日本のアカガエル類に温暖化の影響
19年にわたる全国規模の市民調査から明らかに
2026年11月1日
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プロジェクト
ヤマアカガエルの産卵の様子
1月~3月の寒さが緩む時期に浅い水辺で一斉に産卵する。アカガエル類の雌は年に1個だけ卵塊を産むため、卵塊数を全て数えることで地域全体の個体数を正確に把握でき、貴重な環境指標となる(写真:佐藤良平)
全国の市民調査員の皆さまが19年間で数えたアカガエル類の卵塊数は、合計約26万2000個にも及びます。この膨大なデータから、アカガエル類の産卵時期が温暖化に伴って全国的に早まっていることが明らかになりました。市民による広域・長期モニタリングの重要性を示す研究成果※をご紹介します。
気候変動が生きものの季節的な行動に与える影響が世界で多数報告される一方で、日本の両生類では、全国規模での研究例がほとんどありませんでした。
国立環境研究所とNACS-Jの研究チームは、「モニタリングサイト1000里地調査(環境省事業)」にて、全国88カ所・延べ1176人の市民調査員が19年間(2004~2023年)かけて記録したデータを解析しました。その結果、日本のアカガエル類3種の産卵時期が全国的に早まっていることを明らかにしました。市民調査員の皆さまが長年、定期的に水辺に通い、卵塊数を記録し続けたことで、広域かつ長期間の科学的検証が可能となりました。

アカガエル類の成体(写真:前田憲男)と卵塊
1月の気温が高い年ほど産卵が早い
解析の結果、本州・四国・九州に分布するニホンアカガエルとヤマアカガエルでは、気温が上昇していた2012年~2020年に限ってみると(図1)、産卵日が年間1~2日程度のペースで早まっていました(図2上・中)。また、1月の気温が高い年ほど産卵が早くなり、2月の積雪が多い年ほど遅くなる傾向がありました(図3)。
北海道に生息するエゾアカガエルにおいては、2009~2021年で、産卵日が年間平均1日程度早まっていました(図2下)。
興味深いことに、卵塊数(=雌の個体数)が多い場所ほど産卵時期が早まる傾向も見られました。個体数が多いと多様な環境で越冬する個体が増え、春の暖かさにいち早く反応する個体が現れやすくなることが可能性の1つとして考えられます。

図1:1月から3月までの平均気温の経年変化
実線と網掛け部分は、日本の9地域における平均気温と標準誤差を、点線は北海道の平均気温を表す

図2:アカガエル3種の初産卵日の経年変化
細線は各調査サイトの産卵日、黒線は回帰線(統計的に求めた全体の傾向)。右に行くほど下がっている場合は、初産卵日が早まっていることを示す

図3:アカガエル2種の気候要因と初産卵日の関係
2004 〜 2023 年の調査。黒い線は回帰直線(統計的に求めた全体の傾向)。●は2月に積雪深が10cm 未満の年の産卵日、▲は2月に積雪深が10cm 以上の年の産卵日。
市民調査の重要性
産卵時期の変化は、オタマジャクシの成長、天敵との関係にも影響し、生態系全体の季節的なバランスを変える可能性があります。
本研究は、市民の皆さまによる継続的なデータが気候変動の影響を把握する強力な科学的根拠になることを実証しました。地球温暖化や生物多様性の劣化が深刻化する中、生物多様性保全に貢献しうる適応策を進めるためにも、市民調査をさらに拡大・促進していく必要があります。

市民調査の様子
担当者からひと言
藤田 卓(ふじた たく)日本自然保護協会(NACS-J)モニ1000里地調査担当
19年間調査を続けてくださった市民調査員の皆さまに心より感謝申し上げます。季節変化と同時に個体数を調べたからこそ得られた貴重な成果です。今後も現場の保全に貢献する研究成果を発信し里山のネイチャーポジティブにつなげていきます。
Matsushima, N., Fujita, T., & Yasumiba, K. (2026).Trends Toward Earlier Breeding Related to Temperature in Early Spring-Breeding Brown Frogs Revealed by Community Science Monitoring in Japan. Ecological Research, 41(3), e70080. https://doi.org/10.1111/1440-1703.70080


