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やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更への意見を、パブリックコメントで出しました

2018.03.27
要望・声明

世界自然遺産登録を目指す沖縄島北部は、その登録にあたり国立公園への指定が必要です。しかし、この地域には米軍の北部訓練場があり、生物多様性を保全する上で大きな問題があります。昨年12月に訓練場の一部が返還されました。

共同通信(2017.12.25 13:34)米軍返還地、地権者に引き渡し 沖縄、防衛相「負担軽減に努力」

防衛大臣臨時記者会見概要 平成29年12月25日(11時02分~11時07分)

一刻も早い国立公園の指定が課題でしたが、今回、環境省は国立公園の区域拡大を立案し、広く国民に意見を求めました。これに対し、日本自然保護協会は今後の世界自然遺産登録を見据え、当該地域の保全に必要な対策について、意見を提出いたしました。

 

20180327_やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更への意見(149KB)


やんばる国立公園の公園区域及び公園計画の変更への意見

公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章

公益財団法人日本自然保護協会は1980年代から、沖縄島北部の通称「やんばるの森」が多くの希少固有動植物の宝庫であり生物多様性豊かな場所であることから、その保全の重要性を科学的に指摘し、世界自然遺産に登録をすべきこと主張してきた。今般、日本政府が世界自然遺産の登録候補地として推薦書を提出したことは喜ばしいことと認識している。今回、返還された北部訓練場の区域の一刻も早い世界遺産登録候補地への編入が必要との観点から、今回の返還地域のほとんどを国立公園に編入することは歓迎すべきことと考える。

「やんばるの森」の生物多様性の価値に鑑み、かつ当該地域の自然が後世に適切に引き継がれ、世界の至宝としての価値を失わないようにしていくために、公益財団法人日本自然保護協会は以下の意見を述べる。

 

1.今後の継続したモニタリング調査が必要

昨年の12月の返還から数か月という異例の短期間での国立公園の拡張に至ったことは、関係機関の努力の結果として評価したい。しかし短期間での調査では当該地域の自然環境を網羅的に把握するには不十分である。このため、現状では地種区分案が実際の自然度と乖離している可能性を否定できない。国立公園の拡張後も自然環境情報の収集のためのモニタリングを継続し、新たな知見が得られた際には再度の公園計画の変更を遅滞なく実施する体制の構築が重要である。

 

2.今後の継続した土壌汚染の現状把握の調査が必要

返還地域については沖縄防衛局により土壌汚染の現況調査が実施された。今回の国立公園拡張に際しては、その結果も考慮されているものと推察する。しかし、基地返還後に地下に埋設された廃棄物が発見され、環境基準を超えるダイオキシン等が検出されることがこれまでも現実におこっている。例えば、1987年に返還された沖縄市の旧嘉手納基地跡地では2013年になって、地中から大量のドラム缶が発見され、環境基準をはるかに超えるダイオキシン類が検出されている。このほかにも返還後に発見される有毒物質を含む廃棄物が確認されている事例がある。今回の返還直後の調査では、こうした地中に廃棄された有毒物質をすべて把握できているとは到底考えられない。有毒物質は確認されてからその毒を無害化し、環境への影響を除去することは困難である。今後、地表からの物理探査などにより詳細な実態把握が必要である。

3.世界自然遺産への拡張登録を目指し、在沖米軍との環境保全協定締結を目指すべき

現在、世界自然遺産への登録を目指した手続きが進行中であるが、日本国内の法制で、世界自然遺産登録地の保護担保としては、国立公園の特別保護地区及び第1種特別地域の指定が必須である。今回の国立公園の拡張では、その多くが特別保護地区と第1種特別地域であり、今後の世界自然遺産登録区域の拡張が当然予測される。

1992年2月の第4回世界公園会議では、ユネスコとIUCNによる世界遺産ワークショップが開かれ、推薦地域を保護するための緩衝地帯はもちろん、周辺の開発圧力から遺産を守るために管理計画が適用される世界遺産管理地域(World Heritage Management Area)を外側に設定すべきという決議が採択された。さらに、ユネスコ、IUCN、ICOMOSが開催した世界遺産と緩衝地帯に関する会議の結果、推薦地域の外側に十分に緩衝地帯を設定すべきであるとの決議が、世界遺産委員会において採択されている(UNESCO 2009)。

この決議に基づいた世界遺産の保護には、周辺にある米軍の未返還訓練地も合わせた管理が重要である。このため、日本政府は、新たに拡張予定の国立公園地域のみならず、世界自然遺産登録地の保全のためにも、米軍と環境保全協定を締結し、この協定に基づく保全上の施策が事実上の緩衝地帯としての機能となることを目指すべきである。

 

以上

本件連絡先

公益財団法人日本自然保護協会
保護室 室長 辻村千尋
tsujimura@nacsj.or.jp

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