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2017.03.24

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地の視察に関する要望書

2017年2月1日に、日本政府は奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産(以下、「奄美・琉球世界自然遺産」という。)推薦地について推薦書を提出しました。しかし、推薦書の内容には、自然保護の立場からみると大きな問題があるため、日本自然保護協会(NACS-J)は6つの団体と一緒にIUCNが今年に予定している視察の際にご配慮いただきたい5つの点について要望書を出しました。

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地の視察に関する要望書(PDFファイル2.02MB)

<英語版>
Request concerning the IUCN field mission of proposed World Heritage sites in Amami-Oshima Island, Tokunoshima Island, the northern part of Okinawa Island, and Iriomote Island(PDF2.02MB)


2017年3月21日

Ms Inger Andersen
Director General of IUCN
(IUCN事務局長)
Mr Tim Badman
Director, IUCN World Heritage Programme
(世界遺産プログラム・ディレクター)
Dr Piero Genovesi
Chair, IUCN SSC Invasive Species Specialist Group(ISSG)
(侵略的外来種グループ長)

Dr Kathy Mackinnon
Chair, World Commission on Protected Areas
(世界保護地域委員会)

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地の視察に関する要望書

公益財団法人 日本自然保護協会     理事長 亀山 章
Okinawa Environmental Justice Project   代 表 吉川秀樹
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン   会 長 徳川恒孝
ジュゴン保護キャンペーンセンター   代 表 海勢頭豊
公益財団法人日本野鳥の会       理事長 佐藤仁志
認定特定非営利活動法人 野生生物保全論研究会 会 長 安藤元一
ラムサール・ネットワーク日本
共同代表 安藤よしの・柏木実・呉地正行・堀良一・前川盛治

 

本年2月1日に、日本政府は奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産(以下、「奄美・琉球世界自然遺産」という。)推薦地について推薦書を提出した。

日本の環境団体は、1990年から奄美、徳之島、沖縄北部、西表島を含む南西諸島の世界自然遺産登録を要望し、IUCNは2000年にヨルダンで開催された総会で、日本政府に対して沖縄島北部の世界自然遺産への登録を検討することを求める勧告を採択している。沖縄島北部はヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど固有の生物の生息地であるとともに、琉球弧の島々が生態系や動植物群集の進化における進行中の生態学的および生物学的過程を代表する顕著な見本であり、世界的な保護地域に指定されるべき価値を有していると考えてきたからである。世界自然遺産への登録を提言してきた環境団体として、今回の推薦書の提出はたいへん喜ばしい。

しかし、推薦書の内容には、自然保護の立場からみると大きな問題がある。自然の価値が十分守られ、かつ将来的にも損なわれない世界自然遺産として登録されるために、IUCNが今年に予定している視察の際には、以下の5点について特にご配慮していただくよう要望する。

要望事項
(1)視察への外来生物分野の専門家の同行
奄美・琉球諸島における外来生物の侵入予防措置に、問題が懸念されている(下記e を主な理由とする)。外来生物対策が国際的基準を満たしているかどうか、世界自然遺産推薦地としてふさわしい状態かどうか、外来生物分野を専門とするISSG(侵略的外来種グループ)の委員に視察に同行いただきたい。この問題については2016年の第6回世界自然保護会議にて勧告が出されているが、これまでのところ日本政府には対応する姿勢が見られない。

(2)沖縄島における視察場所の追加
下記b)、c)を主な理由として東村高江と、下記e)を主な理由として名護市辺野古および大浦湾を視察地に含めていただきたい。これらの地域は、2000年、2004年、2008年の3度にわたりIUCNから勧告・決議を出していただいた地域でもあるため、その後の経過を視察いただきたいという意味もある。

(3)奄美大島と徳之島における視察場所の追加
下記a)、e)を主な理由として奄美大島と徳之島において、推薦地域の周辺、特に島外に搬出される採石事業を行っている採石場を、視察先に含めていただきたい。

(4)市民との意見交換の場の確保
下記d)を主な理由として、市民との意見交換の場を設けて頂きたい。2010年に小笠原諸島が世界自然遺産に指定された視察の際には、IUCNと市民の意見交換の場が設けられていたと聞いている。そのような場を奄美・琉球諸島についても、設けていただきたい。

(5)審査にあたり意見照会をしていただきたい専門家
① 外来生物問題に関する専門家
琉球大学風樹館にて学芸員としてクモ類と昆虫を主な専門にしている佐々木健志氏(*1)。
琉球大学農学部にて昆虫類を研究されている辻瑞樹氏(*2)。
琉球大学農学部にて植物の分野から外来生物問題に取り組んでいる横田昌嗣氏(*3)。
この3名は沖縄県公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する専門委員として、那覇空港滑走路増設事業における外来生物対策について現地視察および助言をした専門家である。

② やんばるの森:
金井塚務氏(*4)。日本森林生態系保護ネットワーク(CONFE:The Conservation Network for Forest Ecosystem in Japan)代表。日本の森林生態系、沖縄島北部の森林生態系全般についての専門家。
屋富祖昌子氏(*5):亜熱帯地域におけるショウジョウバエ科昆虫とその寄主植物との関係。日本昆虫学会会員。元琉球大学助教授。理学博士。
宮城秋乃氏(*6):沖縄島北部における昆虫類の生態研究。他の昆虫学者よりも長くやんばるの森のフィールドで時間を過ごしている。日本鱗翅学会会員。
太田英利氏(*7):兵庫県立大学 自然・環境科学研究所。 理学博士。両生類・爬虫類の分類学、生態学。特に亜熱帯島嶼における研究の第一人者。
伊波義安 (*8):元高校教師(生物学)。うるま市在住。30年以上にわたりやんばるの森の変遷を観察してきた。
玉城長生(*9):高江周辺のムヨウランについて長年の調査・観察の実績を持つ。

③ 米軍基地由来の環境汚染
河村雅美氏(*10)。Informed Public Project代表。IUCNの生態系管理委員会委員をつとめる。社会学者。

④ 北部訓練場については、在沖米軍・米国側の環境部の専門家。

以上

 

自然保護の立場から考える問題点と背景
上記の要望に至った問題意識と背景は以下の通りです。

a)世界公園会議で決議されたような十分な緩衝地帯が必要
沖縄島北部やんばる地域の推薦地は、東側の多くで緩衝地帯がなく、推薦地域(property)がむき出しになっている(図1-1)。奄美大島と徳之島でも、緩衝地帯がないか、緩衝地帯の面積が小さい場所が多い(図2、3)。
世界遺産に登録されると、にわかに周辺で観光地化が進み開発圧力が高まる傾向がある。今後、将来的に考えられる開発圧力から世界遺産を守るには、推薦書で提示された緩衝地帯では十分ではない。1992年2月の第4回世界公園会議では、ユネスコとIUCNによる世界遺産ワークショップが開かれ、推薦地域を保護するための緩衝地帯はもちろん、周辺の開発圧力から資産を守るために管理計画が適用される世界遺産管理地域(World Heritage Management Area)を外側に設定すべきという決議が採択された(Mishra and Ishwaran 1992, Yoshida 2012)。さらに、ユネスコ、IUCN、ICOMOSが開催した世界遺産と緩衝地帯に関する会議の結果、推薦地域の外側に十分に緩衝地帯を設定すべきであるとの決議が、世界遺産委員会において採択されている(UNESCO 2009)。
世界自然遺産登録地の保護担保措置は、日本では、自然公園法に基づく国立公園の指定が原則とされているが、上述の通り、推薦地域を保全するための緩衝地帯や世界遺産管理地域の設定が不十分である。
b)固有の生物の生息地として重要な自然環境は、自然遺産としての完全性を保つためすべて世界遺産に登録すべき
やんばるの森は全体では約34,000haに及ぶ大きな森で、動物種が約5,400種、維管束植物種が約1,000種生息・生育しており、ノグチゲラやヤンバルクイナ、オキナワトゲネズミ、ヤンバルテナガコガネをはじめとして、世界中でここだけに生息・生育する固有種の割合が高い。これらの種の多くは、国の天然記念物に指定されている。また、このうち170種以上は、日本の環境省のレッドリストに記載されており、現状では絶滅の危機にある。一方、国立公園や世界自然遺産の推薦地は、自然植生が残されている範囲のうち狭い範囲しか推薦されていない(図1-1)。絶滅の危機にある固有動植物種の保全のためには、生息地はできる限り広く保全していくべきである。

世界自然遺産の推薦地域は、固有の生物種の分布を反映しているのではなく人間の都合が優先されている。ノグチゲラやヤンバルクイナ、オキナワトゲネズミ、ヤンバルテナガコガネなど、多様な生態を持つ生物の分布がこの範囲内に収まるとは考えにくい。別の例をあげると、北部訓練場(US Marine Corp’s Northern Training Area (NTA))の一部であるヘリコプター着陸帯移設事業が進められている沖縄県東村高江では、絶滅危惧種や希少種の宝庫である生物多様性豊かな場所であり、特別天然記念物のノグチゲラの営巣木が29箇所も確認され、リュウキュウウラボシシジミやリュウキュウウラナミジャノメなど希少な昆虫類も多く記録されている。しかし、この地域は推薦地に含まれていない。このように、保全のために大切な場所が推薦地域に含まれていない可能性や、次章に述べるように、未返還の北部訓練場の中に希少な生物が生息する可能性が懸念される。なお高江と推薦地は8kmしか離れていない(図4)。やんばるの森は一体のまとまりとして保全されなければ、完全性の担保は不十分であると考える。

各生物の分布状況、とりわけ希少な種に重点を置いて、繁殖環境などの重要な場所は推薦地域に含め、それを取り囲むバッファーゾーンを設置すること、重要な自然環境は原則としてすべて世界遺産として管理することが必要である。
多くの環境団体は、名護市東海岸を含む沖縄島北部のやんばる地域の海域から陸域まで広く含む沖縄島北部の世界自然遺産登録を求めてきた。小さな島嶼環境では海域と陸域のつながりを保全することが重要であると考えたことによる。絶滅危惧種であり、この周辺海域を世界の分布の北限とするジュゴンは沖縄島北部にのみ生息している(Kasuya & Abe 2015)。また、262種の絶滅危惧種を含む5,334種の生物種が確認されている名護市辺野古の海域(沖縄防衛局、2013)も含められるべきであると考える。絶滅危惧種であり固有種であるヤンバルクイナやノグチゲラの生息地の高江も同様である。より広い地域が世界自然遺産の対象となり、その名にふさわしい生物多様性保全と管理が整備される必要がある。

c)「完全性」を担保するために、管理計画の対象である世界遺産管理地域は北部訓練場を含めた計画にするべき
沖縄島北部(やんばるの森)には、1957年以来、7,800haの面積の米軍北部訓練場が存在してきた。2016年12月にそのうち約4,000haが日本に返還されたが、残りは現在も北部訓練場として使用されている。返還地については、登録地への追加申請が検討されると予測されるが、現状では推薦地には含まれていない。また返還されずにいる北部訓練場も推薦地に含まれていないが(図1-2)、絶滅危惧種や希少な生物は、北部訓練場を含むやんばるの森全般を利用していると考えられる。図6-2を見ると、昨年12月に返還された北部訓練場により、西銘山、照首岳、与那覇岳の西側などノグチゲラの生息域のうち大きな部分が日本政府のもとに返ってきたことが伺える。しかし依然として大きな部分が未返還の北部訓練場の中にある。またノグチゲラの生息域の全てが推薦地域に含まれている訳ではないので、希少な生物の生息地については、すべてを含むべきであると考える(図6-1)。これは、手付かずの森林のほとんどはもう北部訓練場の中にしか残っていないとするIto et al.(2000)からも伺える。ノグチゲラのように希少な生物は手付かずの森林を主な生息域にする可能性が高いことから、米軍と協議を行い、北部訓練場の保護担保措置を確保しなければやんばるの生物多様性の保全はできない。

返還された部分も未返還の北部訓練場も、連続した自然環境と考えられ、面的に区分できないことから(宮城、2016)、基準の「完全性」を担保するためには、世界遺産管理地域に組み込んだ保全管理計画の策定が重要と考える。加えて北部訓練場は米軍の訓練施設であるため、航空機からの騒音、軍の廃棄物による土壌汚染、航空機の墜落が、隣接する推薦地域に及ぼす影響が何もないとは考え難い。今回提出された推薦書本体の中には、北部訓練場の位置を記した地図が1枚もなく、北部訓練場から生じるであろう環境への影響についても記述は全く無かった。「完全性」の担保ためにどのような手立てがとられているか、日本と米国間で協議が行われているかなどについて、現地調査の際に確認をお願いしたい。また、未返還の北部訓練場については、米軍側が保有する絶滅危惧種等の環境情報を、IUCNから米国政府に提供を求め、その情報も把握したうえで、「完全性」の担保がなされているか判断して頂きたい。

上記の理由から、奄美・琉球世界自然遺産の推薦地のうち、奄美大島、徳之島については、バッファーゾーンの拡大などの措置が必要である。沖縄島北部については、推薦地が連続する自然の一部だけを断ち切る形で設置されている。ユネスコは「完全性」の定義を「自然遺産及び/または文化遺産とそれらの特質のすべてが無傷で包含されている度合いを測るためのものさしである」としている。今回の推薦書の内容では「完全性」に大きな課題が残されており、その改善が必要と考える。

d) 市民との意見交換の場が重要である
上記のa)~c)とも関連するが、今回の推薦地の区域や内容について、推薦の準備をしてきた行政省庁と、地域の住民や関係者・NGO等との十分な意見交換が行われていない。
沖縄島北部では、推薦地域やバッファーゾーンなどの設定、また北部訓練場で新たに建設されたヘリコプター着陸帯やその使用、そして未返還の北部訓練場と世界遺産登録の関係について、全ての地域の住民の意見が聴取されたことはなかった。そのため、トップダウンで決められたヘリコプター着陸帯の建設については、周辺の住民は現在も反対運動を続けている。また、世界遺産登録が、着陸帯建設のバーターとなっているのではないかという懸念の声も聞かれる。
奄美大島や徳之島においてもe)で述べる採石場は推薦地域の外に位置しているものの、採石場を営む人々や周辺に住む人達には、推薦地域の詳細について知らされることもなく、意見を述べる場も設けられなかった。
西表島においても環境省の地域部会の1つである西表部会が作られ、2016~2017年に勉強会や準備会は行われたが、行動計画の公式な議論は2017年2月までに2回しか行われておらず、また住民は傍聴するのみで住民意見の反映に至っていない。
IUCNの現地調査の際には、IUCNの担当者と、現地住民でもある専門家や、明確な利害関係者である地域住民との意見交換の場を設けていただくことを望む。

e) 候補地の至近距離にある埋め立て計画に、県外から大量の土砂が持ち込まれるため、外来種問題対策が必要である。
推薦地の南には沖縄島名護市辺野古・大浦湾があり(図4)、そこで米軍普天間代替施設移設建設事業が進められようとしている。この事業の遂行には2,100万立方メートルの埋め立て土砂が必要で、1,700万立方メートルは県外の6県7箇所から調達が予定されている(図5)。土砂調達予定地である6県7箇所には、今回の推薦地である奄美大島と徳之島も含まれており、それぞれ530万立方メートルと10万立方メートルの土砂がこれらの島々から採取される予定である。奄美大島と徳之島の採石場や、埋め立て土砂が搬入される辺野古は、推薦地には含まれていないが、辺野古と世界自然遺産の推薦地はわずか16kmしか離れていない。
土砂調達予定地6県7箇所には、気候帯も生物地理区分も異なる場所が含まれており、瀬戸内の採石場には特定外来生物アルゼンチンアリが混入していることが知られている。奄美・琉球諸島の島々には島ごとに固有の生物が生息しており、島々に進行中の進化の過程が確認されていることが今回の推薦に至る理由の1つである。これらの島々の採石場から沖縄島の生態系に土砂を持ち込むことは、それぞれが異なる生態系を持つ島々と、進化した過程への大きなリスクを伴うため、徹底した処置や管理体制を科すことが必要である。
これらの点は、昨年9月のIUCN第6回世界自然保護会議で採択された勧告「島嶼生態系への外来種侵入経路管理強化」に含められている。同勧告では、国内であっても物や人の移動について対策を取る必要性があることについて触れているが、普天間代替施設移設建設事業の事業者である日本政府が、この点を考慮しているとは現計画からは考えられない。
今回の推薦地である4つの島々は、固有種の保全など生物多様性保全を進めるために、これまでに入ってしまった外来種の駆除を進めると同時に、新たな外来生物問題を引き起こさないように「外来種を入れない」および、住民参加による飼育下の動植物の統合的管理体制などの予防対策を取ることが急務である。
また、推薦書には奄美大島と沖縄島のマングース問題が書かれているが、その他の外来種については記載が少なく、また今後どのように駆除を行っていくのかその対策が書かれていない。すでに特定外来生物に指定されている種のみがリスクを持つのではなく、島嶼においては想定外の生物が導入後に繁殖し、駆除の難しい外来生物問題を引き起こすケースも予想される。そのような想定に対する対策も検討されていない。外来種問題は世界では深刻な問題と位置付けられているが、日本ではまだ認識が低い可能性が推察される。
ちなみに沖縄島中部で進められている那覇空港滑走路増設事業という大きな埋め立て工事においては、外来生物法と沖縄県土砂規制条例のもとに行われたにも関わらず、採石場付近で特定外来生物が確認されたが、しかし、事業をいったん中止して適切な対応がなされることはなかった。結果として、特定外来生物の混入のリスクを完全に排除することができないまま沖縄島に運び込まれることとなった。

今後、奄美・琉球世界自然遺産候補地では観光利用の増大により、人と物の移動による外来生物問題が生じる可能性が高い。世界自然遺産にふさわしい対応ができるように、外来種の侵入予防と初期段階での対応及び地域全体での管理体制がきちんと保全計画に位置付けられているのか、現地調査の際に確認されることを望む。

 

世界自然遺産を持つ島全体の利用のあり方について

私たちは世界自然遺産という特別な保護地域を含む島々のあり方について、以下の問題提起をしたい。
沖縄県や鹿児島県は観光客の環境収容力について検討し直すべきである。沖縄県を訪れる観光客数は現在年間約861万人であり、それを超える年間1,000万人が目標として掲げられている。そのため新石垣空港の新設、那覇空港第二滑走路の増設、多人数の観光客を運べるクルーズ船の接岸バース建設など港の改変、リゾートホテルやレンタカーの数の増大などが起こっている。実際に沖縄においても奄美大島や徳之島においても観光客の数が増加している。この4つの島々はいずれも面積が小さく、人が生活できる場所も限られているため、環境収容力の限界を超えた環境影響が心配される。
今回の推薦地域の一つである西表島ではこの島の固有の生物であるイリオモテヤマネコの交通事故が増えている。近年の観光客の増加に伴いレンタカーなどによるイリオモテヤマネコのロードキルが原因であるとされている。イリオモテヤマネコやその他の生物のロードキルなど人間活動の影響を受けることに関し、推薦書には問題として書かれているがそれに対する有効な対策が書かれていない。観光客の増加から来る圧力も考慮すべきではないかと思われる。
またさらに奄美大島では奄美市に42,650平方メートルの巨大な産業廃棄物処理施設建設や自衛隊の基地建設が予定されている。これらの場所においても住民との合意形成ができておらず地元での社会問題となっている。
沖縄島においても米軍普天間代替施設移設建設事業や高江のヘリパッド着陸帯建設など自然破壊や住民との合意形成という点で大きな社会問題となるケースが多数ある。
世界自然遺産推薦地を持つ島々においての、これら持続可能性に欠き、候補地域に影響が及ぶ可能性がある人間活動については、その見直しと、地域の関係者が連携した対策を実施されていることが必要と考えられる。

このため今後の奄美・琉球世界自然遺産候補地での観光利用の増大に対応できる体制についても視察の際にご覧いただきたい。

以上

賛同団体
北限のジュゴン調査チーム・ザン
ジュゴンネットワーク沖縄
二見以北十区の会
二見以北住民の会
ヘリ基地反対協議会 ダイビングチーム・レインボー
泡瀬干潟を守る連絡会
自然と文化を守る奄美会議
海の生き物を守る会


 

図1-1 沖縄島北部の植生と世界自然遺産推薦区域との関係 (自然環境基礎調査の結果及び世界自然遺産推薦書をもとに日本自然保護協会作成)

 

クラス域」は、植物社会学的な定義で、ヤブツバキクラス域は常緑広葉樹林を示す。その構成種としては、沖縄島北部ではブナ科シイ属の常緑広葉樹であるスダジイ(沖縄では地方名イタジイ)が優占する。

 

図1-2 沖縄島北部の植生と米軍訓練場との関係 (自然環境基礎調査の結果をもとに日本自然保護協会作成)

 

図2 奄美大島での植生と世界自然遺産登録推薦区域との関係 (自然環境基礎調査の結果及び世界自然遺産推薦書をもとに日本自然保護協会作成)

 

 

図3 徳之島の植生と世界自然遺産推薦地域との関係 (自然環境基礎調査及び世界自然遺産推薦書をもとに日本自然保護協会作成)

 

図4  世界自然遺産推薦地と高江、辺野古の位置関係 (環境省 やんばる国立公園公園計画書、奄美群島国立公園公園計画書の情報をもとに日本自然保護協会作成)

 

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図5 辺野古の埋め立て土砂調達予定地 (「普天間代替施設移設事業に係る公有水面埋立承認申請書(沖縄防衛局 2013)」の埋立土砂等の採取場所及び搬入経路図を参考に日本自然保護協会が作成)

 

図6-1 ノグチゲラの生息域と世界遺産推薦区域の関係 (会報『自然保護』1995.1 No.392別冊活動レポート号及び世界自然遺産推薦書をもとに日本自然保護協会作成)

 

図6-2ノグチゲラの生息域と米軍訓練場の関係 (会報『自然保護』1995.1 No.392別冊活動レポート号をもとに日本自然保護協会作成)

 

参考図1-1 面的な広がりをもつおよそ30年以上のスダジイ自然林 (会報『自然保護』1995.1 No.392別冊活動レポート号より)

 

参考図1-2 面的な広がりをもつおよそ30年以上のスダジイ自然林と世界遺産推薦区域の関係 (会報『自然保護』1995.1 No.392別冊活動レポート号及び世界自然遺産推薦書をもとに日本自然保護協会作成)

 

参考図1-3 面的な広がりをもつおよそ30年以上のスダジイ自然林と米軍演習場の関係 (会報『自然保護』1995.1 No.392別冊活動レポート号をもとに日本自然保護協会作成)

 

参考文献:
1) Yoshida, Masahito (2012) World Natural Heritage and Biodiversity Conservation. Chitin-shokan. Tokyo
2) Mishra, Hemanta and Natarajan Ishwaran (1992) Summary and Conclusion of the Workshop on the World Heritage Convention held during the IV World Congress on National Parks and Protected Areas, Caracas, Venezuela. World Heritage Twenty Years Later. IUCN.
3) UNESCO (2009) World Heritage and Buffer Zones. World Heritage Papers 25. UNESCO World Heritage Centre.
4) Kasuya&abe(2015).Building a Futemma Air Station Replacement Facility at Cape Henoko and Its Impacts on Japan’s Dugong Pupulation
http://okinawaoutreach.blogspot.jp/2015/06/for-sake-of-okinawa-dugongs-kasuya-abe.html
5) Ito,Y., Miyagi K, Ohta H(2000)”Imminent extinction crisis among the endemic species of the forests of Yanbaru, Okinawa, Japan”, Oryx. Vol 34 No.4, October,Oryx. Vol 34 No.4, October
6) 宮城邦治(2016)高江アセスの問題点. 第33回 日本環境会議沖縄大会要旨集
「環境・平和・自治・人権ー沖縄から未来を拓く」
7) NACS-J(1994).The status report of the conservation of Yambaru area, northern part of Okinawa (Interim), the Nature Conservation Society of Japan, 1994
8) 環境庁(1987)昭和62年度沖縄島北部地域調査報告書

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