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東日本海岸調査~東日本大震災と防潮堤計画

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2013.02.04

巨大防潮堤に依存することなく、健全な自然生態系の保全と防災が両立できる復興事業を― 防潮堤と防災林の復旧事業への意見書提出

急速に進められようとしている海岸堤防・防潮堤復旧事業と海岸防災林復旧事業。巨大なコンクリート建造物に頼る方法で拙速に事業を進めては、地域の財産である自然環境を失うことになりかねません。
2013年2月4日、日本自然保護協会は、地域の自然環境と生物多様性の保全を十分考慮し、健全な自然生態系を残しながら事業を進めることを要望し、内閣総理大臣、国交省、農水省、環境省、復興庁の大臣宛てに意見書を提出し、同日環境省記者クラブで会見を行いました。

海岸堤防・防潮堤復旧事業と海岸防災林復旧事業に関する意見書(PDF/162KB)


2013年2月4日

内閣総理大臣 安倍晋三 殿
環境大臣   石原伸晃 殿
国土交通大臣 太田昭宏 殿
農林水産大臣 林 芳正 殿
復興大臣   根本 匠 殿

海岸堤防・防潮堤復旧事業と海岸防災林復旧事業に関する意見書

公益財団法人日本自然保護協会
理事長 亀山 章

東日本大震災後、海岸堤防・防潮堤復旧事業と海岸防災林復旧事業が急速に進行しつつあります。国民の生命を守ることは重要ですが、拙速に事業を進めては持続可能な地域づくりに不可欠な地域の財産である自然環境を失うことになりかねません。

日本自然保護協会は、東日本大震災の被災地の自然環境調査を行い、その結果、被災地には全国的に減少している貴重な海岸植物群落が残っていることが判明しました。また、当会が被災地の住民を対象にして実施した「人と自然のふれあい調査」では、海との関わりを持ち続ける暮らしを望んでいる声が多く聞かれました。

そこで、当会は、東北で進められている復興復旧事業について、下記のとおり、地域の自然環境と生物多様性の保全を十分考慮し、健全な自然生態系を残しながら事業を進めることを要望します。

1.海と陸との連続性を失わないこと

海と陸の移行帯(エコトーン)である海岸は、そもそも撹乱と回復を繰り返す動的な環境です。それが生物多様性をつくりだし、その恵み(生態系サービス)を受けて私達の生活は成り立っています。海と陸との連続性を失うことは、取り返しのつかない大きな損失を将来世代に残すことになります。海岸堤防等は、強固で巨大なものほど、海と陸を断絶するものになります。

当会は、巨大な堤防に依存することなく、健全な自然生態系の保全と防災が両立できる復興事業を進めることを要望します。そのためには、東日本大震災を契機としてこれまでのコンクリート化による海岸管理を大幅に見直し、後背地の土地利用の再整理、堤防の大幅なセットバック、海岸道路の撤去などを含めた復興事業にすべきです。

海岸林の復旧では、従来のように一律の海岸林に復旧するのではなく、砂浜、海浜植物群落、海岸林という海岸植生の移行帯を形成する海岸林復旧を検討すべきです。また、安易に盛り土はせず、海岸砂丘の後方に生じる湿地帯を再生・保全し、生物多様性を回復させることが必要です。

2.津波後に回復してきた動植物の生育・生息地を保全すること

海岸植物群落は、ただでさえ過去の開発で分断され非常に少なくなっています。そのため巨大な津波で海岸の動植物も失われたと思われがちですが、当会の調査では多くの希少な海岸植物が残存または回復していることが明らかになりました。

残存または回復しつつある自然は、地域の財産のひとつであり、これからの地域の歴史や文化の形成に不可欠のため、事業をすすめるにあたっては、希少な自然を後世に残すべきです。

環境省は、回復しつつある自然環境の調査と評価を行い、守られる価値のある生態系を特定し、国立公園やラムサール条約湿地などの保護地域に指定するなど、適切な保全措置を進めるべきです。

3.復興事業においても環境アセスメントを実施すること

現在、復興事業では環境アセスメントは対象事業を限定し、簡略化することにされていますが、調査結果を公表し環境改変の影響を予測する環境アセスメントは本来すべての事業に必要です。環境アセスメントは時間がかかるため復興事業の着手が遅くなるというのが、環境アセスメントの対象事業を限定する理由になっています。環境アセスメントを簡易的に迅速に進めるためには、動植物等の自然に関する情報があらかじめ整備されていることが重要です。情報整備のためには、国または地方公共団体が主体的に調査を実施するべきです。

4.地域の自然を熟知している市民の意見を取り入れること

これらの課題をより綿密に検討するためには、地域の自然環境を熟知している市民、専門家らを含めた合意形成が重要と考えます。また、十分な住民合意のない復旧工事は、地域で培われた自然資源とのつながりや自然への畏敬の念など、地域社会の形成の根源をも失う恐れがあります。

合意形成の枠組はあっても現状では不十分であり、工事中や工事後のモニタリング、それらを踏まえた順応的管理のプロセスにも、市民や専門家の関与や協力が重要であると考えます。

以上


添付資料:

NPO法人「森は海の恋人」のホームページ

 

▲環境省星野審議官(右)へ提出の亀山理事長

2013_02_04kokkousyoikensyo.jpg▲国土交通省海岸室へ提出する大野教育普及部長

▲右から大野正人教育普及部長朱宮丈晴保全研究部長小此木宏明保全研究部東日本海岸調査担当、宮城県気仙沼市でカキ漁を営みながら、防潮堤建設に対する勉強会や、建設計画への疑問や意見を発信し続けている、NPO法人「森は海の恋人」畠山信さん、気仙沼市本吉地区を中心に住民の合意形成やアンケート調査、要望書提出を続ける「防潮堤を勉強する会」発起人の一人である三浦友幸さん。

 

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