フィールド活動でのクマ対策&対処法
2026年9月1日
全国でクマの出没が増えています。フィールドで活動する機会が多い会員の皆さまが安全に活動を続けられるよう、クマとの遭遇を防ぐための対策や、万が一遭遇してしまった場合の対処法をご紹介します。
イラスト:寺崎 愛
監修 小池 伸介 (こいけ しんすけ)
東京農工大学大学院教授、日本クマネットワーク代表。専門は生態学。ツキノワグマの生態や森林での生きもの同士のつながりを研究対象としている。
クマに出遭わないための基本の対策
まず覚えておいてほしいことは、クマに遭ってしまったらできることはほとんど何もないということです。だからこそ、「クマに遭わないためにどう備えるか」が自分の身を守るための何より有効な方法です。
事前の情報収集
活動する自治体のクマ出没情報を必ず調べる。計画時だけでなく必ず直前の情報もチェック。特に例年と異なる場所や時期に目撃情報がある場合は、予想外の場所でクマと遭う可能性が高い。ただし、目撃情報は人がいないと報告されないので、山の中は「目撃情報がない=クマがいない」ではないということを覚えておこう。
持ち物

❶ 音が鳴るもの(遭うリスクを下げるお守り)
❷ クマ撃退用スプレー(攻撃されるリスクを下げるお守り)
❸ ヘルメット(死なない、重症化するリスクを下げるお守り)
この3点は徹底する。「クマ鈴はもう効果がないのでは」と言われることがあるが、クマに対して人間の存在を伝える上で一定の効果があるので必ず携帯しよう。しかし、雨天時や川沿い、もしくはクマが風上にいる場合などはクマ鈴の音が聞こえないことや、人慣れした個体は人間の存在を察しても移動しないこともありうるので、クマ鈴があればクマに出遭わないというわけではない点に注意。
◤ クマ鈴の選び方 ◢
クマは高音に、より敏感と言われている。真鍮製の鈴は高音で、音が反響しやすい場所では遠くまで響きやすい。鉄製のものは真鍮に比べて低音だが、森に音が吸収されにくい。人混みなど、状況によって鈴の音を出さないようにできる消音機能が付いているものが便利。
明け方や夕暮れの時間帯は避ける
クマが活発に動くのは、明け方や夕暮れ時などの薄暗い時間帯。霧や雨の日はクマに気付かれにくいので避けよう。
クマのフィールドサインをよく確認しよう
フィールドにクマの痕跡がないかまずは確認しよう。クマ棚、爪痕、足跡、クマ剥ぎ、フンといったクマのフィールドサインについては、下記のページで解説している。
もっと知りたいクマ対策
単独行動・通常と異なる行動はしない
単独行動はクマに気付かれにくいのでリスクが高い。また、あまり人が通らない場所に行く、例えば一般的な登山道からそれる行動などは、クマとの遭遇リスクが高くなる。
やぶ際、沢沿い、林縁は警戒する
やぶ際、沢沿い、林縁はクマの死角となりやすく、バッタリ遭遇するリスクが高い場所のためできるだけ避ける。

クマに遭ってしまったときの対処法
野生動物は予測できない行動をするので、これを行えば大丈夫という方法はありません。やってはいけないことをまずは覚えておきましょう(①)。その上で考えうる対処法の一例をご紹介します(②~⑤)。
① やってはいけないこと
⚫急な動きや大声を出すなどしてクマをパニックにさせない。
⚫自分がパニックにならない。遭遇時の状況によって対応が違うため、落ち着いてクマの様子を観察し、取るべき行動を判断する。
⚫クマに背を向けて走り出さない。クマは走るものを追いかける習性がある。
⚫カバンを放り投げない。食べ物が入っていると、味を覚えてしまう。
② クマが遠くにいるなら
クマの様子を見ながら、刺激をしないように静かに後ずさりしてその場を離れる。写真撮影はしない。クマがこちらをあまり気にしていない様子なら、クマとの間の樹木や岩などに隠れながらゆっくり距離をとっていく。
③ 子グマがいたら
子グマがいるということは近くに母グマがいるということ。子グマを見かけたらすぐその場から離れる。
④ クマが近づいてきたら
人間だと気付いていない可能性もあるため、石や倒木の上に立つなどして自分を大きく見せる。この際、クマを興奮させないよう大声は出さない。こちらの存在に気付いていたら、背中を見せずゆっくり後ずさりする。クマの動きに注意する上でも、クマからは目をそらさないようにし、クマ撃退用スプレーを使える状態にする。
⑤ クマが攻撃的な行動をしてきたら
絶対に背中を向けて逃げず、クマ撃退用スプレーを使用して対応する。
◤ クマ撃退用スプレーの選び方と使い方 ◢
◤ 防御姿勢について ◢
クマに襲いかかられたら、うつ伏せで顔と腹部を守り、首の後ろで手を組み首を守る。このとき背中にリュックを背負い、ヘルメットや帽子を被っていれば防御効果は増す。

クマを人に慣れさせないために
野生動物との適切な距離を保つ姿勢も大切です。クマを人に慣れさせるような行動は絶対にやめましょう。
クマに餌を与えない
痩せていたり弱ったりしているクマが出てきても可哀そうと思って餌をあげない。クマが余計に人の空間に出てくるきっかけとなる。
ゴミは持ち帰る
ゴミがクマを人に引き寄せる原因となっている。あたりまえのことだが、どんなゴミも必ず持ち帰る。
スマホで撮影し続けない
特に街なかでスマホを向けて撮影し続ける行為も人慣れを促進する行為と言われている。
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NACS-J市民カレッジ「クマとの向き合い方を考える」
クマとの向き合い方を考える上で大切なのは、まずクマがどういう生きもので、今、クマが暮らす環境で何か起きているかを知ることです。本記事監修者の小池伸介氏にクマの現状、生態、クマとの共存のあり方について会員限定のNACS-J 市民カレッジにてご講演いただきます。
また、小池氏の執筆・監修本でもクマとの向き合い方について詳しく紹介されています。
『クマは都心に現れるのか』(著:小池伸介/扶桑社/2026年)、『さまようクマ、変わる森』(監修:小池伸介/昭文社/2026年)
関連情報
NACS-Jは2025年にクマに対する考えと、野外活動時におけるクマ対策の基本的な考え方を出しています。ぜひご一読ください。
クマに対する現状認識と観察会における対策


