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2016.10.06

沖縄県土砂搬入規制条例改正に関する陳情書を提出しました。


▲奄美大島の採石場

2016年9月26日に沖縄県土砂搬入規制条例改正に関する陳情書を沖縄県議会に提出しました。本日(10月6日)に県議会で議論されます。
9月上旬に行われたIUCN(国際自然保護連合)第6回世界自然保護会議の総会では侵略的外来種の問題が世界で2番目に大きな生物多様性への脅威であると認識され、「侵略的外来種に関するホノルルチャレンジ(The Honolulu Challenge on Invasive Alien Species)」が採択されました。今後、同問題に関してより一層の行動を起こしていくことが強調されました。特に島嶼生態系の持続可能な利用にとって外来種の侵入経路をおさえ、あらかじめ「予防する」ことの大切さが確認されました。さらに日本自然保護協会など日本の自然保護団体6団体の提案による勧告「島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化」には、日本政府に対し、大量の資材を生物地理区分を越えて運ぶことは、外来種侵入の大きなリスクを伴い、クリアするには多くの要求を満たさなければならないことを認識するように促しています。辺野古の埋め立て土砂に関し、勧告に準拠する対応を行うように対応を求められているのは日本政府ですが、沖縄県でも対策を強化することには大きな意味があります。沖縄県が自ら条例を厳しくすることは同勧告をより一層意味のあるものにする必要があります。

陳情書本文(pdf:266KB)


平成28年9月26日

沖縄県議会議長殿

東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

 

沖縄県土砂搬入規制条例改正に関する陳情

 2015年11月に施行された沖縄県土砂搬入規制条例(公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例)の施行後、最初の事例として那覇空港滑走路増設事業が対象となり、6名の委員が「沖縄県公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する専門委員」(以下、専門委員と記す)として任命され、事業に伴う奄美大島からの埋め立て用石材の搬入が行われた。その過程で、現在の条例のもとに行われる外来種の混入調査には以下のような問題があることが明らかになった。

 その問題は、専門委員の指摘に対する対応が不明確なもの、調査や対応の結果の示し方に問題があるもの、現在の対応では外来種の駆除が適切にできていないことが懸念されるもの、今後より大きな分量の土砂に対応が可能かどうか懸念されること、県の調査員の資質や人員数や体制と調査の信頼性などであり、その詳細について以下に述べる。

(1)専門委員からは「資材の運搬に係る機器や船舶自体も検査の対象とすること」「採石場のみならず積み出し港や石材置き場も調査すること」「昼間の目視ではクモの糸が反射するため、夜間にも実施すること」などと指摘されているものの、公有水面埋立事業における外来生物侵入防止に係る立入調査業務報告書(平成28年3月、沖縄県環境部自然保護・緑化推進課)には、対応の有無が示されていない。

(2)「トラックに積み込んだ石材にシャワーをかけ洗浄することになっているが、これだけでは石のくぼみに付着したクモなどの小動物の卵を洗い流すことはできない」という指摘もある。これについても対応の有無が不明確である。

(3)石材への外来種の混入を調べる調査員の資質について、「特定外来生物の係る資料を事前に確認し知識を得た者」というあいまいな表現が用いられているため、調査の精度が信頼できない、また事前学習に用いたとされる資料「奄美諸島の外来種」(環境省)のみでは、外来種の発見に必要な知識や技術を得るのが困難であり、各分類群における専門家のレクチャーを受ける必要がある、などと、外来種混入を調べる調査員の訓練の方法への疑問の声があがっている。これは当然の指摘である。

(4) 県の調査委員の資質や人員数や体制の問題とそれに伴う調査の信頼性の問題がある。今回は2回の現地視察調査が行われ、広大な採石場や港を7名、4名の調査員で視察する体制がとられた。調査員は、同条例8条に基づき、「当該職員」/「知事の指定した者」が関わっている。しかし調査計画や調査について助言をする立場である専門委員からは、石材への外来種の混入を調べる調査員の資質について、「(条例において)「特定外来生物の係る資料を事前に確認し知識を得た者」というあいまいな表現が用いられているため調査の精度が信頼できない」、「事前学習に用いたとされる資料「奄美諸島の外来種」(環境省)のみでは、外来種の発見に必要な知識や技術を得るのが困難であり、各分類群における専門家のレクチャーを受ける必要がある」などの意見が出されている。外来種混入を調べる調査員の訓練は非常に大切であり、これらは当然の指摘であると思われる。

(5)那覇空港条例に関する埋立用搬入届出書に関する資料(沖縄総合事務局、H28年2月)には明確に調査範囲の面積がわかる指標が書かれていないが、他資料から推測すると、1人で1時間で調べるには広すぎるであろうと思われる。つまり調査員の資質に問題があるうえに、調査員の数も不足していたということが伺える状況である。

(6)採石場に置かれた石材について外来生物の有無を見分ける調査を「1人5分の調査を4回行う」と計画には書かれているものの、実際には「調査員1名が1時間にわたる調査を4回実施した」という記述がある。石材の窪みに隠れている特定外来種ハイイロゴケグモのような小さな生物や植物の種子のような小さなものを探すのならば、本来、石材1個に5分以上かけてもよいほどである。

(7)同業務報告書にはハイイロゴケグモおよびオオキンケイギクが採石場の近くで発見されたことが書いてあるが、ハイイロゴケグモについては、発見地が「恩勝港の重機付近」、「古仁屋の公園」、「前肥田港の配電盤」となり、奄美大島の北から南まで広い範囲で発見されたことが記されており、また重機・公園・配電盤と多様な場所で発見されている。このように広い範囲に分布している侵略的外来種への対応が不明なのでは、この先が懸念される。それぞれの場所で、調査員何名がどれ位の調査を行ったのか明記すべきである。

(8)専門委員より石材仮置き場周辺でハイイロゴケグモが見つかったことへの対応として、限定的な殺虫剤の使用が提案されているが、H27立ち入り調査業務報告書報告書ではこの対応の適用の有無がわからない。さらに、駆除後にも新たに侵入してくる可能性のあるハイイロゴケグモへの対応として、港湾での月1回程度の定期的なモニタリング調査が提案されているが、こちらについても実際に適用したのかどうかが不明である。

(9)普天間代替施設建設事業では、那覇空港滑走路増設事業のために奄美大島から運び込んだ25万立方メートルと比べて80倍に相当する1,700万立方メートルという大量の土砂が持ち込まれる。さらには、那覇空港滑走路増設事業には奄美大島から持ち込まれた石材が使われたが、辺野古の埋め立てには石材ではなく土砂が用いられる。石材よりも土砂の方が外来種混入のチェックは困難である。

(10)辺野古の埋め立てには6県7か所の採石場から土砂が持ち込まれる予定である。

(11)那覇空港滑走路増設事業の際には、特別の措置として、専門委員のアドヴァイスに従い、奄美大島から持ち込んだ石材については、沖縄島にて一時仮置き場を作らず、直接海に投入するとされたと聞いている。上記(8)の通り、分量は那覇空港滑走路増設事業の80倍であることから、沖縄島に仮置き場を作らず、直接海に投入することが可能かどうか、懸念される。

(12) 事業者届け出が行われて使用の許可を与えるまでの審査期間90日間で、 沖縄県による調査が十分に信頼性をもって行えるかという問題がある。那覇空港滑走路増設事業においては、株式会社イーエーシーが県から依託を受け調査を行っているが、同社の業務計画書からは、非常にタイトなスケジュールで調査を行い、報告書を完成させなければならなかった状況が読み取れる。

 沖縄県とイーエーシー社は、「埋立用材搬入(変更)届出書」(沖縄総合事務局、H27年12月)や「那覇空港条例に関する埋立用搬入届出書に関する資料」(沖縄総合事務局、H28年2月)で示された、当該埋立用材を採集する3箇所の採石場と搬出する3カ所の港を調査している。採石場の面積の合計は114,658平方メートルであるが、実際の調査範囲の面積がわかる指標は示されていない。現地視察では採石場1カ所で1時間、港1カ所で30分の視察を行っているが、それで十分だとは言い難い。チェック期間を長く設定しないと、大量の土砂には対応できない。さらにはその90日間が、那覇空港滑走路増設事業の審査が冬季(12月~3月)に当たってしまったように、冬季に当たると昆虫の蛹や卵、植物の種子などの土砂への混入を見分けることが困難になる。

(13)2016年9月25日に奄美大島大和村の積み出し港(恩勝)の視察を行った。高さ2メートルほどの監視台から目視調査を行っていた様子が伺えるが、体長0.5cm~1cmほどのハイイロゴケグモや植物の一部分の混入をこのように距離のある場所で行うのは困難である。また、調査員が指標にしていたであろう外来種チェックリストも現場の一部に張られていたが、この程度の資料で外来生物の同定ができるようには到底ならないと言わざるを得ないものであった。上記(3)にも記したが、調査員の資質や訓練の内容を明らかにすべきである。

 おわりに

 本年9月上旬に行われたIUCN(国際自然保護連合)第6回世界自然保護会議の総会では侵略的外来種の問題が世界で2番目に大きな生物多様性への脅威であると認識され、「侵略的外来種に関するホノルルチャレンジ(The Honolulu Challenge on Invasive Alien Species)」が採択され、今後、同問題に関してより一層の行動を起こしていくことが強調された。特に島嶼生態系の持続可能な利用にとって外来種の侵入経路をおさえ、あらかじめ「予防する」ことの大切さが確認され、また世界の外来種の事例および駆除にかかる費用がまとめられたデータベース(Global Invasive Species Database)の活用が強調された。さらに世界自然保護会議の最後の日には、ホノルルチャレンジを含む形で、広い自然保護の分野に関するハワイコミットメントが今後の自然保護に関する指針として採択された(添付)。さらに日本自然保護協会など日本の自然保護団体6団体の提案による勧告「島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化」には、日本政府に対し、大量の資材を生物地理区分を越えて運ぶことは、外来種侵入の大きなリスクを伴い、クリアするには多くの要求を満たさなければならないことを認識するように促している。辺野古の埋め立て土砂に関し、勧告に準拠する対応を行うように対応を求められているのは日本政府であるが、沖縄県でも対策を強化することには大きな意味がある。また同勧告には生物多様性保全のためのステークホルダー(biodiversity stakeholder)のコミットメントの重要性が書かれているが、この単語は市民、行政、専門家など全ての関係者という意味合いであるため、沖縄県が自ら条例を厳しくすることは同勧告をより一層意味のあるものにするという姿勢である。市民が情報開示請求をした資料に黒塗りで応えるようなことは今後控えていただきたい。

以上のことから、同条例の改定を働きかけるよう、以下について陳情する。
1) 専門委員からの指摘の対応の有無を明確にすること。対応した結果どのような変更が生じたのか、調査等が行われたのであれば、その結果を明記すること。
2)届出が出されてから許可が下りるまでの期間を長くする。
3)外来種混入のチェックにあたる調査員の数を増やし、調査時間を増やす。
4)外来種混入の検査をするものに十分な訓練を受けさせる
5) 事業者に調査時間、調査員の人数、調査結果を、調査後速やかに報告させる。
6)、2)3)、4)に関し、適切な助言を受けられるよう専門員の委員会を複数回開くこと
7)、6)を公開で行い、会議終了後、速やかに議事録を公表する
8)条例に違反する場合には罰則を設けるようにすること

 

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