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2001.10.29

球磨川・川辺川におけるアユ魚体調査結果(速報)

2001年10月29日
(財)日本自然保護協会

 

1.目的

球磨川水系の7地点において、捕獲したアユの魚体計測を行い、水系内の3流域(球磨川上流、球磨川下流、川辺川)において比較を行う。

 

2.調査方法

1)調査地点

球磨川と川辺川の合流地点を境に、球磨川下流域に2地点(St.1:大曲、St.2:人吉)、川辺川に3地点(St.3:柳瀬、St.4:四浦、St.5:野々脇)、球磨川上流に2地点(St.6:免田、St.7:錦町西)の合計7地点で調査を行った(図1)。
調査は、2000年9月8~10日(各調査地点で2回)と2001年6月2日(全ての調査地点)、8月24日(St.2とSt.4)、9月8日(St.6を除く全ての地点)の合計4回行った。

 

2)捕獲方法

アユの捕獲は「刺網漁法」により行った。刺網は2統は7分5厘、3統は8分1厘の目合いの計5統で、日没後に投網し、5統投網後30分程度放置し、順次入れた順に網を回収・捕獲を行った。刺網1統当りの大きさは、全長が約23m、幅(高さ)は1.2mのものを用いた。

 

3)測定・解析

捕獲したアユは冷蔵保存し、3時間以内に全長、体長、体高、背鰭基底長、体重の測定を行った(図2)。また、体長と体重の測定値から個体毎の肥満度を求め、各地点でのアユ体格の比較に用いた。肥満度は次式に基づき計算した。

肥満度=[(体重:g)÷(体長:cm)3]×103

得られた結果を用い、本報告では、1)CPUE(catch per unit effort:漁業努力当りの漁獲量)、2)捕獲されるアユの体重、3)アユの肥満度、の3点について、川辺川と球磨川上流、球磨川下流の3流域で比較を行った。

 

3.結果

1)漁業努力当りのアユ捕獲量(CPUE:catch per unit effort)

本調査では、使用する刺網の種類および数、投網から回収までの捕獲時間も統一しているため、アユ捕獲に係わる漁業努力は全ての調査地点、日時において等しいと仮定できる。そこで図3に1地点で捕獲されたアユ個体数を川辺川と球磨川上流、球磨川下流で比較を行った(誤差線:SD)。

平均値で比較すると、1地点1回の調査で捕獲されるアユの個体数は、球磨川上流が31個体と最も多く、続いて川辺川(25個体)、球磨川下流(17個体)の順であった。統計検定の結果、有意な傾向は見られなかった(Kruskal-Wallis test,:n= 8, 7, 12, H=2.95,n.s.)。これは、アユの捕獲個体数は調査日によって大きく変動するため、分散が大きいからと考えられる。よって、今後調査回数を積み重ねることによって流域毎の差が検出される可能性がある。

2)アユの体重

図4に捕獲したアユの体重頻度分布を示した。球磨川上流(n=220)と下流(n=156)で捕獲したアユの体重頻度分布は80-100gの階級を中心にほぼ正規分布となっている。一方、川辺川(n=400)では、80-100gの階級にピークが見られるものの、右側に裾が長い分布となっている。大型個体の捕獲される頻度を比較してみると、160g以上の大型アユが捕獲される確率は、球磨川上流で2.3%、球磨川下流で3.8%、川辺川で11%と、川辺川が最も高かった。

図5に3流域におけるアユの平均体重(誤差線:SD)を示した。平均体重は、川辺川で111gと最も高く、続いて球磨川下流(106g)、球磨川上流(98.4g)であり、分散分析の結果有意な差が見られた。多重比較の結果、川辺川と球磨川上流では有意な差がみられたものの(Scheffe:n=400, 220, P<0.001)、川辺川と球磨川下流、球磨川下流と球磨川上流の間では有意な差が見られなかった。

 

3)アユの肥満度

図6に捕獲調査したアユの平均肥満度を示した。肥満度は川辺川(15.46)が最も高く、続いて球磨川下流(15.37)、球磨川上流(14.55)の順であり、分散分析の結果有意な差が見られた。多重比較の結果では、川辺川と球磨川上流、球磨川下流と球磨川上流の間で有意な差が見られたが(P<0.001)、川辺川と球磨川下流の間では差は見られなかった。

4.考察

本報告書では、昨年9月から行った球磨川・川辺川アユ捕獲調査の結果を、1)漁業努力当りのアユの漁獲尾数、2)捕獲されるアユの大きさ(体重)、3)捕獲されるアユの質(肥満度)の3点に注目・評価し速報としてまとめた。

結果を簡潔に説明すると以下のようになる。

1)投網一回につき捕獲されるアユの尾数は、川辺川および球磨川上流と比べ、球磨川下流では少ない傾向が見られる。

2)大型のアユ(160g以上)は、川辺川で最も多く捕獲され、続いて球磨川下流、球磨川上流の順であった。

3)川辺川のアユの肥満度は、球磨川上流と比べ有意に低い。

総合的に評価すると、川辺川では肥満度が高い大型のアユが比較的安定した尾数で捕獲できるため、他の2流域よりも優れた漁場であると考えられる。さらに、今回までの調査結果で差が検出されなかった項目(特にCPUE)は、3流域におけるサンプル数や分散の大きさに由来すると考えられるため、今後も調査を継続し明らかにする必要がある。

アユの大きさや肥満度、個体密度は、河川環境(例えば河川水温や河床形態、餌となる付着藻類の密度・生産量など)によって決まる。本報告書で比較を行った3流域では、ダムの有無を初めとして水温(河川標高の違いによる)や流域人口など、河川を取り巻く環境は明らかに異なっている。

現在、この3流域におけるアユの体格の差をもたらしている環境要因について解析を進めている。これまでに、上流にダムのある球磨川上流では、5~6月の間、市房ダムの水温の低い底層水の放水により、著しく河川水温が低下すること、川辺川と比べ水温の変動も不規則であることが示唆されている。また、国土交通省が行ったシミュレーション結果を検証したところ、選択取水や清水バイパスなどの川辺川ダムにおける環境保全措置は、6,7,8月の比較的流量が安定した時期には、濁り制御の効果を発揮するものの、それ以外(3,4,5,9月)では、殆ど効果が現れないことも明らかとなっている。

この様な球磨川と川辺川における河川環境の差、ダム建設後の川辺川河川環境の変化については、アユの調査結果との重ね合わせが終了し次第、順次公表する準備を進めている。

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