今後、赤谷の森では、専門チームとともに、シカの低密度管理技術の開発に向けた試験的な活動を行い、まずは2019年(3年後)に、ニホンジカの密度がこれから増加することが見込まれる地域で活用できる知見を積極的に発信する予定です。

 

 


【ご寄付のお願い】

今回の試みは、米国ホワイトバッファロー社などの海外の先進的な捕獲技術を積極的に日本に紹介しているエゾシカ協会の協力により実施されます。それだけでなく、シカは獲った後のことも考えなくてはいけません。このプロジェクトでは、捕獲したニホンジカを地域資源として有効活用する試みも行なっていきます。
今年度、この取り組みを進めるためには最低でも300万円活動費用が必要です。みなさまのご支援よろしくお願いいたします。

 

 

 
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問い合わせ先

TEL:03-3553-4103(担当:出島 松井)

 

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