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2013.01.31

シンポジウム「市民が見つめる・調べる・支えていく 日本の生物多様性」開催しました

【2013.3.22 お知らせ】シンポジウム当日の発表スライド資料をアップしました。どうぞご覧ください。
   (大阪府立大学 石井実)
   (NACS-J保全研究部 高川晋一)
   (全国カヤネズミ・ネットワーク 畠佐代子)
   (里山自然学校はずみの里 千葉裕)
   (宍塚の自然と歴史の会 森本信生)
   (横浜自然観察の森友の会 篠塚理・日本野鳥の会 古南幸弘)


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全国の市民調査員1300名以上の方々とともに作り上げているモニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000)の5年間の調査成果や市民調査の可能性、今後の展望を考えるシンポジウム「市民が 見つめる・調べる・支えていく 日本の生物多様性」を開きました。
暦上「大寒」の期間であった1月26日、この日も例外ではなくとっても寒い日となりました。そんな中、会場には北は北海道から南は長崎・大分という遠方からもご参加くださり、当日は約150人の方が集う大盛況となりました。
午前の部は、「みんなで調べて見えてくる生きものたちの姿・多様性」という題で、
大阪府立大学の石井 実先生と全国カヤネズミ・ネットワーク 畠 佐代子さんにご発表いただきました。
石井先生からはモニ1000でも調査を行っている里地調査の調査項目でもあるチョウの指標性について「自然からの便り」としてご紹介いただき、
全国カヤネズミ・ネットワーク 畠 佐代子さんからはモニ1000の調査結果から里地調査でも調べているカヤネズミの生息地がここ数年でものうちからも顕著に減少している場所が多いことや、市民がネットワークを作り、多くの目で守ることの意義について発表いただきました。
また、先日できあがったばかりの「生物多様性指標レポート」についてもNACS-J保全研究部の高川から成果発表をし、これまでの全国での調査結果を紹介しました。
市民が支える”調査”の現場」と題した午後の部では、実際にモニ1000に参加していただいている全国の調査員の方々から、地域住民との関係づくりや行政の保全施策へ調査結果を活かした実例などについて発表いただきました。
岩手県一関市のモニ1000コアサイト「樺ノ沢」の調査を行っている里山自然学校はずみの里の千葉 裕さんからは、
調査地の住民の方との協力関係がどのようにして築き上げられてきたのかについて発表いただきました。
はじめは義務感や責任感を感じられていた地元住民の方々も調査を通じて意識が変化し、生きものへの面白さを感じて植物図鑑をつくられたり、調査に”参加する”側から現在では”調査する”側になったといった紹介がなされました。
茨城県土浦市のコアサイト「宍塚の里山」を調査される宍塚の自然と歴史の会の森本信夫さんからは、
モニ1000で得られた結果を現場の保全に活かす例として、カエル類調査の結果を湿地の管理にうまく活用した結果や、中・大型哺乳類調査で撮影されたアライグマの駆除活動の展開についての例をご紹介くださいました。
会場から「行政に効果的に対策に動いてもらうにはどうしたらいいのか」という質問があがると、森本さんから「頻繁に自分たちで声を発して行政と対話していくこと、そして任せるのではなく自分たちから場の保全のために体を動かし実績を作っていくことも重要です」というアドバイスも聞けました。

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3人目の発表者は、一般サイト「横浜自然観察の森」(神奈川県横浜市)を調査されている横浜自然観察の森友の会の篠塚 理さんと野鳥の会の古南幸弘さんでした。
横浜自然観察の森では施設の一角を借りて、調査員だけではなく通りすがりの一般の方にも参加してもらいながら哺乳類調査で写った写真のチェックをする取り組みをしているそうです。発表の最後には、今まで調査で撮られた哺乳類写真をスライドに写しだして会場の皆さんと哺乳類同定をするというユニークな試みがなされ、会場全体で哺乳類調査体験の場となりました。
(会場全体で写真に写る動物を同定中→)
シンポジウムの最後には、パネルディスカッション「生物多様性を守る市民の力:市民調査の魅力と展望」を行いました。前半に里地調査の魅力について話し合い、後半は今後調査を継続するための課題共有や展望について話し合いました。
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(↑前半の議論:里地調査のやりがいと魅力)
調査員の方々には事前に「10年後への調査継続のために、今後どのようなことが大切か?」というアンケートにご協力いただいたのですが、そこで最も多かった意見は「後継者育成・新規メンバーの獲得」でした。パネルディスカッションでもこの話題を取り上げたのですが、会場にいらしていたモニ1000調査員の方のほぼ全員が後継者や新規メンバーの獲得に難しさを感じていることがわかりました。
この議論で出た意見は主に以下の通りです。
・ モニ1000に関わる人たちの”個性”は魅力そのもの。この個性を上手く使い、人から人を育てよう。
・ 若者もモニ1000を知らない人が多い。若者が使うコミュニケーション媒体(Facebook,Twitter)をもっと活用して広報してみてはどうか。
・ 一人では新しい人たちの交流(調査)には入りづらい。それをカバーするために複数人で参加できるイベントを開き交流を図ったり、一人の新規メンバーを確保したらその人を起点にその年齢層に働きかけてはどうか。
・ どうしても学生が「卒業」によってその土地を離れたり、そうではない人も異動などで場を離れてしまうことがある。しかし、モニ1000の強みは全国どこにでも調査地があること。一度人が育てば、その人が新たな場所で調査に参加することも可能なのではないか。
・ 市民調査への関心層以外へ伝えるためには突飛なアイディアも重要。モニ1000を題材とした川柳大会などを実施して無関心層も巻き込んでみては。
・ 無理に若い層を巻き込むことに執着しなくてもいいのではないか。もし、現在の調査員平均年齢が60歳ならば55歳の人を巻き込むといったように、5年後にも同じ平均年齢になるような調子でじっくりと続ける調査体制の構築も手だと思う。
この場では、会場全体で同じ課題に向き合い、今後100年続いていくために意志を確かめ合うことができ、大変有意義な時間となりました。
2~3月に発行予定の、モニ1000里地調査ニュースレターでもシンポジウムの様子を詳細にご報告する予定です。また、シンポジウム後に開催したモニ1000調査員同士のサイト間交流会についても併せてご報告します。
(保全研究部/後藤なな)

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