「(仮称)JRE鏡野風力発電事業」の計画中止報道についてのコメント
2025年9月1日
プロジェクト

日本自然保護協会(以下、NACS-J)が事業の中止を求めて、2022年1月に環境アセス配慮書に、同年5月に環境アセス方法書に意見書を提出した「(仮称)JRE鏡野風力発電事業」(岡山県真庭市・鏡野町)の計画が事業中止になったとの報道がありました。※1
この計画は、ENEOSホールディングス株式会社のグループ会社であるENEOSリニューアブル・エナジー株式会社が計画していたものです。岡山県内でも有数の自然度が高いエリアで計画されていた風力発電事業で、最大で高さ180mの風車を、25基設置する計画でした。
NACS-Jは、種の保存法の政令指定種で絶滅の危機に瀕しているイヌワシとクマタカの個体群に影響を及ぼす懸念があることや、オオサンショウウオやナガレタゴガエルをはじめとした希少な生物が生息する岡山県内有数の渓流生態系が失われる懸念、ブナ林やミズナラ林など自然度の高い植生が喪失することなどへの懸念を示して中止を求めていました。※2, ※3
同地域は岡山県内の自然科学の研究者が継続して研究を進めており、その調査結果でも重要な自然環境の場所であることが科学的に示されています。※5
一方で、今回、本事業取り止めが報道されたものの、事業者であるENEOSリニューアブル・エナジー株式会社からは未だ正式な発表はありません(2025年8月29日時点)。
ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社は、イヌワシの営巣への影響などで反対があり、2018年に事実上の事業中止と報道された「(仮称)米原風力発電事業」も未だに廃止届を出さずにそのままになっています。更には、岩手県と青森県の県境の「(仮称)ノソウケ峠風力発電事業」は今年環境アセス方法書を提出しましたが、2015年に環境アセス配慮書を出したのち、10年間手続きを停止してきたものをエリアを拡大して手続きを進めたものです。※4
ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社は、いわゆる塩漬けを行う傾向があることからも、「(仮称)JRE鏡野風力発電事業」について、アセスの手続き廃止届を早急に提出することを望みます。
気候変動対策と生物多様性保全は両輪です。生物多様性の損失は世界規模で急速に進んでいるなか、気候変動対策によって深刻な生物多様性の毀損があってはいけません。2030年までに、ネイチャーポジティブ、すなわち「生物多様性の損失を止め、反転させる」ための行動をとることが、生物多様性条約やそれに基づく生物多様性国家戦略で重要な使命となっています。
ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社の親会社であるENEOSホールディングス株式会社は日本を代表する上場企業です。責任ある企業としての行動を強く望みます。
ご参考
※1 岡山・鏡野町の大規模風力発電計画 東京の企業が撤退決める「採算が取れないと判断」 | KSBニュース | KSB瀬戸内海放送 ※2 (仮称)JRE鏡野風力発電事業における計画段階環境配慮書に関する意見書を提出(2022年1月/NACS-J) ※3 「(仮称)JRE鏡野風力発電事業」計画の環境影響方法書に関して意見書を提出(2022年5月/NACS-J) ※4 約10年越しの塩漬け計画が復活 抜本的見直しを求め意見書を提出(2025年5月/NACS-J) ※5 岡山県鏡野町白賀渓谷における生物多様性に関する緊急総合調査 ―東中国山地自然史研究会―※NACS-Jが意見書を提出した当時の事業者名はジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社。