豊かな海と地域の再生に向けて
日本の海では、自然海岸や干潟の減少、藻場の衰退、サンゴの白化、海洋生物の減少など、生物多様性の劣化が進んでいます。さらに、海水温の上昇や海洋熱波の多発など、海洋環境の変化がその影響を深刻化させています。生物多様性の劣化は生態系サービスの低下を通じて沿岸域の産業の衰退を招き、担い手不足や管理体制の弱体化によって、さらに劣化が進む「負のスパイラル」が懸念されています。
NACS-Jは、UMINEKOサステナビリティ研究所とともに、この状況を「社会生態学的危機」と捉え、その転換に向けた「沿岸域の再生」の考え方をまとめました。生物多様性の保全・回復を起点に、生態系サービスの維持・回復、水産業や観光業など地域経済の循環、地域文化の継承へとつなげることを目指します(図)。
その具体的な手法として、海洋保護区・OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)は面積だけでなく「質」を高めることが重要とし、基準として①重要な生態系・生物種の把握、②目標と管理計画、③関係者の参画、④モニタリングと公表、⑤順応的管理の5つを示しました。また、沿岸域の包括的な保全・回復計画づくりを進める「沿岸域再生のモデル地域30カ所」を目標として掲げています。さらに政策提言として、海の生物多様性の保全・回復を国の重要政策に位置付けること、府省庁横断の推進体制の強化、重要海域(EBSA)の更新、質の高い海洋保護区・OECMの全国展開、継続的な活動を支える財源の確保などを提案しました。
海の生物多様性の保全・回復を、沿岸域の経済・社会の再生につなげる。この好循環を各地で生み出すことが、今後の重要な課題です。
有識者委員
担当者からひと言
大野 正人(おおの まさと)日本自然保護協会(NACS-J)保護担当
沿岸域の海の現状から何を読み取り何が課題なのか、それを整理して計画化することで地域の将来像を描ければと思います。


