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活動レポート

ビジネスと自然再興の賑わい―国際会議の現場から―
(インターン生によるGNPS参加レポート)

2026年8月31日

2026年8月に開催された国際会議「グローバルネイチャーポジティブサミット」では、参加者の6割が企業の方という、ビジネスセクターにおけるネイチャーポジティブへの注目の高さが伺えました。学生として本サミットに参加した私は、自然を守ることは事業リスクを回避してビジネスの基盤を守ることであり、また、NbS(自然に基づく解決策)を通じてビジネスの成長と自然の回復を両立させる新たな機会の創出にも繋がるという認識が、企業に広がっていると感じました。自然保護を「未来への投資」と捉え、事業の基盤に組み込みネイチャーポジティブを実践することの重要性を実感した2日間をレポートします。

1. はじめに

こんにちは。日本自然保護協会でインターンしている吉田です。今年7月、参加者の3分の2がビジネスセクターで構成された国際会議が熊本で開催されました。「グローバル・ネイチャーポジティブ・サミット2026(GNPS2026)」です。なぜこんなにもビジネスセクターはネイチャーポジティブに関心があるのか。今日は「ビジネスとネイチャーポジティブ」というテーマで、本サミットで学んだことをお話しします。

GNPSに参加したインターン生の写真

2. サミットの概要とねらい

本サミットは、日本自然保護協会(NACS-J)が事務局を務める国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)と、国際的なネットワーキング組織であるネイチャーポジティブイニシアチブ(NPI)が主催となり開催されました。本サミットの目的は、「2030年までに自然の損失を止めて回復を目指す国際目標(GBF)の達成に向けた取り組みを加速させること」でした。この目的をもとに、ネイチャーポジティブに関するテーマについて、国や企業を超えて様々なディスカッションが行われた他、日経BP主催の「NATURE TECH!」も同時開催されました。これらを通じて、自然再興の国際的な潮流から、企業が自然資本を保全すること・情報開示に取り組む意義を確かめました。その中で、自然再興の取り組みが新たな「ビジネスチャンスに繋がる」ことも共有されました。

3. なぜ今、企業がネイチャーポジティブに注目するのか?

本サミットの参加者は約6割が企業の方で、ビジネスセクター内でネイチャーポジティブの注目が高まっていることを強く実感しました。背景にあるのは「危機感」と「ビジネスチャンス」がキーワードです。地球規模で自然環境の劣化が進む今、生物多様性の損失は事業や衛材活動を脅かすリスクとなっています。このまま生物多様性(自然)が衰退すると「『経済活動』や『事業』が立ち行かなくなるかもしれない」という危機感と、「自然再興を通じた新たなビジネスチャンスの創出」がビジネスセクターによるサミットの参画を増やしたと考えました。これについて、サミットでの経験をもとに詳しく説明します。

4. リスク回避:事業の存続を守る自然保護

企業が事業を継続させていくためには、多くの事業の基盤である自然資本の劣化を止める必要があります。旧来、ビジネスセクターにとって自然保護はコストがかかる足枷となっていました。しかし、今では「自然を率先して守らなければビジネスは継続できない」という認識が浸透し始めています。実際に、サミットに登壇されていた多くの方々やNATURE TECH!で登壇されていた方々も同じ危機感を持って、自然保護事業に取り組まれていました。

特に印象に残った事例と、そこからの学びを3つまとめました。

  • キリンホールディングス
    CSV戦略部・美鳥 佳介氏より、「環境保護だけでなく、ビジネスを守るための自然保護活動を行う」という考え方が示された。
  • サントリーホールディングス
    自社商品を継続して製造・提供するため、水資源の保全を「事業活動の必須条件」と位置づけて展開している。
  • ソニーグループ(熊本半導体工場)
    水を大量に使用する半導体製造において、水源の枯渇は経営リスクに直結する。そのため、農地への冬季灌水活動などをビジネス持続のための事業戦略として実践している。

これらの取り組みの発表を見聞きして「環境保全は単なる社会貢献ではなく、ビジネスや事業の存続を守るために重要な経営戦略の要素である」ことを強く実感しました。

ネイチャーテックの様子

5. ビジネスチャンスの創出:自然を回復させるビジネスモデル

ビジネスセクターによる自然保護活動は、新たなビジネスチャンスの獲得にも繋がっています。例えば、NbS(Nature-based Solutions)の取り組み。NbSとは、自然資本を活用して社会課題の解決を図るアプローチのことです。NbSを事業の基盤や手法に組み込むことで、ビジネスの成長とともに自然の回復と社会課題の解決を両立することができます。その例として、株式会社ParamitaとLocalCoop尾鷲の「Local Coop」(三重県尾鷲市)が発表していた取り組みを紹介します。

【課題(背景)】

人口減少に伴う一次産業(林業や漁業)の衰退により、これまで人の手で維持されていた自然環境が劣化。これらによって自然災害のリスク上昇や行政サービスの限界といった地域課題が発生。

【ソリューション(解決策)】

企業のネイチャーポジティブ関連事業の新規開発やESG投資獲得に向けた企業価値の向上を望むような複数企業から資金を獲得。地域住民や企業と連携し、生態系回復を目指す森づくりを企業と自治体とで共同で推進。

【成果】

尾鷲市の私有林から年間約6500t-CO2のカーボンクレジットを創出。人工林での生物多様性の回復や藻場の面積増加を確認。

この事例のように、課題解決と自然保護を掛け合わせることで、ビジネスの成長が自然環境を豊かにする循環を生み出すことができます。NbSは、事業の持続性と自然保護を同時に果たすことのできる重要な手法だと実感しました。

企業ポスターの写真

6. おわりに:ビジネスを通してネイチャーポジティブを実装する

大学で環境平和学を学ぶ私は、「生活の基盤である自然環境を守りたい」という思いから日本自然保護協会の理念に共感し、インターンに応募しました。

GNPS2026で目にしたのは、自然資本の劣化というリスクに対して、自然保護を「持続可能なビジネスのための未来への投資」と捉えて前向きに取り組む企業の皆さんの姿です。「ビジネスと自然保護の両立」に難しさを感じている方にこそ、既に両立に向けた大きな潮流が生まれていることを知っていただきたいです。さらに今後は自然保護を一部の取り組みに留めず、事業の「基盤」に据えていく努力も重要だと考えます。今回のサミットで感じたネイチャーポジティブの賑わいが、この記事をお読みいただいた皆さんの自然再興への一歩を後押しするものとなれば幸いです。

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