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猛禽類の生息地保全

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2009.09.20

環境省の「猛禽類保護の進め方」改訂に対するコメントを出しました。

 1996年に環境省は、イヌワシやクマタカ、オオタカの3種を中心とした「猛禽類保護の進め方」という指針を出しました。同様に調査指針などを示したマニュアル類が事業省庁や自治体でもつくられています。しかし残念ながら、各種猛禽類の生息状況が好転しているとは言いがたい状況にあります。
 2009年度この「猛禽類保護の進め方」の改定が予定されています。NACS-Jは、2009年9月20日の日本鳥学会の自由集会で今回の改訂に対しに下記のコメントを出し、同席する環境省野生生物課に渡すこととしました。

 2009年9月20日

日本鳥学会、環境省「猛禽類保護の進め方」改訂にあたっての自由集会

 コメント

                           (財)日本自然保護協会

1.「猛禽類保護の進め方」を改訂するならば、目的と機能を大きく据え直す必要がある。
1996年、「猛禽類保護の進め方」が刊行されて以降、同様に調査指針等を示したマニュアル類が事業省庁や自治体でも作られている。しかし残念ながら、各種猛禽類の生息状況が好転しているとは言いがたい状況にある。
このため、今回改訂するのであれば、文書の目的を希少猛禽類の「絶滅危険度の顕著な低下のための保全ガイドライン」に捉え直し、それに合わせた構成(影響回避と保護事業のあり方、生息地の修復・改善、10年オーダーの森林再生の方法など)への変更が必要である。
影響評価と対策に関しては、特に絶滅のおそれが高いニホンイヌワシに対する開発事業の対応は、例外なく「回避」とするべきである。また、保全対象として個体数が多い種は該当させないという考え方が一部にあると聞くが、猛禽類は指標種であり、また絶滅の危険判定は単なる個体数でなく繁殖率等から導く絶滅確率を基本にしているものであるため、このような考え方は誤りである。
このような改訂のための検討は、閉じられた場ではなく、現場で保護と研究をセットで行っている人材に協力を求めると共に、その検討過程を透明化すべきである。また、改訂版の試案完成時にパブリックコメントの手続きを実施する必要がある。

2.単なる改訂ではなく、猛禽類保護のマスタープランを作成する機会とする。
「猛禽類保護の進め方」では、今後の課題として、(1)生息実態に関する体系的な全国調査の実施等、(2)個体群維持のための対策、(3)保護管理体制の整備、(4)普及啓発、研修制度の充実、の4点をあげている。この中で、中長期的な観点でのマスタープランを作成し、個体群の保全を図って行くとされているが、これは未だに作成されていない。このことが、各種事業での個別個体への対策にとどまり、地域毎の「個体群の保全」に至らない原因のひとつと考えられる。
希少猛禽類の絶滅を回避させるには、各種の営巣地保護のみならず、餌動物と餌場を含む生息環境の保全・修復という積極的な取り組みの必要性を謳い、その位置づけと方法、主体毎の取り組み事項を明記した、猛禽類保護のマスタープラン作成の機会としていく仕組みを組み込むべきである。

3.蓄積された最新の科学的根拠をまとめ、生息地保全に活かすこと。
この10年間に、猛禽類に関する科学的知見は増えている。保護対象を個体から個体群に広げ、生息環境の的確な保全につなげるため、これまでの保全対策の根拠や効果をこの機会に検証し、生態系と生物多様性保全の観点をもつ調査方法や対策のノウハウの共有化を図る必要がある。
「餌場の創生」と称する事業が、地域の生物群集への影響や効果を十分考慮していなかったり、特定種のみを対象にした場当たりの対策になるようなことは、避けなければならない。また個別事業において、保全対策のための調査研究と称して、CCDカメラによる巣の撮影、発信機等の装着、代替巣の設置など、事業者が生息個体に悪影響を与えかねない行為を行っている例も見受けられる。事業ごとに設置される保全対策検討会等には、このようなことを避けさせる責任がある。
このような会議体の議論の過程を透明化し、不要な調査圧を避け、必要不可欠な調査が的確におこなわれる調査設計と検証ができる構造(人選)を備えられるよう、科学的根拠を取り扱う体制のあり方にも、改善が求められる。

4.既存組織を活用して科学情報を蓄積し、保全に繋げるシステムを作ること。
これまでの法制度上の環境影響評価等の中でも、希少猛禽類に対する多くの調査が実施され、生息状況がまとめられている。しかし、民間のものはもとより、公的資金でおこなわれたものだけをとっても報告書は個々の行政機関・自治体が持ち、情報化とその共有の仕組みはない。このような資料の中の科学情報をデータベースとし、保全に資することを目的として設置されたのが、2000年に作られた「猛禽類保護センター」ではなかったか。
この改訂の機会に合わせ、既存のアセス資料の収集と分析、生息分布や科学的知見の整理、更新と適切な開示の方法、そして神経を使わなくてはならない営巣地保護等のための情報管理ルールを整備する必要がある。このデータベースを「生物多様性センター」と連動の上で機能させ、事業の立案段階で活用できれば、環境悪化の回避のため計画を変えることも可能になる。このような、回避と積極的保全のための情報システムの構築を望む。

以上

■連絡先:(財)日本自然保護協会(NACS-J)

横山隆一(常勤理事)、大野正人・辻村千尋(保護プロジェクト部)

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