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活動レポート

樹齢350年の青森ヒバの巨木がすでに伐採されていた
-アセス手続き中の「(仮称)下北西部風力発電事業計画地」を現地調査-

2026年10月2日

フィールド

森林(山も含む)

計画地の林内の様子。左側の巨木はトチノキ

8月上旬、青森県下北半島北西部で計画されている風力発電所の建設予定地を、地元研究者や地域のナチュラリスト等の関係者とともに確認しました。

この事業は、東京の森ビル株式会社と株式会社ケン・コーポレーションが計画している「(仮称)下北西部風力発電事業」です。2028年春に着工し、2031年に運転開始を予定しています。計画では、高さ約170mの風車を10基設置する予定となっています。

計画地には、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)をはじめとする貴重な自然林が広がっています。また、渡り鳥の重要な移動経路上に位置するなど、自然環境および生物多様性の保全上、重要な地域となっています。

青森県では、適正な場所への再生可能エネルギー導入を目的として「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生に関する条例」が2025年10月から施行されています。本事業の計画地は、全域が「現行法令等で価値が認められ原則として再エネ施設の設置を認めない地域」である「保全地域」に指定されています。

こうした状況を踏まえて、当会はこれまでに本事業計画の見直しを求める意見書を提出してきました。
意見書の詳細はこちら

また、計画が自然環境へ与える影響が大きい可能性があることから、計画地を訪れ、森林の状態や開発による影響を確認しました。

計画地は下北半島の突端近くに位置し、むつ市街地から車で1時間以上かかる大畑越周辺になります。計画地全域には成熟した自然林が広がり、スギやヒノキなどの人工林は風車の設置予定地には確認されませんでした。林内には、幹の太さが1mを超えるヒノキアスナロ、ブナ、ミズナラ、カツラ、トチノキなどの巨木が点在していました。

事業者はアセス図書において、重要な森林を避けて計画していると主張しています。しかし、今回の現地調査によって、計画地全域に、長い時間をかけて形成されてきた貴重な自然林が含まれていることが確認されました。

下北半島風発計画地の位置図

図:本事業の計画地位置図

すでに樹齢約350年のヒノキアスナロが伐採されていた

今回の調査でまず驚かされたのは、風況観測調査用のソーラーシステムを建設するため、事業開始前に、テニスコート10面分に相当する森林がすでに皆伐されていたことです。過去の衛星画像との比較から、この伐採はここ2年以内に行われたものとみられます。伐採された木の中には、ヒノキアスナロの立派な巨木も含まれていました。

調査参加者が切り株の年輪を確認したところ、樹齢約350年と推定されるヒノキアスナロも含まれていることが分かりました。江戸時代前期から数百年の時間をかけて成長したヒノキアスナロの巨木が、すでに失われていたのです。成熟したヒノキアスナロ林が全国的にも貴重となっている中で、今回確認された伐採は極めて重大です。

伐採地の様子

写真:ソーラーシステム建設にともなう伐採地

大きな木の切り株と人の写真

写真:樹齢約350年とみられるヒノキアスナロの切り株

大規模な土木工事が必須である状況を確認

事業者はアセス図書において、資材搬入や維持管理には既存の林道や作業道を最大限活用し、道路の拡幅・新設による改変区域を可能な限り低減すると説明しています。

しかし、今回確認した作業道とされる山道のほとんどが、途中で道を見失うほど路肩や道筋が不明瞭で、道幅も狭い状態でした。大型車両の通行はもちろん、歩行もスムーズにできる状態ではありませんでした。

山道の周辺には、ヒノキアスナロやカツラなどの巨木を含む自然林が広がっています。風車の設置や運転開始後の維持管理に必要な道路を整備するには、こうした自然林を広範囲に伐採し、道路の拡幅・新設、切土・盛土、法面の造成などを行う必要があると考えられます。今回の現地調査によって、大規模な土地改変工事が避けられない状況であることが明らかとなりました。

アセス図書によると、工事計画では約3,530tの樹木を伐採し、尾根部などの23万m2の土砂を切り出す計画です。そのうち半分を谷頭部や斜面などに盛り土し、残りをダンプで計画区域外に搬出するとされています。伐採される樹木は成木約1万本に相当し、切土量は25mプール約650杯分、盛り土は約300杯分に相当します。

既存の山道を活用することで自然環境への影響を低減できるとする事業者の説明は、少なくとも今回確認した現地の状況とは大きく異なっていました。

荒れた山道の写真

写真:荒れた山道。車両が通行できる状態には見えない

事業者の生物多様性を軽視の姿勢を問題視

事業者は植生自然度9に分類される「自然植生」の区域を改変区域から除外したと説明しています。しかし、事業者が植生自然度8の「二次林」に区分し、配慮の必要性が低いと判断している森林にも、実際には樹齢数百年を超えるヒノキアスナロ、ブナ、カツラ、トチノキなどの巨木を擁する成熟した自然林が広がっていました。

今回の現地調査によって、計画地には生物多様性保全上重要な自然林が残されており、風車本体だけでなく、作業道や関連施設の整備によっても、広範囲にわたる貴重な自然環境の改変が生じるおそれがあることを改めて確認しました。

事業者の一つである森ビル株式会社は、都市部における生物多様性への取り組みを積極的に発信しています。一方で、自社から遠く離れた地域に残る重要な自然環境を十分に評価しないまま開発を進めるのであれば、その環境方針との整合性が問われます。当会は、このような姿勢がグリーンウォッシュとの批判を受けかねないものだと考えています。

当会は今後も、地域の研究者や関係者と連携しながら、本計画が自然環境に及ぼす影響を検証し、計画の中止、または自然環境への影響を回避するための抜本的な見直しを求めていきます。

巨木の写真

写真:ヒノキアスナロの巨木。この木も、道路の拡幅工事によって伐採される可能性が高い

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