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沖縄・辺野古/ジュゴンの新たな食痕、わずか2ヶ月で110本以上の記録、日本初のサンゴ礫付着成長の鍾乳石が発見されました!

2014.07.09
活動報告

北限のジュゴン調査チーム・ザンと一緒に調査を行った結果を追加しました(7月15日)。

2014年7月15日改訂版プレスリリース(PDF/2.58MB)

8月22日に行った調査結果を追加した結果を追加しました(9月3日)。

2014年9月3日改訂版プレスリリース(PDF/5.27MB)


辺野古/環境アセス後に判明した新たな事実を発表!

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普天間飛行場代替施設建設事業のため、辺野古・大浦湾では7月1日から陸上部分の工事が着工され、7月下旬からボーリング調査が予定されています。しかし、環境アセス後に、以下のような新たな事実が判明しており、日本自然保護協会では、埋立事業の中止と辺野古・大浦湾の保全を求めます。

発表要旨

はじめに

今回発表する事柄のうち、1)は北限のジュゴン調査チーム・ザンに調査結果をご提供いただき、日本自然保護協会が2000年代はじめより行ってきた結果などの知見を併せ、考察したものである。2)は甲殻類の研究者である藤田喜久氏(琉球大学・海の自然史研究所)に写真の提供を受け、その写真を浦田健作博士(専攻 カルスト・システム学、洞窟学、日本洞窟学会副会長)、浅海竜司博士(琉球大学理学部物質地球科学科)の2名にご覧いただきコメントをいただいた。3)はダイビングチームすなっくスナフキンが作成した資料や集めた情報を提供いただき、当協会が調査や収集を行ってきた情報と併せたものである。4)は2013年6月に沖縄防衛局が沖縄県に提出した公有水面埋立承認願書に基づいた当協会の分析である。1)~4)のすべてが普天間飛行場代替施設建設事業により失われようとしている辺野古・大浦湾の生物多様性の豊かさと関連するため、この機会に発表するに至った。

1)ジュゴンの新たな食痕が、わずか2か月で110本以上記録されました

2005年以降、辺野古・大浦湾のジュゴンの食痕記録は少なく、環境アセスでは、この海域の利用は少ないと予測していました。しかし、2009年以降、ジュゴンは再びこの海域を利用しはじめ、利用頻度は3年間で驚くほど増えています。今年はわずか2か月の調査で埋め立て予定地内で合計110本以上の食痕を記録しました。

2)日本初の、サンゴ礫が付着して成長した鍾乳石が発見されました

地域住民の憩いの場である辺野古沖にある長島の洞窟は、学術的に大変価値の高い鍾乳洞であることがわかりました。サンゴ礫が付着して成長した鍾乳石は、日本では報告例のない初の発見です。

3)新種や日本初記録の生物種が次々に見つかり続けています

事業者が実施した環境アセス調査の結果からも本海域の生物多様性の豊かさや、多くの絶滅危惧種が生息していることがわかりますが、環境アセス終了後にも、多分野の研究により、新種や、日本初記録の生物種などの発見が続いています。

4)環境アセス終了後に明らかになった、本事業が環境に与える影響

環境アセスの過程で情報の隠ぺいや後出しが多くありましたが、公有水面埋立手続きの過程でも、構造物の大きさが大幅に拡大されるなど、予測評価されていない環境への改変の可能性があることが判明しました。

1)ジュゴンの新たな食痕が、わずか2か月で110本以上記録されました

(1)ジュゴンのこれまでの辺野古・大浦湾の利用状況(食痕)

1990年代後半のジュゴンの目視および食痕の有無の調査結果によると、ジュゴンの目視記録は東海岸に多くみられる(図1)。

ジュゴンは草食性であり、海草(うみくさ)を餌としている。ジュゴンが海草を食べると、ジュゴントレンチと呼ばれる長さ1~3メートルほどの溝のような跡が残る(図2)。

ジュゴンの食痕は、普天間飛行場代替施設建設事業に伴う環境アセスメントのボーリング調査実施(2004年)以前は、本海域の辺野古岬の南側において恒常的に発見されていた(図3)。ジュゴンの食痕は、日本自然保護協会が年に数回、実施してきたジャングサウォッチ(海草藻場調査)においても発見され、環境省の「ジュゴンと藻場の広域調査」(2001~2005年)や、事業者である沖縄防衛局(旧:那覇防衛施設局)の環境アセスメント等の環境調査(1990年代後半~2013年)でも記録されてきた。

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▲図1 ジュゴンの目視記録のまとめ(1990年代)
(制作/ジュゴンネットワーク沖縄)

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▲図2 ジュゴンの食痕。ジュゴンが海草を食べた痕が白っぽく溝状に見える
(1998年 細川太郎氏撮影)

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▲図3 食痕が確認された場所(1999年)
ジュゴン研究会(プロ・ナトゥーラファンド第8期助成成果報告書1999年、
「図4海草群落、食み跡、ジュゴンの日中分布の関係」を改変)

ジュゴンの食痕は、2004年以前は本海域のキャンプ・シュワブの南側において恒常的にみられたが、表1に示すように、2005年~2008年は本海域では見られなかった。おそらくは普天間飛行場代替施設移設事業(沿岸案)に伴う環境調査等や2006年に開始された普天間飛行場代替施設建設事業(V字案)に伴う事前調査や環境アセスメント調査などの環境攪乱が影響したことが推測される。

2009年には、ジュゴンは本海域の大浦湾奥部とキャンプ・シュワブ大浦湾側を利用したことが記録され、2011年以降は大浦湾や辺野古(キャンプ・シュワブ大浦湾側)に頻繁に現れるようになった。特に、2012年以降は利用頻度も高くなっている。これらの事実は沖縄防衛局の自主的な調査(シュワブ水域生物等調査)および、市民による発見によって明らかになってきた。

環境アセスメント(2012年12月、評価書(補正後))では、2012年までの調査結果をもって、ジュゴンによるこの海域の利用は少ないと予測していた。
 

表1 辺野古・大浦湾海域におけるジュゴンの食痕の確認の履歴
(2013年まで ○食痕あり、×なし)

食痕の有無 調査主体と本数等
2004年まで ジュゴンの食痕がキャンプ・シュワブ南側にて多数確認されている。(環境省、那覇防衛施設局、ジュゴンネットワーク沖縄、ジュゴン研究会、日本自然保護協会など)(2003年9月、普天間飛行場代替施設建設のための地質調査・ボーリング調査開始。2004年4月、那覇防衛施設局による名護市辺野古海域の地質調査・海象調査着工。)
2005年H17 ×
2006年H18 ×
2007年H19 × (事業者によるシュワブ・水域生物等調査/環境アセスメント調査の事前調査等を含む2007~2013)
2008年H20 × (普天間飛行場代替施設建設事業 環境アセスメント調査、2008.3~2009.3)
2009年H21 沖縄防衛局による、キャンプ・シュワブ大浦湾側(大浦湾西部)にて記録あり。
2010年H22 ×  
2011年H23 5月、沖縄防衛局による、キャンプ・シュワブ大浦湾側(大浦湾西部)および大浦湾奥部に記録あり。
6月、市民による食痕の記録あり。
2012年H24 4月に4本、5月に7本の食痕が、辺野古(大浦湾側)にて記録されている。(沖縄防衛局調査)。
2013年H25 3月、市民により大浦湾(チリビシのアオサンゴ群集付近、深場19.6m)の食痕を記録。
沖縄防衛局により、3月に5本、5月に12本、11月に2本の食痕の記録あり。

 

(2)2014年5月~7月のジュゴンの利用記録(食痕)

これまでの認識を大きく変えることが今年5月に明らかになった。「北限のジュゴン調査チーム・ザン」(以下、「チーム・ザン」)の調査により、2014年5月16日から7月5日の期間のみでも以下の地点において、ジュゴンの食痕が確認された。

もっとも注目すべきは2014年のジュゴンの本海域の利用状況である。2013年までもジュゴンによる利用が増える傾向を示してはいるものの、2014年の約2か月の調査では、これまでの数か月に1度という頻度の発見、そして数本から10数本という単位の本数ではなく、市民団体による日数と人数が限られた調査では正確な数を把握できないほどの多くの食痕が残されている(表2)。

また、利用されている位置も大浦湾奥部から陸に近い瀬嵩(大浦湾)、キャンプ・シュワブ大浦湾側と広範囲にわたっている。水深も、従来は浅瀬のみを利用すると考えられていたが、19.6mという深場にある海草藻場も利用していることがわかった。

総合すると、特にキャンプ・シュワブ大浦湾側、つまり普天間代替飛行場移設事業による直接の埋め立て地の中が最も多く利用されている。

20140709zu42014syokkon.jpg▲図4 2014年に確認された食痕。ジュゴンが海草を食べた痕が白っぽく溝状に残っている。2014年6月18日、シュワブ大浦湾側(美謝川河口)
北限のジュゴン調査チーム・ザン提供

表2 2014年のジュゴンの辺野古・大浦湾の利用記録
(北限のジュゴン調査チーム・ザン提供)

調査日 場所 本数 発見者名
5月16日 シュワブ大浦湾側(美謝川河口) 約30本 チーム・ザン
5月21日 シュワブ大浦湾側(vの間) 2本 チーム・ザン
6月1日 シュワブ大浦湾側(美謝川河口) 3本 チーム・ザン
日本自然保護協会など
6月3日 瀬嵩 発見のみ 譜久里茂
6月3日 大浦湾 7本 チーム・ザン
6月5日 瀬嵩 8本 チーム・ザン
6月18日 シュワブ大浦湾側(美謝川河口) 約50本 チーム・ザン
6月22日 シュワブ大浦湾側(美謝川河口) 無計測 QAB、沖縄タイムス取材
7月1日 大浦湾 9本 チーム・ザン
7月5日 シュワブ大浦湾側(美謝川河口) 約30本 チーム・ザン

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▲図5 発見されたジュゴンの食痕の位置(5月16日から7月5日)

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▲図6 図5の大浦湾奥部部分の拡大図 その1

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▲図7 図5の大浦湾奥部部分の拡大図 その2

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▲図8 図5のキャンプ・シュワブ部分拡大図

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▲図9 図8の美謝川河口2014年7月5日分拡大図

沖縄島周辺には現在3頭のジュゴンの生息が確認されており、個体A、個体B、個体Cと名付けられている(沖縄防衛局、2009)。そのうち個体AとCは辺野古の北部に位置する嘉陽の海草藻場を恒常的に利用し、個体Cは時折、辺野古・大浦湾に足を延ばすことがわかっている(沖縄防衛局、2009)。

『普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書の補正後の環境影響評価書』では、「個体C は行動範囲が広いと考えられますが、嘉陽地区の海草藻場を主に利用していると考えられ、辺野古地区前面の海草藻場を利用する可能性は小さいと推測されます。」と記載されている。しかし、今回の調査結果は、明らかにジュゴンが頻繁にこの海域を利用していることを示している。

嘉陽にも海草藻場はあるが8haと面積が小さいことから、若い個体Cがより広い藻場を求めて生息域を拡大し本海域を訪れたものと考えられている。辺野古の海草藻場は、沖縄島周辺最大の規模で面積は173haである。

沖縄のジュゴンの生態はまだ解明されていない。本事業に伴う環境保全措置ではジュゴンの保全は不可能である。事業を即刻中止し、国の天然記念物であり絶滅危惧IA類(CR)(環境省レッドリスト)であるジュゴンを保全すべきである。

 
以下、つづきは>>解説全文(25ページ 3.5MB)を参照ください。


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