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2018.02.07

奄美沖のタンカー事故による油類流出についての要望書を出しました

▲ 奄美大島に漂着した油(撮影:原井一郎)

 

今年1月、奄美沖でタンカーが沈没し、史上最多と言われる油類が流出しました。

積荷が揮発性の高い超軽質原油であったため、影響は小さいとする見解もありますが、この油では前例がない大規模な流出であり、燃料の重油とみられる油が奄美大島などに漂着し始めています。

日本の海岸は多数の管理主体が関係することが多く、情報と対策の統率が必要であることから、日本政府に早急に適切な対策を要望しました。

20180207_奄美沖のタンカー事故による油類流出についての要望(PDF/124KB)


29日自然第89号
2018年2月7日

内閣総理大臣 安倍晋三様

奄美沖のタンカー事故による油類流出についての要望

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

1月6日に上海沿岸から約300kmの東シナ海で、イランのタンカーと香港籍の貨物船が衝突、奄美大島から西方約315km沖の日本の排他的経済水域(EEZ)まで漂流して沈没してから1カ月が経過した。

タンカーの積荷であり流出したコンデンセート(超軽質原油)の量は史上最多と報道されている(AFP、2018)。コンデンセートとともに燃料として積んでいた重油も流れ出し、1月16日に発表された英国立海洋学センター(University of Southampton and National Oceanography Centre、2018)の報告書では今後1か月以内に日本に漂着すると予測されていた。

今回の事故については影響が大きい(Corben、2018)とする意見と、影響が小さいとする意見の両方がある。揮発性であるコンデンセートによる被害は短期的とする見解があるものの、今回ほど大規模にコンデンセートが自然界に流出したことは前例がないため、残留毒物などの影響を懸念する声がある(Carswell、2018)。コンデンセートによる影響と重油による影響の混同も考えられる。

今月上旬には宝島や奄美大島に油の漂着が確認され、同事故との関連性が懸念されている。油の漂着によって、アーサ採りや浜下など同地域の地域住民の伝統的な生活への影響も懸念されている。日本にとって海は重要な財産である。複合的かつ長期的に及ぶであろう影響を科学的に把握して、被害を最小限に食い止める対策が必要である。

 

今回の油類の流出は、日本だけでなく周辺諸国はじめ広く世界への影響も危惧されることから国際的な協力連携が必要なことに加え、我が国の海岸は管理主体が多く複雑なため、政府が情報把握と対策を統率しなければ現場の混乱を拡大させることになる。日本政府として以下について早急で適切な対策を要望する。

  1. 正確な情報を広く発信すること。2月2日に首相官邸の危機管理センターに情報連絡室が設置されたとの報道があるが、その後の状況は伝えられていない。被害の程度や対応にすでに混乱が生じており、現状をできるだけ早く国民に伝えることが急務である。
  2. 海上保安庁が調査を行っていることが報道されているが、海洋汚染や海洋生態学の専門家を含むチームを作ることが必要である。
  3. 油類の漂着が起こっている場所での対処方法、今後、漂着が起こる可能性がある場所での対応を早く決めること。
  4. 市民が参加できる体制、異常を発見した人が連絡できる窓口を作る、異常を見つけた人がどのように対応したらよいかマニュアルなどを整えること。広範囲に広がる可能性が示唆されており、被害を早期に発見するためには、市民の協力が不可欠である。
  5. 海の生態系への影響を短期的、長期的に測ること。
  6. これまでの経験から重油が環境に与える影響はきわめて大きい。コンデンセートと重油の複合的な影響について予測と対策を行うこと。
  7. 海外の専門家や経験者の指示も求めること。
  8. 日本だけでなく被害は国際的に広がる可能性がある。国際水準といえる対応を行うこと。
  9. 調査と対応のための予算を確保すること。

以上

参照:
(1) Agence France-Presse(January 15, 2018).China races to tackle expanding oil spill after tanker sinks
https://www.pri.org/stories/2018-01-15/china-races-tackle-expanding-oil-spill-after-tanker-sinks
(2) NOAA(August 2, 2017) Gulf of Mexico ‘dead zone’ is the largest ever measured
http://www.noaa.gov/media-release/gulf-of-mexico-dead-zone-is-largest-ever-measured
(3) Corben,Tom(2018) Iranian Oil Tanker Disaster Highlights Northeast Asia’s
https://thediplomat.com/2018/01/iranian-oil-tanker-disaster-highlights-northeast-asias-faultlines/
(4)  Cally Carswell (2018)Nature 554, 17-18.Unique oil spill in East China Sea frustrates scientists
https://www.nature.com/articles/d41586-018-00976-9
(5)  University of Southampton and National Oceanography Centre (2018).Sanchi oil spill contamination could reach Japan within a month
https://www.southampton.ac.uk/smmi/news/2018/01/17-sanchi-oil-spill-contamination-japan.page
(6)  NOAA(2017)Deepwater Horizon Oil Spill Impacts on Gulf of Mexico Shorelines and Nearshore Areas
https://response.restoration.noaa.gov/about/deepwater-horizon-oil-spill-impacts-gulf-mexico-shorelines-and-nearshore-areas


▲ 奄美大島に漂着した油(撮影:原井一郎)

▲ 奄美大島に漂着した油(撮影:原井一郎)

▲ 「濡れた小石そっくりで、それとは気づかず足を踏み入れてしまった」油に濡れたスニーカー(撮影:原井一郎)

 

 

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