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2018.03.03

米軍普天間飛行場代替施設建設事業について、沖縄県に要望を出しました

米軍普天間飛行場代替施設建設事業(以下、「同事業」)について、昨年4月より工事が開始されています。

初期段階とはいえこれまでの工事や工事に伴う作業の影響がすでにこの大切な環境に及んでいます。合計300個以上のコンクリートブロックの投入や海草藻場の上で進められている工事などの影響を懸念しています。現在行われている工事は現状回復が困難であるものです。

日本自然保護協会は、沖縄県が現状を把握すべきであるとの考えから、臨時制限区域の中の調査を行うことを沖縄県に要望しました。

20180301_米軍普天間飛行場代替施設建設事業について_要望書(194Kb)


2018年3月2日

沖縄県知事 翁長 雄志 様

公益財団法人 日本自然保護協会

理事長 亀山 章

 

米軍普天間飛行場代替施設建設事業(以下、「同事業」)について、昨年4月より工事が開始されています。同事業が実施されている辺野古・大浦湾一帯は、世界の生物多様性のホットスポットのひとつと認識されている日本でも生物多様性が特に高い地域であり、その豊かさは国内外で認められています。しかし、初期段階とはいえこれまでの工事や工事に伴う作業の影響がすでにこの大切な環境に及んでおり、さらに現在行われている工事は現状回復が困難であるものです。私たちは事業に関して予定地の生物多様性豊かな自然環境を守る市民運動に取り組んでいる立場から意見を述べたいと思います。

 

1)コンクリートブロックなど環境への影響が予測されていない作業

この海域には大小さまざまなサイズのコンクリートブロックが計300個以上設置されていますが、これらが環境に及ぼす影響は同事業の環境影響評価で予測されていません。これらのブロックはサンゴや海草は避けて設置されているものの、下敷きになっている砂や泥地などにもさまざまな生き物が棲息しています。また大浦湾の生物多様性の豊かさは、海底の地形の多様さが基盤になっているため、ブロック設置により地形の多様さが失われる可能性があります。さらには物理的な破壊でなくても海流の変化など生態系に影響が出る可能性が高いものです(日本自然保護協会、2013)。

 

2)船舶の航行、作業時間

同海域には2014年以来多数の船が走行していますが、すべての船がジュゴンやウミガメ類との衝突を避けられるスピードでは航行していません。また日の出1時間後に作業を開始し、日の入り1時間前に作業を終了するという環境保全措置も守られていません。事業者の「できるだけ回避している」とは言い難い現状です。周辺環境に及んでいる影響を把握することが必要です。

 

3)ジュゴンの個体Cの行動への影響

ジュゴンの行動には大きな影響が及んでいる可能性が極めて高いことを指摘してきました。(日本自然保護協会、2014)。 1990年代は沖縄島東海岸にて多くのジュゴンの目視記録や食痕の記録がありました。環境影響評価およびその事前調査の際にはジュゴンの本海域の利用記録はなくなりましたが、同評価終了後には、徐々にジュゴンの食痕の記録が辺野古・大浦湾に戻り、2014年には臨時制限区域の内外でジュゴンの個体Cのものと思われる食痕が数多く記録されました(U.S.Marine Corps Recommended Findings 2014、沖縄防衛局 2015など)。その後、臨時制限区域における利用の記録はなく、また毎年春に個体Cが利用していたチリビシのミドリイシ群集付近の水深19mに広がるトゲウミヒルモ群集においても2015年春を最後に利用の記録がありません(沖縄防衛局、2015と2016)。 つまり、ジュゴンの生息域であった辺野古・大浦湾をジュゴンが放棄せざるを得ないようなことが起こったことが推測され、音に敏感なジュゴンがボーリング調査や警戒船に伴い生じる騒音に影響されたものと考えられます。

 

4) 藻場の喪失

キャンプ・シュワブ大浦湾側(美謝川河口付近)には海草藻場が広がっており、その場所にK9護岸が建てられています。この護岸や護岸付近で行われている作業により個体Cが利用していた海草藻場に影響が及んでいる可能性が高いと考えられます。 加えて、現在4つの護岸工事が進められているシュワブ南側には沖縄島周辺で最大の規模の海草藻場があり、工事の影響は計り知れません。泡瀬干潟の埋め立て工事においても、工事を行う場合の影響は直接の改変地のみにとどまらず、周辺の自然環境にも及ぶことが知られています。(日本自然保護協会、2007)

 

5)水中に設置する機械

これまでに連結式サンゴ幼生着床具、水中撮影器材、パッシブソナーなどの機器を海底に設置する調査が行われてきましたが、いずれも、物理的に海底を破壊する形で設置されてきました。サンゴ着床具は合計38個、水中録音装置は18個の設置が予定され、また規模すらも不明である「中間育成の場となる海底基盤」(沖防5223号)についても検討されています。これらすべての海底に設置する物が周辺環境に与える影響を測る必要があります。

 

6) 生物の移動・移植・造成の計画の全体像

日本サンゴ礁学会サンゴ礁保全委員会が公表した造礁サンゴ移植の現状と課題 (2008) に「サンゴ礁保全・再生に移植がどの程度寄与するのか、またどのようにすれば寄与できるのか、十分に検討されているわけでない」と見解が示されているように、サンゴの移植はまだ確立した技術ではなく、不確実性が伴います。 事業者がこれまでに示したサンゴ移植計画は不備があるものであり(日本サンゴ礁学会保全委員会、2017など)、そのうえ事業者は、サンゴ移植を工事と平行して行うことを予定しています。平時でも移植されたサンゴに大きなストレスを与えるものであるにも関わらず、工事実施と並行で行えば工事による直接な影響により弱っているサンゴを移植することになり、移植先において生残率がさらに低下することとなります。 サンゴ以外の生物についても同様の問題があり、すでに底生生物等の一部の生物の移動が行われています(沖縄防衛局、2016)。また、今後は海草造成も予定されています。 生物の移動や移植に伴う問題点は指摘している通りであり(日本自然保護協会、2013)沖縄県はサンゴ移植や海草造成など計画の全てを把握したうえで総合的に判断すべきであると考えます。

 

7)2014年4月15日づけの海兵隊司令部保全部のSue Goodfellow博士から出された行動メモ

これには、事前に出された調査報告書の内容について、国防総省が日本政府と協議し、日本政府から指摘され訂正した2カ所についての説明があります。日本政府が、仲井眞前知事の埋立て承認の際に、県や自治体を含めた委員会(原文ではCouncil)の設置の提案についてどのように認識していたかを示しているので、沖縄県にはご確認いただきたい。 環境におよぶ影響は複合的、長期的に起こる可能性があるのでその観点から再度影響を予測し直すべきです。沖縄県はこれまでに生じている環境への影響を把握することが急務であると考えます。

以上の意見をもとにして次の2点について要望いたします

 

1. 沖縄県が臨時制限区域の中を調査すること。特に以下の3か所について重点的に行うこと。

(1) 辺野古崎の大浦湾側 2014年にジュゴン個体Cにより利用された海草藻場があり、現在K9護岸が作られている場所

(2) 辺野古崎の辺野古側 現在4つの護岸工事が行われている場所

(3)臨時制限区域内でコンクリートブロックが設置されている場所(複数)

 

2.1の調査に日本自然保護協会も同行させてください。

 


<添付>

Action Memo from Dr. Sue Goodfellow, HQMC LF, Singed by Deputy Assistant Secretary of the Navy (Environment) Donald R. Schregardus April 15, 2014 [海兵隊司令部保全部のSue Goodfellow博士からの行動メモ、海軍副次官補 (環境部)Donald R. Schregardus氏が2014年4月15日に署名]

 

<参考>

1)「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書(補正後)」への意見

2)日本自然保護協会(2014).記者会見資料「辺野古/環境アセス後に判明した新たな事実を発表」

3)国防総省 (ジュゴン訴訟被告) による国家歴史保存法遵守手続き終了報告/通知(2014.4.16) U.S. Marine Corps Recommended Findings April 2014 [米国海兵隊推薦調査報告書 2014年4月]

4) 沖縄防衛局(2013)普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価(補正後) 日本自然保護協会(2007)

5) 沖縄防衛局(2015)シュワブ(H25)水域生物等調査報告書

6) 沖縄防衛局(2016)シュワブ(H26)水域生物等調査報告書

7)沖縄防衛局(2017)環境等監視委員会資料「底生動物等の移動・移植について」

8)Action Memo from Dr. Sue Goodfellow, HQMC LF, Singed by Deputy Assistant Secretary of the Navy (Environment) Donald R. Schregardus April 15, 2014 [海兵隊司令部保全部のSue Goodfellow博士からの行動メモ、海軍副次官補 (環境部)Donald R. Schregardus氏が2014年4月15日に署名]

補足: 3)の U.S. Marine Corps Recommended Findings April 2014(海兵隊推薦調査報告書)は、国防総省 (ジュゴン訴訟被告) が、2008年1月の連邦地裁の命令に従い、国家歴史保存法遵守手続きにもとづき作成した報告書である。

 

▲ 工事が進む現場。水上からは見えない場所でも多くのことが起きています。

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