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2017.03.28

日本政府が公表した海洋生物レッドリストに対する意見を出しました

環境省と水産庁は今年3月にそれぞれ海洋生物のレッドリストを公表しました。 日本自然保護協会は、希少な生物の棲息状況が適切に把握され、効果的な生物多様性保全が進むことを強く希望する立場から、意見書を提出しました。

日本政府が公表した海洋生物レッドリストに対する意見(PDF、192KB)


2017年3月27日

環境大臣   山本 公一 殿
農林水産大臣 山本 有二 殿

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本政府が公表した海洋生物レッドリストに対する意見

環境省と水産庁は今年3月にそれぞれ海洋生物のレッドリストを公表した。環境省版では 絶滅、絶滅危惧、情報不足など5段階で評価され、合計443種が掲載された。絶滅はこの35年間確認されていないオガサワラサンゴ、絶滅危惧は56種にのぼる。南の海に棲息する種類が圧倒的に多い。一方で水産庁では、情報不足としてナガレメイタガレイ1種およびランク外(水産庁の評価カテゴリーのいずれにも属さない又は評価を行うだけの情報が無い種)として93種の掲載があった。日本自然保護協会は、希少な生物の棲息状況が適切に把握され、効果的な生物多様性保全が進むことを強く希望する立場から、以下の事項について要望する。

1.省庁縦割りを解消すること

水産庁が得ている水産資源のデータと環境省が用いている魚類・甲殻類・サンゴ類などの生物は、密接に関係して海域生態系を作り上げている。そのため、環境省と水産庁の所有するデータを併せて1つのレッドリストを作ることが必要である。環境省と水産庁が別々にレッドリストを作るという縦割りを続けるのであれば、生物多様性国家戦略2010をはじめ、生物多様性条約第10回締約国会議で採択された愛知ターゲットを実現するものにはなりえない。環境省、水産庁、国交省など他省庁をより積極的に連携させ、国の戦略として位置づけることが望まれる。

2. 海域のデータを総合的に評価すること

1.とも深く関係することであるが、今回公表された資料から、環境省、水産庁ともに生物分類群ごとに分科会を設けて議論を進めたことが伺える。分類群ごとの評価も重要であるが、海域全体を視野に入れた総合的評価も必要である。

その1つの例として鯨類以外の海棲哺乳類が掲載されていないことがあげられる。例えば生息数が少なくなり水産資源保護法施行規則で捕獲が禁止されているスナメリや生息数が10頭以下になったジュゴンなどの掲載がない。環境省、水産庁両方のレッドリストにも掲載がない状態である。もう1つの例として海の植物である海草、海藻があげられる。特に亜熱帯域に分布する海草類はいずれも希少で、環境省の陸上植物とともに維管束植物の中でリストアップされているが、海洋生物との関連が深いため、一連の保全がなされるような配慮が必要であるものの、同様にリストに掲載がない。今後、これらのリストをもとに法制度など保護の網をかけていくことが考えられるが、これらの生物ははじめから考慮されていない状態である。

このようなことを防ぐためにも、海域を総合的に評価することが必要である。

3.あらゆるデータを用いること

絶滅のおそれのある海洋生物の選定・評価検討会の議論でもデータの不足が指摘されていたが、これまでにさまざまな場所で開発に伴い環境影響評価が行われている。また浅海域や干潟などでは市民の手で調査が行われている場合も多い。これらの結果も含め、入手可能なあらゆるデータを用いてレッドリストの作成を行うことが望ましい。

4.新たなデータが出た場合には、レッドリストの見直しを常に行えるような体制にすること

海に関しては現段階では十分な科学的データが揃っていないが、新しい発見も多くある。今後、新しい知見が得られた場合には、レッドリストの見直しに素早く対応できる体制にしておくことが大切である。

5.市民調査を活かし、育てる体制を作ること

海の調査ができる人材は絶対数が少ないため、調査にかかわる人材の裾野を広げる必要がある。ビジターセンターのレンジャーや、地域のキーパーソン、地域の市民団体などの活用を通じ、市民にモニタリングの大切さを教え、調査への参加も出来るような人材育成システムを検討することが望ましい。

2013年に行われた第183回国会において、種の保存法の改正について、衆参両院において付帯決議が採択された。この中で、保全戦略の強化が書かれており、その一環として海洋生物のレッドリストが作成されたが、上記のような問題点があるのでは、国として真摯に対応したとは言い難い。

近年、世界各国で海洋への関心が高まっている。漁獲資源の乱獲、地球温暖化による影響、生息地の破壊や汚染などとともに、2015年9 月に国連総会が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する(目標14)」ことが目標の1 つとして掲げられた。

今回レッドリストに掲載された種の多くは奄美・琉球諸島に棲息する生物である。今後、世界自然遺産登録を目指す海域において、これらの生物種の保護は急務である。レッドリストに掲載された種については保護策をとることが急務であり、またデータ不足とされた生物についても予防原則に基づいて保護策をとることが急務である。

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