マイクロソフトの支援を受けて大阪能勢町でネイチャーポジティブに向けた新たな活動を始動
〜大阪みどりのトラスト協会や地域の皆さまと協働〜
2025年12月19日
夏の地黄湿地
- 日本自然保護協会は米マイクロソフト社と復元生態学会が共同で実施する「Standards-based Restoration in Action」に採択。
- この支援を活用して、大阪府の生物多様性ホットスポットである能勢町を舞台にネイチャーポジティブに向けた新たな活動を開始。
- 大阪みどりのトラスト協会や能勢妙見山ブナ守の会など地元の皆さまとも協働。自然に根ざした解決策(Nature-based Solutions。以下、NbS)の検討と実践も行っていく。
公益財団法人日本自然保護協会(理事長:土屋 俊幸、以下NACS-J)は、米マイクロソフト社と復元生態学会(the Society for Ecological Restoration)※1が共同で実施する「Standards-based Restoration in Action」に採択されました。NACS-Jは、この支援を活用して、大阪府能勢町を舞台に、市町村全体の生物多様性の保全と再生を目指した日本版ネイチャーポジティブアプローチ※2(以下、日本版NPA)の取り組みを開始します。
大阪府の北部に位置する能勢町は、全国的にも重要な里山生態系が残されている生物多様性のホットスポットです。環境省が指定する重要里地里山も複数箇所擁しており、生物多様性の保全や再生に取り組む上でも重要なエリアです。
活動を予定している三草山ゼフィルスの森及びその周辺は、二次林や棚田、農地などのモザイク状の土地利用が現在も維持されており、特にチョウ類の多様性が高い場所として知られています。同じく活動予定地である地黄湿地は、府内で最も重要な湿地生態系の一つであり、サギソウやトキソウ、アカハライモリやモリアオガエルなど、府内でも生息地が限られた湿地特有の希少な生きものが見られます。同じく、妙見山は、府内北部で唯一のブナ林があり、天然記念物に指定されていることで知られています。一方、近年、ニホンジカの増加による食害や植生の遷移の進行の影響を強く受けるなどして生物多様性の劣化も進行しています。
NACS-Jは、長年にわたって能勢町で生物多様性の保全や再生活動に取り組んでいる公益財団法人大阪みどりのトラスト協会や能勢妙見山ブナ守の会など地元の皆さまと協働して、下記に掲げる生物多様性の保全と再生に取り組みます。
主な取り組み
- 三草山ゼフィルスの森及びその周辺、地黄湿地、妙見山の生物多様性を保全・再生する活動
三草山ゼフィルスの森及びその周辺、地黄湿地、妙見山をフィールドに、植生回復に向けた樹木の伐採、外来種の除去、防鹿柵の設置によるシカの食害対策、活動前後のモニタリング調査などを実施します。この3ヵ所以外にも能勢町内で生物多様性保全上重要な場所を特定して、ネイチャーポジティブにつながる施策を検討、生物多様性の保全と再生に取り組みます。 - 自然とのふれあいの場と守り手を増やす活動
自然とのふれあいや自然の守り手を増やすことを目指して、本取り組みへの自治体や企業、市民の皆様の参加を積極的に促していきます。また、地元の学校など教育機関との連携も進め、特色のある教育の推進や関係人口の増加などにもつなげていきます。 - NbS(Nature-based Solutions)の検討と実践
生物多様性を活かした防災や減災、水源涵養、獣害対策、持続的な地域づくりなど、NbS※3にもつながる取り組みを検討、実践していきます。生物多様性豊かな里地里山で育まれた一次産品の高付加価値化などの検討を進めていきます。
各コメント
マイクロソフト社 グローバルデータセンター コミュニティ担当シニアディレクター
ギャビー・デラガルザ
マイクロソフトは、復元生態学会とNACS-Jと連携し、大阪府能勢町において、復元生態学会が定める生態系回復の基準に沿った活動に取り組めることを誇りに思います。復元生態学会とNACS-Jとの連携によって、当社は生態系回復プロジェクトを世界的に拡大し、持続可能な未来を目指す非営利団体のネットワークを成長させることができます。
復元生態学会(the Society for Ecological Restoration)事務局長
ベサニー・ウォルダー
この協働の最も素晴らしい点は、NACS-Jや地域住民、そしてマイクロソフトの従業員までもが、自ら外に出て、自ら手を動かして、身近な自然を再生する活動を支援していることです。適切に設計・実施された生態系回復は、地域や地球規模の課題に立ち向かう、希望と行動を生み出す、現実的な解決策です。復元生態学会が定める生態系回復の基準に基づく取り組みの推進は、マイクロソフトが持続可能な未来の実現に真摯に取り組んでいる証です。
日本自然保護協会 理事長
土屋 俊幸
日本自然保護協会は、2023年5月、ネイチャーポジティブをランドスケープアプローチで推進していくことを宣言して以来、この課題に真摯に取り組んで来ました。この度、大阪府能勢町を舞台に、マイクロソフト社、復元生態学会、大阪みどりのトラスト協会、地域のみなさま方と連携して、生物多様性の再生やNbSの実践に取り組むことになったことを、大変嬉しく思います。今回の取り組みは、私たちにとって、関西圏では初めてのチャレンジです。まずは3年間、心して取り組んで参りますので、よろしくお願いいたします。
以上
※1:復元生態学会(Society for Ecological Restoration)
復元生態学会は、アメリカを拠点とした、130か国以上から5,000名の多様な分野の研究者などからなるグローバルネットワークで、35年にわたり生態系回復の研究、実践、そして政策推進に関わってきました。2022年より米マイクロソフト社と連携を開始、「Microsoft Corporation’s Community Environmental Sustainability Program」は復元生態学会の「基準に沿った生態系回復(Standards-based Ecological Restoration)」を支援し、世界各地にて生物多様性と気候変動の重要な課題に取り組んでいます。
https://www.ser.org/page/Ser-Microsoft
※2:日本版ネイチャーポジティブアプローチ
NACS-Jが推し進める、自治体や企業と連携し、地域からのネイチャーポジティブの実践に向けた取り組み。生物多様性評価にも取り組んでいる。
※3:NbS
Nature-based Solutionsの略。「自然に根差した解決策」と直訳され、生物多様性の保全や再生、持続可能な管理を通じて社会的な課題にも対処し、人間と自然の両方に利益をもたらす取り組みのこと。社会課題の解決アプローチとして世界的に注目されており、国連環境計画でもその重要性が訴えられている。
本リリースに関するお問合せ
日本自然保護協会 日本自然保護大賞担当:原田・高川・後藤
Email: naturepositive@nacsj.or.jp Tel: 03-3553-4101(受付、平日10:30~17:00)
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F


