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活動レポート

綾の照葉樹林プロジェクトの開始から20年
照葉樹林の保護と復元、持続的な地域づくりの軌跡

2026年5月1日

報告会では、九州森林管理局や綾町からこれまでの取り組みが報告され、NACS-J理事長の土屋が「ネイチャーポジティブにかかる国内外の動向と綾プロ」と題して基調講演を行った

2025年5月に、宮崎県綾町での「綾の照葉樹林プロジェクト(以下、綾プロ)」が20周年を迎えました。これを記念して2026年1月24日に「綾プロの20年が支える綾の町づくり」と題した報告会を綾町にて開催しました(主催:綾プロ連携会議)。当日は、町内外から約250名の参加がありました。


綾プロは、国有林・県有林・町有林からなる約1万haのエリアにおける照葉樹林の保護と復元、持続的な地域づくりを目的として、2005年に林野庁九州森林管理局、宮崎県、綾町、一般社団法人てるはの森の会、NACS-Jの5者が協定を結んで始まりました。対象地域を「保護林」「照葉樹林への復元」「持続的な林業経営」「環境教育」の4エリアに区分し、取り扱いを決めて活動を進めています(図❷)。報告会では、20年にわたり多様な主体とともに取り組んできた自然復元と地域づくりの成果が発表されました。

照葉樹林と橋の写真

❶記念報告会2日目は、快晴の中「照葉樹林ウォーク」が開催され、参加者24名が復元の見本林を歩いた

対象エリアの地図

❷綾プロの対象地域のエリア区分

照葉樹林復元の試行錯誤

綾プロの照葉樹林復元では、間伐によって林内の光環境を改善し、その場に生えていた木の成長や周辺の母樹からの種子散布による再生を促す方法を採用しています。現在は約1000ha程度に手を入れました。ただし、復元開始時からニホンジカの影響が大きく、20年経過しても林床がマンリョウやコショウノキなどシカが好まない植物だけになっている場所もあります。そのため、防鹿柵の設置、実生苗の育苗植栽も試験的に実施しています。

NACS-Jは、2006年から年1・2回、活動の幅広い周知や間伐後の復元状況の科学的な把握を目的に、市民参加による間伐前の事前調査と間伐後のモニタリング調査をてるはの森の会とともに実施してきました(図❸❹)。2015年から11年間で延べ149名に参加いただきました。

企業との新たな協働の形も模索しています。企業の社員が参加する間伐の実施や、綾プロエリア(核心地域と緩衝地域)に綾町のエリア(移行地域)を加えた綾ユネスコエコパークの取り組みにより「東洋紡綾の森」と「綾町イオンの森と隣接する割付地区の日向夏畑」が環境省の自然共生サイトに認定されています。報告会では、企業との協働による、これらの森づくりについても報告されました。

森づくりも地域づくりも非常に時間がかかること、日々の努力の中で取り組み続け、議論し、未来を考えていく姿勢が大切であることを、改めて関係者や町民と共有しました。

調査メンバーの集合写真

❸モニタリング調査メンバー(2025年2月)

間伐地の樹木モニタリング調査結果

❹間伐地の樹木モニタリング調査結果(2025年2月)。調査区6と調査区1では若木が育っているが、下層はシカの不嗜好性植物種が目立つ。人工林の間伐地においては、防鹿柵外(調査区4)と比べ、防鹿柵内(調査区2・3)では照葉樹の若木が順調に育っている

今後100年間の照葉樹林の復元イメージ

❺今後100年間の照葉樹林の復元イメージ。人工林や二次林を照葉樹林に復元していく

担当者からひと言

朱宮さん顔写真

朱宮 丈晴 (しゅみや たけはる)日本自然保護協会(NACS-J)ネイチャーポジティブ担当

日本の半分を占める照葉樹林の復元の難しさを痛感しています。ニホンジカによる摂食などにより森林再生が進まない状況を改善する方法を模索したいです。

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