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川辺川ダム建設計画問題

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2001.03.06

良好なアユ生育環境に水温低下の悪影響を与えることが明らか

熊本県球磨川支流川辺川・川辺川ダム予定地域における大型アユ生育環境の評価とダム計画の見直しに関する意見書を提出いたしました。

 


 

2001(平成13)年3月6日

国土交通大臣 林 寛子 殿
環境大臣  川口 順子 殿

財団法人 日本自然保護協会
理事長  田畑 貞寿

熊本県球磨川支流川辺川・川辺川ダム予定地域における大型アユ生育環境の評価とダム計画の見直しに関する意見書

財団法人日本自然保護協会(NACS-J)は、国土の自然環境を良好に保全し、我が国の生物多様性を保全する立場から、国土交通省が計画中の熊本県球磨川支流・川辺川における川辺川ダム建設計画に対し、川辺川流域で繁殖するクマタカ(種の保存法政令指定種)等の生息環境保全の不十分さ等について、これまで問題指摘をおこなってきました。

今回は、2000年9月に実施したアユ魚体調査の結果(添付文書参照)に基づき、意見を述べるものです。当協会は、クマタカおよびアユについては、種への注目だけでなく、川辺川流域の生態系の上位性・典型性を指標する生物として、きわめて重要な検討対象と考えています。

特にアユは、河川生態系保全のために注目すべき主要構成種であると共に、地域において最も重要な漁業資源かつ観光資源となっている魚種です。ダム計画が川辺川のアユに与える影響を考察する上で注意が必要なのは、単にアユの存続や漁獲量確保の面の評価・検討だけでは十分でなく、アユの質とその維持に対する注目が不可欠なことです。

川辺川で捕獲されるアユは、その体格と味の良さから「川辺川産鮎」として尊重され、その質は川辺川の現在の河川生態系がもつ機能の結果として得られるものであり、今後の川辺川の河川生態系保全、流域の生物多様性保全において、特に着目する必要があると考えられます。

添付したアユ魚体調査は、2000(平成12)年9月、漁民有志、熊本在住のNACS-J会員・NACS-J自然観察指導員の協力のもと、全国から寄せられた寄付金を用いて、球磨川水系3流域7箇所において採捕したアユの魚体を計測比較したものです。3流域とは、川辺川ダムが計画されている「川辺川」、A川辺川と合流後の「球磨川本流」、そしてB川辺川と合流以前の「球磨川」で、「球磨川」の上流には既に熊本県営の市房ダムが存在しています。

採捕したアユの総数は382尾、全ての全長・体長・体高及び体重を計測し比較しました。その結果、この3流域で育つアユの体格には有意な差が見出され、合流以前の球磨川と川辺川との間には、アユの体格を左右する生息環境の違いがあることが示唆されました。

また、川辺川のアユの「肥満度」は、既にダムのある球磨川、合流後の球磨川本流の2地域に比べて1ランク大きく、川辺川のアユを育てる力が他の2流域に比べて大きいことがわかりました。ただし、その機構は考察できなかったため、本年は生育追跡調査を計画中です。

しかし、このようなアユの重要性と、アユが指標となって川辺川の豊かさが示唆されるにも関わらず、国土交通省九州地方整備局は、制度上必要ないという理由だけで法制度に基づく十分な影響評価を行わず、開発当事者だけの判断でまとめられた不十分な自然要素の調査(この報告には3℃の水温低下が予測されるとあるため、現状のアユの生育環境は悪化することとなる)と、漁業補償等の旧来の手法によってダム建設を実行しようとしています。

大型のアユを育む河川環境は、クマタカの繁殖を支えている森林環境、九折瀬洞のような地域特有の特殊な自然環境と共に、将来世代に対して最も優先的に継承すべき、地域を代表する自然資産と考えられます。これらの価値評価を正しく行う前に、36年も前に計画されたダム建設を強行してしまうことは、禍根を残すに違いありません。

以上のことから、川辺川ダム計画に対し以下の意見を述べるものです。

(1)国土交通大臣は、ダム本体建設計画を凍結し、法律に基づく環境アセスメントを実施し、この地域の自然環境の価値、ダム建設による影響を正しく評価するべきである。ただし、現状で既に現在の良好なアユ生育環境に水温低下の悪影響を与えることが明らかな以上、ダム建設の必要性・妥当性そのものを再検討すべきである。

(2)環境大臣は、我が国の生物多様性保全に責任を持つ立場から、上記の実現を国土交通大臣に進言し、クマタカを上位性、アユを典型性、洞窟生物を特殊性の指標とした、環境省としての川辺川の自然環境の評価を示すべきである。

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