開く閉じる

活動レポート

ユネスコエコパークの国際会議が開催されました。
「第5回生物圏保存地域世界大会」レポート

2025年11月5日

閉会式であいさつするAntónio Abreu氏(生態地球科学局局長、ユネスコMABプログラム事務局長)

9月22日~26日、中国・杭州で第5回生物圏保存地域世界大会(以下、世界大会)が開催されました。136カ国、約1300名(地元新聞より)が参加しました。NACS-Jも日本MAB計画支援委員会の事務局としてブース展示をしたほか、サイドイベントに登壇・参加しました。

※MAB計画(人間と生物圏計画)=自然と人間の相互関係を研究し、生物多様性の保護と天然資源の持続可能な利用を目指す国際協力プログラム。BR登録はプログラムの一つ

この世界大会は10年ごとに開催され、今回のテーマは「人と自然の持続的な未来の創造」でした。地球規模での生物多様性保全や持続可能な発展に向けた国際協力の強化を目的としています。今大会の重要な成果は、これからのユネスコエコパーク(以下、BR)の理念を示す「杭州宣言」が採択され、その実現のための具体的な方法を示す「杭州戦略行動計画」(2026–2035)が発表されたことです。

具体的な数値を伴う行動目標

杭州戦略行動計画は34の行動目標からなります。10年前に策定された戦略を引継ぎつつ、昆明モントリオール生物多様性枠組(30‌by‌30、OECMなど)への貢献や連携が明記されました(行動目標3・6)。また、例えば復元プロジェクトを推進する(行動目標5)ために、「2035年までに、すべてのBRは劣化した地域を特定し優先順位付けを行い、少なくとも1つの復元プロジェクトを開始または推進している」など、具体的な数値目標が記載されたのが特徴です。行動計画では、生物多様性の劣化を回復傾向にすることや気候変動など喫緊の課題に対応するため国を超えた協調や社会の分断を超えていく必要があるとされており、国内のBRにおいても、地理的、社会的、精神的な障壁を乗り越えて対話し取り組みを進めなければなりません。

NACS-Jは、日本MAB計画支援委員会の事務局を担っており、この委員会と日本ユネスコエコパークネットワークで出展したブースで、日本の各BRを映像やパンフレットで紹介するとともに、みなかみネイチャーポジティブプロジェクトの紹介を行いました。特に、イヌワシの保全活動のために伐採された木材から作られた経木と企業と協働した活動が関心を集めました。

BRの登録承認を行う国際調整理事会(ICC)は、別会場の天目未来谷(天目山BR)で開催されました。新しく26件が登録され、世界のBRは142カ国、785件となりました。日本に関しては、南アルプスBRと只見BRの定期報告の審議が行われ、「BRとしての基準を満たす」として承認されました。志賀高原BRの拡張申請に関する審議も行われ、申請が承認されました。

国際会議の様子

❶日本MAB国内委員会主催のサイドイベントの登壇者。テーマは「気候変動対策とネイチャーポジティブへのMAB計画の主流化:日本の貢献」(写真:飯田義彦)/❷日本のBRやユース活動を紹介した展示ブース/❸日本ブースではイヌワシ木材から作られた経木(薄い木の板で包装材などとして使用)が注目された/❹エクスカーションで訪問した天目山BR/❺天目山BRで栽培されたお茶の実演展示

杭州戦略行動計画(34の行動目標のうちの最初の10を抜粋)

  1. BRを人間と自然の関係のモデルとして推進する
  2. 持続可能な開発のための2030アジェンダを支援する
  3. BRの貢献を昆明・モントリオール世界生物多様性枠組に統合する
  4. 自然の生息地を保護する
  5. 復元プロジェクトを推進する
  6. BRが昆明・モントリオール生物多様性枠組の目標3に貢献することを確保する
  7. 外来種対策の行動を管理する
  8. 汚染を減らす
  9. 生産性の高い土地と海域をより持続可能な形で活用する
  10. 気候にプラスの影響を与える行動計画を実施する

▶杭州戦略行動計画の全体はこちらから(外国語のみ)

担当者からひと言

朱宮さんの顔写真

朱宮丈晴ネイチャーポジティブ担当

何としても参加したかった10年の1度のBR世界大会でした。サイドイベントやブース展示の準備では苦労も多かったですが、BRの最新の動向を知る良い機会となりました。

このプロジェクトの詳細を見る