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活動レポート

イヌワシの舞う日本の森を未来へ
狩場創出で伐採した木材の活用も進んでいます

2026年9月1日

フィールド

森林(山も含む)

プロジェクト

イヌワシ保全

6月18日、イヌワシが飼育小屋から飛び立つ瞬間の様子

イヌワシの生息数は全国でわずか500羽ほど、200つがいと推定されていますが、繁殖成功率が低く、各地でつがいの消失が続いています。NACS-Jは皆さまのご支援を受け、イヌワシが狩りをできる森林や草地の保全・再生を進めてきました。これまでの成果と、国内のイヌワシの生息状況が一層悪化していることを踏まえ、現在、「生息地の保全・再生」「野生復帰技術の確立」「地域産業との好循環」の3つを柱に展開している取り組みについて紹介します。


生息地の保全・再生

これまで、環境省のイヌワシ保護増殖事業や、生物多様性の保全を重視する国有林の森林管理など、国行政への働きかけを行ってきました。この働きかけを強化するとともに、群馬県みなかみ町、宮城県南三陸町、長野県浅間山周辺での生息環境再生をさらに推進し、全国のイヌワシ生息地を広げることを目指します。

伐採されたカラマツ林の写真

長野県浅間山周辺で、イヌワシの狩場創出のために伐採されたカラマツ人工林

南三陸イヌワシ野生復帰

宮城県南三陸地域では、南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会と協働で、10年以上にわたる生息環境再生の成果を基盤に、日本初となる動物園生まれのイヌワシの野生復帰に挑戦しています。2026年6月18日に放鳥した個体は、直後から想定以上の距離を移動し、当初予定していた給餌をほとんど利用することなく、約3週間後には自力で子鹿を見つけて食べていることが確認されました。7月中旬以降は一定の場所に定着しており、土地管理者の協力を得ながら、当面の間は必要に応じて給餌を行い、野生で生き抜く力を身に付けられるよう見守っていきます。

10月31日には「イヌワシ野生復帰フォーラム」を開催し、取り組みの進捗と、多様な主体が協働して生息環境を再生する意義を発信します。

南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム
「イヌワシが舞う南三陸を未来へ
─野生復帰と地域のネイチャーポジティブ」

日 時
2026年10月31日(土)15時~17時30分
場 所
スポーツ宿泊施設南三陸町平成の森(宮城県南三陸町)
参加費
無料

詳細は、INUWASHI AGAIN(南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト)のウェブサイトにて告知しますので、そちらをご覧ください。

牧草地のシカとイヌワシの写真

放鳥したイヌワシが野生のシカがいる牧草地を飛ぶ様子(7月。写真:井上剛彦)。「INUWASHI AGAIN/南三陸イヌワシ野生復帰プロジェクト」のウェブサイトにて動画公開中(https://inuwashi-again.com/news/houtyuou2026)

地域産業との好循環

イヌワシが狩りをするには開けた環境が必要です。イヌワシの狩場を創出するために伐採した木材を地域産業につなげる取り組みも進んでいます。南三陸では、仙台市内に建設するマンションに利用されます。みなかみ町では「イヌワシ木材」としてブランド化しています。広葉樹材は町内小学校の机の天板に、アカマツ材はロープウェイの内装などに活用され、小径木や端材は積み木や薪として販売されるなど、町内での活用が進んでいます。また、群馬県内事業者によってウクレレ、経木などに利用され、高崎市内のマンションへの利用予定もあります。

イヌワシを守ることが地域で新たな価値を生み、さらに保全を進める力となる好循環を育てていきます。ご支援よろしくお願いします。


みなかみ町産の「イヌワシ木材」

群馬県みなかみ町で、林野庁関東森林管理局、赤谷プロジェクト地域協議会と20年以上にわたって取り組んでいる赤谷プロジェクトでは、イヌワシの繁殖成功率の回復と、人工林の自然林復元を目的として、人工林の伐採を進めています。しかし、イヌワシが生息する奥山の人工林は伐採作業の往復にコストがかかるうえに、これまで管理がされていないため質の良い木材ではありません。そこで、イヌワシの保全につながるネイチャーポジティブに貢献する木材として「イヌワシ木材」と名付けて、地域事業者の方々と、「みなかみネイチャーポジティブプロジェクト(三菱地所株式会社・みなかみ町・NACS-Jの3者連携事業)」と協力しながら活用を進めています。「イヌワシ木材」を利用したい方は、ぜひお問い合わせください。
https://inuwashistore.jp/inuwashi-mokuzai/

「イヌワシ木材」のブランドロゴ

みなかみ町の「イヌワシ木材」のブランドロゴ


イヌワシ木材の写真

「イヌワシ木材」はトレーサビリティを担保している

みなかみ町での活用事例

みなかみ町内小中学校での活用

みなかみ町では小学校の入学時に町内産広葉樹(コナラ、クリなど)を天板とした机が全員に用意され、卒業時には、自宅で活用できる脚とともに天板がプレゼントされます。このクリ材の一部に「イヌワシ木材」が活用されています。
https://www.oakv.co.jp/note/column/16542.html

みなかみ町内の全小中学校(6小学校・1中学校)は、文部科学省を通じてユネスコが認定するユネスコスクール(UNESCO Associated Schools Network)に登録され、町全体として持続可能な地域社会を担う子どもたちを育てる教育を進めています。各学校には「イヌワシ木材」を利用したプレートが掲示されています。

木の机と椅子の写真

みなかみ町の小学校で利用が始まった町産材の椅子と机

木のプレートの写真

ユネスコスクールのプレート

みなかみ町内などの民間の活用

谷川岳ヨッホby星野リゾートでは、特別ゴンドラの内装材、券売機のテーブルなどでイヌワシ木材が利用されています。この他、温泉宿、施設、個人宅でも多数利用していただいています。

ゴンドラの内装写真

ゴンドラの内装(谷川岳ヨッホ by 星野リゾート)
https://tanigawadake-joch.com/

木のテーブルの写真

谷川岳インフォメーションセンター 
https://tanigawa-ic.com/

木製のカウンターの写真

さなざわ㞢テラス 
https://sanazawa.jp/

木製のテーブルの写真

アイチコーポレーション

木製のテーブルとベンチの写真

川古温泉 
https://kawafuru.com/

イヌワシストア内部の写真

イヌワシストア 
https://inuwashistore.jp/

積み木で遊ぶ幼児の写真

積み木「森のカケラ」(株式会社plower)
https://plower.jp/magazine/539/

ボルダリングジムのカウンター

ボルダリングジムのカウンター(And Energy Bouldering)
https://www.andenergy-bouldering.com

群馬県内での活用

桐生市にある佐藤経木工場は、県内のアカマツが松枯れ被害を受けて入手が難しい状況にあるため、イヌワシ木材のアカマツを喜んで使っていただきました。アカマツを薄く削り、紙のようにした「経木(きょうぎ)」は、吸湿性や天然の抗菌性があり、様々な用途に使われます。

前橋市の三つ葉楽器株式会社は、国内で唯一のウクレレの量産メーカーで、県産材を利用したウクレレ商品を販売しています。

前橋市のHT CRAFTは、建具職人である堀田さんがハンドメイドでスノーボードを製作しています。自然と共存するスノーボード製作の一環として「イヌワシ木材」を活用していただきました。

経木の写真

経木(佐藤経木工場)

ウクレレの写真

ウクレレ(三つ葉楽器) 
https://mitsubagakki.jp/

木製のスノーボードの写真

スノーボード(HTcraft) https://htc-mfg.com/

東京建物株式会社では、高崎市の分譲マンション「Brillia高崎宮元町ALPHA RESIDENCIA」のグランドラウンジをはじめとした共用部や、モデルルーム内に設置しているダイニングテーブルで「イヌワシ木材」を利用していただきます。
https://takasaki.brillia.com/design/

※以下掲載の完成予想CGは計画段階の図面を基に描き起こしたもので、形状・色などは実際と見え方が異なったり、変更する場合があります。

マンションエントランスの写真

グランドラウンジ完成予想CG:内装材に使用予定

ゲストルームの写真

ゲストルーム完成予想CG:内装材と壁の端材アートに使用予定

イヌワシ木を使用したテーブルの画像

(左)パーティールーム完成予想CG:内装材とテーブルに使用予定
(右)モデルルームに設置しているダイニングテーブルに使用

日本各地での活用

三菱地所レジデンス株式会社では、三菱地所株式会社がみなかみ町において「みなかみネイチャーポジティブプロジェクト」を通じてイヌワシの生息環境保全に取り組んでいることをきっかけに、イヌワシの狩場創出のために伐採されたスギの枝葉を原材料としたオリジナルアロマを町内の「工房澄み処(すみか)」と制作しました。制作したアロマは、全国販売中のザ・パークハウスマンションギャラリーおよび本社・支店などで利用されています。
https://www.mecsumai.com/kinomori/inuwashi/

アロマオイルのボトルの写真

町内事業者と共同検討したオリジナルアロマ

アロマオイルが置かれたテーブルの写真

三菱地所レジデンス(株)本社総合受付ロビーでの利用の様子


イヌワシの生息環境再生にもつながる南三陸の木材活用

イヌワシ野生復帰に取り組む宮城県南三陸町では、10年以上にわたり持続可能な木材生産と、イヌワシの生息環境再生を進めてきました。今回、三菱地所レジデンスは仙台市内のマンション「ザ・パークハウス グラン 仙台広瀬町」において、共用部廊下のルーバーおよびラウンジの床に南三陸町の森林認証材が使用される予定です。南三陸の木材を活用することは、イヌワシの森を再生する取り組みにもつながっています。
https://www.mecsumai.com/tphg-sendaihirosemachi/special/product/index01.html

南三陸町地域で生産されるイヌワシ保全につながる木材を利用されたい方は、地元の山主として、南三陸イヌワシ野生復帰に一緒に取り組んでいる株式会社佐久にぜひお問い合わせください。
https://m-sakyu.jp/

マンションエントランスの写真

マンション共用部のルーバーおよびラウンジ床に使用予定
*完成予想CGは、計画段階の図面を基に描き起こしたもので実際とは異なります


担当者からひと言

出島さんの顔写真

出島 誠一 (でじま せいいち)日本自然保護協会(NACS-J)ネイチャーポジティブ担当 

イヌワシを守るために伐採した木が、建物や楽器、積み木に生まれ変わり、多くの人の手元に届き始めています。自然保護活動で生まれる利益や応援が、再び地域の自然保護につながる。そんな好循環を日本各地に広げます。

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