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2013.12.26

国土強靭化法と国土強靭化法大綱に対する声明を発表しました。

 


2013年12月26日

「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」
及び「国土強靭化政策大綱」に対する声明

公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

2013年12月4日参議院において、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(以下、国土強靭化法)」が可決・成立し、同年12月11日に公布された。また、同年12月17日の国土強靭化推進本部(本部長・安倍晋三首相)会合で「国土強靭化政策大綱(以下、大綱)」が決定された。
 公益財団法人日本自然保護協会は創立以来60余年にわたり、日本の生物多様性を保全する活動をしてきた。この観点から、国土強靭化法及び大綱に関して強く懸念を表明するものである。

1.「大きく動く」特性をもつ日本の自然環境を正しく認識した上での対応をすすめるべきである。
2011年3月11日の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波は、日本において古来より1000年に一度の確率で生じてきた自然現象である。我が国は複数のプレートの境界に位置し、海溝型地震が頻繁に発生するだけでなく、内陸型地震も多い。さらに日本の人口の大部分が集中している沖積平野は本来的に軟弱地盤であるため、必然的に地震による被害が大きくなる性質がある。また地震やそれに伴う津波だけでなく、多くの火山を有し、台風やそれによる洪水・地すべりを頻発するモンスーン気候帯に位置し、100~1000年スケールでの大規模な自然災害をこうむる性質を強く持った国である。しかしそのような気候や地質・大規模な動きがあるからこそ、この国を支える豊かで多様な自然資源とそれを育む基盤環境が形成されてきた。
我が国の国土の基盤はこうした条件、いわば「大きく動く」という条件のもとに形成されてきたといえる。従って、この「動く」基盤環境を前提として我が国の人命の保護を考えるべきである。3.11の東日本大震災では、残念ながら多くの貴重な人命を失ったが、同時に自然現象を人の力で抑え込むことが不可能であることが示された。我が国は、これまで有史以来数多くの自然現象により多くの被害を受けており、そのような日本の自然環境の特性を的確に理解し、大規模な自然現象を賢明に「受け流す」ためのしなやかな国土形成のための伝統的な技術・知識を多く持っている(たとえば津波てんでんこや、河川災害常習地などの輪中)。これらのことに鑑み、優先されるべきはソフト面の充実であると考えられる。

2.国民的なコンセンサスを得る努力をし、環境影響評価手続きを丁寧に行うべきである。
今回の国土強靭化法やそれに伴う大綱は、いわば今後の日本の国土デザインを示したものである。そのような重要な法案・大綱でありながら、本法案の衆議院での審議時間は極めて短く、十分に審議されたとは見えない。本来であれば、広く国民から意見を集め、丁寧に国民的なコンセンサスを得るべく慎重に進めるべき内容である。
また、国土強靭化法の付帯決議に、環境影響評価等の手続きの迅速化について意見が付されているが、この手続き自体が合意形成の手続きでもあることから、簡略化するのではなく、しっかりと丁寧にかつ慎重に実施するべきである。

3.新規のインフラ整備よりも、既存のインフラの見直しを優先すべきである。
新規のインフラ等の整備や、計画中でいまだ実施されていない事業の推進は、我が国の重要な資産である生物多様性に影響を及ぼすことからも一旦凍結し、まずは既存のすべてのインフラ等の耐震対策と、すでに活断層を横切っている多くの構造物の見直しと廃止を早急に進めることが、我が国が優先的に実施しなければいけない公共事業である。
今後予測されている東海・東南海・南海地震の想定震源域は、東北地方太平洋沖が震源地であった東日本大震災よりもはるかに国土に近い。東日本大震災と同規模の巨大地震が発生した場合、人工構造物への被害ははるかに大きくなることが予測できる。
老朽化したインフラ等に緊急に対策が必要なことは我々も支持することである。しかしそれだけでなく、老朽化していない既存のインフラ等についても早急な見直しと対策が必要である。

以上

 

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