大型陸上風力の自然環境影響レポート2025公表
再エネ推進のためにあるべき姿を問う
2025年11月6日
- 2023年から発行している大型風力自然環境影響レポートの第3弾を公表
- 今後、太陽光発電を超える数の大規模な陸上風力発電が建設予定
- 発電事業者ごと、環境アセス実施業者ごとの環境配慮を比較して公表
- 自然環境に特に深刻な影響を与える可能性のある問題の事業は全体の10%程度
- 自然環境に大きな影響のある再生可能エネルギー事業は適切に是正されるべきで、特に企業は自然環境への影響をしっかり考慮して再エネの転換に取組むことが重要
公益財団法人日本自然保護協会(理事長:土屋 俊幸)は、11月6日に「大型陸上風力発電計画の自然環境影響レポート2025」を公表しました。以下リンクより本文をご覧いただけます。(PDF/7.2MB)
地球温暖化は、地球上の生態系全体に深刻な影響を及ぼしています。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストによれば、気候変動の影響を受けている絶滅危機種は2025年時点で7,695種に達しているといわれています。このような状況に対して、温室効果ガスの削減対策を早急に講じることが世界的に求められており、日本も政府が2050年のカーボンニュートラル実現という国際公約を掲げ、化石燃料から再生可能エネルギー(再エネ)への転換を図っています。
一方で、再エネ施設の開発による自然環境や住環境への悪影響が顕在化しており、施設の建設によるトラブルが各地で増加しています。再エネへの転換の推進は、自然環境の保全上も重要です。しかし、自然環境や住環境に不可逆的な影響を与える再エネの導入は歓迎されるものではなく、世間の再エネへの不信感にもつながりかねません。
今回のレポートでは、再エネのなかでも大型陸上風力発電事業の自然環境への影響をまとめています。最新の状況へのアップデートに加え、これまでのレポートで分析の対象にしていなかった事業も対象にして、国内ほぼ全ての大型陸上風力発電事業(計画を含む)の自然環境への影響を評価しました。さらに、環境アセス準備書に記載されている現地調査結果の内容や、環境大臣からの意見も分析し、事業者ごとに陸上風力発電事業の環境配慮の実態などを明らかにしました。
今回のレポートのポイント
- 今回のレポートでは、2025年9月時点で稼働中または計画中の512件の陸上風力発電事業を独自解析。環境影響評価図書(アセス図書)などを参考に、国内ほぼ全ての大型陸上風力発電事業を評価した。これまで評価対象外であった2017年以前に環境アセス図書を発行した事業や、環境アセス未実施の事業も対象とし解析した。
- 4万kWを超える大規模な陸上風力発電事業と太陽光発電事業の比較を行ったところ、太陽光発電所についてはすでに稼働中の発電所が多い一方、陸上風力発電所は、計画中の発電所が各地に多数あり、今後自然環境への悪影響が顕在化する懸念がわかった。陸上風力発電事業は、建設時だけでなく、稼働中にも猛禽類の衝突死を引き起こすなど、稼働しうる限り恒久的に自然環境へ悪影響を与え続けることから、その影響は太陽光発電と比べてより深刻である。
- 解析結果から、事業者ごとに自然環境への配慮に大きな違いがあることが明確になった。特に自然環境に対して深刻な影響を与えうる事業(計画も含む)は全体の10%程度であった。
- 陸上風力発電業を推進には、適切な立地での計画が重要となることから、過去からの累積的な環境影響が迅速に行えるよう、アセス図書の公開やデータの共有が極めて大切である。2025年6月に改正された環境影響評価法によって、事業者によるアセス図書の常時公開推進を期待する。
- 各企業は温暖化対策の一つとして電源の再エネへの転換や再エネへの投資を進めているが、これらの取組みの際には、生物多様性への致命的な影響がないか多面的に検討し、真に持続可能な取組の推進が求められる。
ご参考
公益財団法人 日本自然保護協会について
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/
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