絞り込み検索

nacsj

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会に質問状を提出しました。

2017.01.13
要望・声明

科学委員会宛奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地に対する質問状(PDF/195KB)

 


2017年1月12日

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
Okinawa Environmental Justice Project
代表 吉川 秀樹

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地に対する質問状

環境省は2016年11月に奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地について暫定推薦書をUNESCOに提出し、今年2月に推薦書の最終版を提出する予定であると報じられている。候補となる場所は生物多様性が豊かであり推薦されるに十分値する場所であると考えられる。しかし、平成28年度に開催された奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産候補地科学委員会(以下、「科学委員会」とする)第1回の資料の1つである推薦書(案)を見るといくつかの懸念を持たざるを得ない。環境団体として生物多様性豊かな自然環境の保全と安全で安心な暮らしを守る立場から、科学委員会のご見解を伺いたい。

(1)米軍北部訓練場でのヘリパッド建設地(高江)と米軍航空機による訓練について

昨年12月に完成したとされる東村と国頭村にまたがる米軍北部訓練場でのヘリパッド建設地は、世界自然遺産候補地の近くに位置している。そのため第一に工事や供用の騒音が音に敏感な生物に影響を与えることが懸念される。第二に昨年のMV22オスプレイの墜落事故にも見られたように、不測の事故が及ぼす山火事の影響が懸念される。これらの影響は、ヘリパッドの敷地内のみにとどまることなく、敷地外である世界自然遺産候補地にも及ぶものと考えられる。

しかし、現在提出されている、或は公開されている文書・資料では、これらの懸念が科学委員会で議論されたのかが分からない。このような懸念に関して、科学委員会としてどのようにお考えか、どのような対策を取ればリスクが低くなるとお考えなのか伺いたい。

(2)北部訓練場の返還地について

昨年12月22日に米軍北部訓練場の一部4,010ヘクタールが日本に返還された。この返還地について地元からはやんばる国立公園への新たな編入を求める声が出ている。実際、米軍の調査Natural Resources Studies for Proposed MV-22 Operations Appendix D(2012年) (和訳はなし))においても、この返還地にはノグチゲラななどの貴重種やイタジイ(スダジイ)の原生林が存在していることが示されており、返還地(一部)を世界自然遺産の候補地範囲に入れる要件は充たしていると考えることができる。しかし一方では、返還地におけるこれまでの米軍の訓練や事故等による汚染の問題も懸念されている。

科学委員会としては返還された土地についても国立公園指定ののち世界自然遺産地域に入れることが望ましいとお考えなのか、あるいは含まれない方が望ましいのか、お考えを伺いたい。

すなわち保護区設置の際は、科学的根拠に基づき生態系として意味のある区域とするのが一般的であるが、返還地をどのような形で国立公園および世界自然遺産候補地と関係づけるのか、どこからどこまでが生態系として意味のある区域であるのか、科学委員会の見解が不明なので伺いたい次第である。

(3)北部訓練場を排他的に管轄する米軍の見解や協力について

環境省をはじめとする日本政府、沖縄県、東村、国頭村の関係自治体、専門家、住民/市民がやんばるの森を世界自然遺産にするためのそれぞれの取り組みを行ってきた。その結果、今年2月の推薦書の最終版提出があると考える。一方、昨年12月の一部返還後も、やんばるの森に3,800ヘクタールの北部訓練場を排他的に管轄する米軍が、世界自然遺産登録にどのような見解をもっているのかが見えてこない。昨年12月、環境NGOや市民団体が、世界遺産条約やそのガイドラインに照らし合わせ、やんばるの森の世界遺産登録に対する米政府や米軍に対して、見解や協力を求める「懸念と要請の手紙」を送付しているが、まだ返答はなされていない。

やんばるの森の世界自然遺産登録において米軍の理解や協力が不可欠であると考えるが、科学委員会としては、これまでどのように米軍の見解や取り組みについて、情報収集、議論してきたのかをお伺いしたい。また今後どのように情報収集、議論する予定であるのか伺いたい。

(4)外来生物対策について

やんばるの森の世界自然遺産候補地の至近距離で普天間飛行場代替施設建設事業(以下、「同事業」とする)という大きな事業が行われている。同事業の一環としていずれは1,700万立方メートルの土砂が沖縄県外の6県7箇所という気候帯も生物地理区分も異なる広範囲の地域から持ち込まれる予定である。沖縄県にとって県外の埋め立て資材を初めて導入した事例が那覇空港滑走路増設事業(以下、「那覇第二」とする)であったが、同事業には那覇第二のために奄美大島から運び込んだ25万立方メートルの埋め立て資材と比べて68倍に相当する大量の土砂が持ち込まれる予定である。さらには、那覇第二には奄美大島から持ち込まれた石材が使われたが、同事業には石材ではなく、外来生物混入の確認や調査が困難である土砂が用いられる。

外来生物対策は、小笠原諸島が世界自然遺産に登録された際にも大きな問題となった。沖縄島北部の場合は世界自然遺産の範囲の外で行われるとはいえ、同じ沖縄島北部にて展開される同事業に無関係であるとは考えられない。

外来生物対策について、科学委員会のお考えを伺いたい。

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する