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中部国際空港建設問題

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2000.06.16

「事業の必要性とその計画を根本的に見直し、 干潟・アマモ場と幡豆町の里山ならびに三河湾の自然環境保全すべき」

平成12年6月16日
環境庁長官 清水嘉与子 殿
建設大臣 中山 正暉 殿
運輸大臣 二階 俊博 殿
農林水産大臣 玉澤徳一郎 殿
愛知県知事 神田 真秋 殿

 

中部国際空港関連埋立事業と

愛知県幡豆町の土砂採取に対する意見書

財団法人 日本自然保護協会理事長 田畑 貞寿

中部国際空港は、2005年開港をめざして、愛知県常滑市沖に建設がすすめられています。これとあわせて、愛知県企業庁は空港島の周辺110haを空港島関連開発用地埋立造成事業のため、また常滑市の海岸130haを対岸部地域開発用地(前島)埋立造成事業(以下、この2件をあわせて空港関連埋立事業と称する)のため、埋め立てる計画です。

空港島(埋立面積470ha)が名古屋港の浚渫土砂に加え2600万立方メートルの山砂を使用するのに対して、空港関連埋立事業は埋立面積240haにもかかわらず、空港島に匹敵する2400万立方メートルの山砂を埋立に使用する計画になっています。

この土砂は、自然保護上の理由から、空港島埋立の土砂採取場所として予定していた南知多町や渥美町からは採取できなくなり、愛知県企業庁が幡豆地区内陸造成事業を計画している幡豆町の山林150haを崩して調達する予定になっています。

しかしこの計画にも、幡豆町の里山の破壊、三河湾の沿岸漁業への影響、常滑市海岸の干潟・アマモ場の破壊など、自然保護上多くの問題点があります(下記理由書参照)。

現在、愛知県知事から、空港島ならびに関連埋立事業にともなう公有水面埋立申請が建設大臣・運輸大臣に出され、また幡豆町の山林伐採にともなう保安林解除申請が農林水産大臣に出されています。これに対して、当協会は以下のように要望いたします。

1.愛知県知事は、空港関連埋立事業の必要性とその計画を根本的に見直し、常滑市海岸の干潟・アマモ場と幡豆町の里山ならびに三河湾の自然環境を保全すべきである。

2.建設大臣、運輸大臣は、愛知県知事から出されている空港関連埋立事業の公有水面埋立申請に関して、自然環境への影響ならびに埋立の必要性を慎重に審査すべきである。

3.農林水産大臣は、愛知県知事から出されている幡豆町の民有林の保安林解除申請に関して、山林の地権者、流域の住民、三河湾の漁師等の利害関係者の意見を十分に聴取し、慎重に判断すべきである。

4.環境庁長官は、愛知県知事から出されている空港関連埋立事業の公有水面埋立申請ならびに幡豆町の保安林解除申請に対して、常滑市海岸の干潟・アマモ場の保全、幡豆町の里山ならびに三河湾の自然環境の保全の視点から意見を述べるべきである。


 

<理由書>

1. 中部国際空港対岸部地域開発用地(前島)埋立造成事業が予定されている常滑市海岸には、伊勢湾に残された貴重な干潟・アマモ場があり、これを埋め立てることは、干潟・アマモ場の直接な破壊になるばかりでなく、伊勢湾全体の水質や魚類の生産に与える影響が大きい。

日本海洋学会海洋環境問題委員会は、1999年6月に「閉鎖性水域の環境影響評価に関する見解-中部国際空港の場合-」を発表している。これによれば、空港計画区域に近い常滑周辺のアマモ場は、伊勢湾全体のアマモ場の33%を占め、種々の魚介類の産卵場や幼稚仔魚の生育場となっている。また空港対岸部には前浜干潟が広がり、干潟・アマモ場と周辺の浅場を加えた水域は、魚類・甲殻類・貝類などの生育の場ならびに底生生物による水質浄化の場として、重要な役割を果たしている。

空港関連埋立事業によって、干潟・アマモ場が消失し、地形変化による底質・水質の悪化が生じ、周辺海域の生態系が変化すれば、結果として伊勢湾の海域全体の水質の悪化につながるおそれが強い。

 

2. 中部国際空港関連埋立事業に使用する山砂は、幡豆町の山林150haを崩して調達することになっている。しかし幡豆町の山林は、レッドデータブック記載種が生育する重要な里山環境であり、これを土砂採取の目的で破壊することは許されない。

幡豆の将来を考える会および愛知県の環境影響調査によれば、関連埋立事業の土砂を採取する幡豆町の山林は、クロヤツシロラン(NACS-J・WWFJのレッドデータブックでは危急種、環境庁のレッドリストでは絶滅危惧IB類)をはじめとする絶滅のおそれのある植物種が生育し、また流域の水路はゲンジボタルが生息する重要な里山環境であることがわかっている。

愛知県企業庁はここを幡豆地区内陸造成事業として、工業用地・住宅用地を開発する目的で買収し、環境影響評価を実施しているが、工場誘致の見通しはたっておらず、この重要な里山環境を空港関連埋立事業の土砂採取の目的で破壊すべきではない。

 

3. 幡豆町の山林を崩して土砂採取を行った場合、シルト以下の粒子は調整池では沈澱しないことから、三河湾の沿岸生態系およびアサリ漁業への影響は避けられない。

「三河湾」の監修者である西條八束名古屋大学名誉教授によれば、愛知県の環境影響評価書では、森林伐採・土砂採取による泥は沈殿池によって大部分除去できるとしているが、流出する泥の量はSS(浮遊固形物質)量として記されているだけで、粒子の大きさには触れていない。除去されるのは大きな粒子だけであり、出水時にはシルト以下(粒径0.05mm以下)の粒子は上澄みとして、隣接する三河湾まで直接流出する可能性が高い。三河湾は、アサリ漁、ノリ養殖など、日本有数の豊かな海である。三河湾の沿岸生態系に影響を与えるおそれの強い、幡豆町山林の土砂流出防備保安林の指定解除を行うべきではない。

000616中部空港予定地.jpg

←空港予定地

 

 

 

 

 

 

000616土砂採取地隣接の里山.jpg

←土砂採取地に隣接する里山

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