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自然を知るWEBマガジン「知ろう、自然のこと。」

自然と子どもの笑顔を輝かせる

自然のちから推進部 小林 今日子

自然観を育んだ子ども時代

思い返せば、中高生の頃から、悩み事があるときも自然に支えられていたように思います。例えば、これまで打ち込んできた部活を引退しなければいけないとき、入道雲も一定以上は大きくなれなかったり、樹木が一生懸命育ててきた枝葉を落とす、そうした移り変わりを見て、自然の摂理の中に解決策を見出そうとしていました。

大学では地学を専攻していました。深く勉強するうちに、自然の中にある循環を意識するようになりました。地学では、侵食・運搬・堆積のサイクルのなかで土砂は循環し、大きなスケールでは、地殻変動によってプレートが隆起したりマントルの中に沈み込んだりします。そういった循環を意識すると、徐々に、人間だけ、自然の循環に組み入れられていないような異質な存在というように感じる気がして、もっと「人や人間社会について知りたい!」と興味を持つようになっていきました。

人の心に働きかけるノウハウを身につけようと営業職へ

人について知りたい、人間社会はどう成り立っているのか知りたい、と思うと同時に、人の心に働きかけるとはどういうことなのかを知りたい、と強く思いました。そこで、大学院卒業後には営業職に従事しました。大学院まで自然にどっぷり浸かっていたので、人まみれになりたいという気持ちがあったのだと思います。がむしゃらに働くなかで、人や人間社会に触れ、人も生きものも同じで、一生懸命生きているのだということに思い至り、このとき「人と自然にとって良いこととは?そういう仕事がしたい」と思うようになりました。

いつかは自然科学の分野に戻りたいと思っていたことと、自分を育んでくれた自然の価値をより多くの人に伝える仕事がしたいという思いがあり、数年働いたのちに転職活動をしました。そんな時、自然に関するスキルアップのために日本自然保護協会(NACS-J)の自然観察指導員を受講しようとウェブサイトを調べていたところ、ちょうど職員募集があって、これは!と思い応募しました。

人と自然を輝かせる仕事

入職後から現在に至るまで、「自然観察指導員の養成」に携わっています。大まかには「自然観察指導員講習会の開催」「フォローアップ研修会の開催」「自然観察指導員の活動支援」の3つのプロジェクトがあります。

「自然観察指導員講習会」は、NACS-Jで1978年から続けてきた、核となる活動のひとつです。講習会では、主に各回の運営、司会進行実習講師をするとともに、講習会全体の質の維持と向上を担っています。自然観察指導員講習会には、「人と自然をつなぐスペシャリスト」である講習会講師がいます。入職当時は、個性豊かな講師たちのメッセージに感動し、一生懸命聞いてメモをしていたことを思い出します。

また、時代に応じて、どんな自然観察指導員像が求められるか、10年ごとに「自然観察指導員養成計画」を作成しています。2019年から、自然観察指導員養成計画2030をつくるため、自然観察指導員の皆さんと話し合い、子どもに焦点を当てた自然体験の普及に着手し始めました。それが今取り組んでいる「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」につながっていきました。

説明をする小林今日子さん

子どもにとっての自然体験の重要性

幼少期の自然体験の有無がその後の人生に与える影響は科学的に明らかになっています。自分自身も小さい頃から自然に支えられてきて、子どもは自然のなかで健やかに育ってほしいと思っています。しかし、今の日本では、さまざまな理由で余裕のない家庭が増えており、家庭の状況によって子どもの自然体験に差が存在しています。さらには、温暖化など、子どもたちを取り巻く環境悪化も進んでいます。このままでは、今ある自然を将来世代に受け継ぐことができないのではという危機感がありました。

「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」では、全国の自然観察指導員さんと協力して、乳幼児期の子どもを大事な対象として、自然体験を“届ける”活動をしています。「虫がきらい」「土が汚い」といった自然に対する価値観は小学生低学年時には既に形成されていると考えられ、価値観が形成される乳幼児期こそが重要だからです。本プロジェクトでは、子どもたち自身が自然のあり方に気づき、大切に思い「自然とともに生きることができる」人になってもらえるよう、子どもたちに自然体験を届けています。

ぜひ「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」特設サイトもご覧ください。

子どもと小林今日子さんの写真

ワークライフバランスの追求

私の人生の柱は、「人と自然を輝かせること」と「子育て」です。この二つを両立させ、人生の目的を実現するためにも、週に一回は振り返りの時間を作るようにしています。今週、自分は幸せだったか、仕事と子どもとの時間のバランスはどうだったかと自問自答し、モヤモヤが残らないよう、日々バランスを修正するようにしています。例えば、自分が最も幸せを感じるのは子どもを寝かしつける時間なので、その時間はちゃんと確保しようとか、逆に仕事だけに専念する日を設けるといったことを、家族と相談しながら工夫しています。

とはいえ、完璧を追い求めすぎず、できなかったと感じても「ベストは尽くした」と自分で自分を認めてあげることを大事にしています。

やりがいを感じるとき

自分が関わる「すべてのこどもに自然を!プロジェクト」で、自然観察指導員さんから「乳幼児にも、こんなに自然観察会ができるんですね!」「こんな反応がありました!」という感想が届いたり、写真や、実際の現場で、子どもたちがイキイキしている様子が伝わってくると、とてもやりがいを感じています。

たとえ無限の時間やお金があっても、それでもやりたいと思えることに打ち込んでいる瞬間に感じるのが「やりがい」だと思います。何をしているときに自分が一番楽しいと感じるのか、それを考えていくと自ずと「自分にとってのやりがい」は見えてくるのではないでしょうか。

小林今日子さんの写真