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沖縄・辺野古 大浦湾の保全

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2019.12.27

瀬嵩・嘉陽への海草移植についての要望書を出しました。

沖縄防衛局はこれまで辺野古地先の豊原で海草移殖を行ってきましたが、今後、嘉陽と瀬嵩でも移植を行う計画であることを明らかにしました。それについて成功した海草の移植の前例がないこと、嘉陽と瀬嵩に海草を移植する必要性がないこと、ジュゴンの餌場としての海草藻場の重要性などの理由から計画の見直しを要望しました。地元の環境団体と連名で防衛大臣と沖縄防衛局あてに提出しました。

瀬嵩・嘉陽への海草移植についての要望書(PDF/212KB)

 


2019年12月26日

防衛大臣   河野太郎 殿
沖縄防衛局長 田中利則 殿

瀬嵩・嘉陽への海草移植についての要望書

ジュゴンネットワーク沖縄
事務局長  細川 太郎
北限のジュゴン調査チーム・ザン
代表 鈴木 雅子
じゅごんの里
代表 東恩納 琢磨
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

2019年11月12日の第22回環境監視等委員会において、これまで豊原で行われてきた海草の移殖の範囲を拡大し、瀬嵩と嘉陽でも新たに移植が行われることが議論された。移植先である瀬嵩区と嘉陽区には個別に表記の内容の説明があった。この件について20年以上にわたりこれらの海域の海草藻場を観察し続けてきた環境団体として、以下の理由から見直しを要望する

 

1.海草移植が成功する条件
第一として移植による海草藻場の再生は以下の条件を満たすことが必要であるが、嘉陽と瀬嵩については海草藻場が減少しているかどうかすら定量的に把握ができておらず、推移があるとしてもその要因が不明であり、したがって減少した要因(例えば赤土流入など)が取り除かれているという状態ではない。

海草移植の条件については、以下のように考える
①   海草藻場が減少した場所でその要因が明らかである。
②   ①の減少した要因がすでに取り除かれている
③   海草自身の自然な再生産による回復が何らかの理由で起こらない。あるいは、起こるまで待てない。
2.海草移植(造成)の成功例がない
泡瀬干潟の埋め立てに伴いさまざまな方法で海草の移植が試されたものの、全て失敗に終わった(日本自然保護協会、2007)。また辺野古新基地建設に伴う環境アセスメントの際に引用されている文献(水産庁・水産総合研究センター(2008))に示されている内容も、事例紹介にとどまり移植後の生残率や長期観察結果などが書かれておらず、限定された種のみを対象とするなど、移植の成功事例を示すものではない。海外の事例を参照している様子も見られない。環境アセスメントの後に移植実験が行われていたとしても、移植成功の期間が数年間程度に過ぎないものとなる。保全に資する技術であるならば、移植後、10年~15年など長期間にわたる高い生残率を伴う成功の事例が必要である。
また計画を見ると、実験(試験)は本格的な移植作業の前段階であるという位置づけが読み取れるが、実験の成功の基準は何か、示していただきたい。

 

3.海草の移植を行う必要性について
辺野古基地建設による嘉陽・瀬嵩への影響は無いと事業者である沖縄防衛局自身が環境影響評価で示している。影響が無いならば、工事の進行とともに海草移植を行う必要性が不明である。
また生物多様性保全上も必要性が不明である。嘉陽には健全な海草藻場がある。健全な海草藻場を持つ嘉陽への海草移植は生態系の撹乱を招くばかりであり、自然破壊の観点から実施は避けるべきである。
瀬嵩の地先については地元住民数名に聞き取りを行ったところ、かつては海草藻場が広がっていたとのことであった。しかしながらどの種類の海草がどの程度繁茂していたのか、どの程度サンゴと混在していたのかなど詳細は不明である。また海草が減った原因についても不明である。1.に示したように要因を明らかにし、その要因を取り除かない限りは海草を移植してもまた同じことが起こる可能性が高い。また移植を行いかつての状態に戻すことを目的としているのならば、環境監視等委員会の資料に示されているような最近の調査結果だけでなはなく、過去にさかのぼり、過去の調査結果に基づき、海草減少の原因をつきとめ、科学的に行うべきである。

 

4.嘉陽の海草の種子を移植に用いることに関する問題
環境監視等委員会資料によると、すでに嘉陽の海草から採った種子を豊原地先への移植に用いている。この件に関しては日本自然保護協会をはじめとする環境団体は、嘉陽と辺野古(豊原)の海草の遺伝子型が異なる可能性があり、その場合には遺伝子かく乱につながると指摘してきた。その後、遺伝子解析は行われていない(沖縄防衛局交渉、2019年10月)。また今回提示されている計画では嘉陽の海草から採った種子を嘉陽の地先に植えることが伺えるが、この行為については意味が不明である。
嘉陽の海草の種子は、移植などせずそのままの自然状態にしておけば嘉陽の海草の生育に寄与する。上記に述べた通り海草藻場は健全であり、移植が必要な状態ではない。さらに嘉陽の海草の状態に問題があるというのであれば、それは事業者が豊原に移植するために嘉陽の海草から種子を採っていることに起因することが伺える。
嘉陽の海草から採った種子を嘉陽の海に移植する意味を説明し、また嘉陽の海草を瀬嵩に移植するのであればこれらの海草が遺伝的同一であることを証明する必要がある。

 

5.移植する海草の種類について
現在、移殖に用いられている海草の種類はリュウキュウスガモのみであり、ウミヒルモについては今後検討するとあるが、辺野古や嘉陽などの海草藻場では7種類の海草が混在している。これらの海草は目視で識別が可能であり、これは2002年より日本自然保護協会が市民参加型の海草調査ジャングサウォッチにて、市民に同定方法を伝えながら調査を進めてきたことからも明白である(日本自然保護協会、2009)。沖縄防衛局の調査を見ると、海草は海草としてひとくくりに面積等を出している調査が多いが、海草という名前の海草はなく、種類ごとに性質が異なる。
従って、7種の海草のうち限られた種のみを移植し成功しても本来の海草藻場とは異なる機能を持つ場となり、移植先および海域全体に及ぼす影響については不明である。自然状態とはかけ離れた場を人工的に作り上げることには反対である。

 

6.ジュゴンの餌場としての海草藻場の重要性
嘉陽海域は昨年まで20年間以上にわたりジュゴン個体Aが餌場として利用していた貴重な場所であり、瀬嵩でも2014年にジュゴン個体Cによる利用がある(北限のジュゴン調査チーム・ザン、日本自然保護協会、沖縄防衛局)。
ジュゴンが餌場として利用する海草藻場は限られており、被度が高い海草藻場があってもジュゴンが利用するとは限らない。ジュゴンが利用する「条件」がわからないまま海草藻場に人の手を入れることは自然破壊につながる。特にジュゴンがこれまで利用してきた嘉陽や瀬嵩はその条件が整っていることに起因するため、これらの地が持つ条件を解明しないまま海草の種子を採取したり移植したりすることは貴重な自然資源の損失となる。ジュゴンがいつでも戻ってこられるよう、手を付けずに保全するべきである。


参考文献:
日本自然保護協会(2007)埋立事業が泡瀬干潟に与える影響と保全の提言~泡瀬干潟自然環境調査報告書~。日本自然保護協会報告書第95号
日本自然保護協会(2007)沖縄島北部東海岸における海草叔母モニタリング調査報告書。日本自然保護協会 第97号
日本自然保護協会(2010)沖縄島辺野古における海草藻場モニタリング調査(ジャングサウオッチ)10年のまとめ.日本自然保護協会報告書 第100号

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