企業の生物多様性保全への貢献を見える化 6社にネイチャーポジティブ貢献証書を発行
2025年10月9日
- ネイチャーポジティブに向けた6社の企業の取組を、世界目標や市町村の設定した目標に照らして評価し、2024年度の貢献証書として発行
- うち4社は市町村と連名で発行し、貢献度をより公的に証明
- 生物多様性保全の貢献度は、専門家の協力を得て、最新の科学的知見を活かし定量的・包括的に評価
公益財団法人日本自然保護協会(理事長:土屋俊幸、以下NACS-J)は、地域(市町村)全体を見据えたランドスケープアプローチ※1でネイチャーポジティブの実現に取り組んでいる企業の貢献度を評価して「ネイチャーポジティブ貢献証書(以下、貢献証書)」を発行しています。
この度、企業6社(株式会社NTTドコモ、株式会社ゴールドウイン、JESCOホールディングス株式会社、株式会社日清製粉グループ本社、日本生命保険相互会社、三菱地所株式会社)に対し、貢献証書を発行しました。

図:貢献証書のイメージ
今回の貢献証書は各企業の2024年度の取組を評価して発行したものです。その概要は以下の通りです。
表:2024年度分の貢献証書を発行した企業と、その貢献内容の概要
※が付いた市町村はNACS-Jと共同で貢献証書を発行した自治体であることを表す。
企業名 | 市町村 | 貢献内容の概要 |
---|---|---|
株式会社NTTドコモ | 所沢市※(埼玉県) |
|
株式会社ゴールドウイン | 小矢部市(富山県) |
|
JESCOホールディングス株式会社 | 那智勝浦町(和歌山県) |
|
株式会社日清製粉グループ本社 | 只見町※(福島県) |
|
日本生命保険相互会社 | 甲賀市※(滋賀県) |
|
三菱地所株式会社 | みなかみ町※(群馬県) |
|
日本の生物多様性は、自然的・社会的条件によって地域ごとに大きく異なるため、ネイチャーポジティブはそれぞれの地域(市町村)を基盤に実現していくことが重要です。また、流域や景観スケールで取組を進める上では、自治体や企業、市民といった様々な主体の連携が欠かせません。特に最近では、ネイチャーポジティブに果たす企業の役割や責任に注目が集まっており、企業が地域社会と連携して流域や景観スケールで取組を進める「ランドスケープアプローチ」の重要性が国際的にも強調されています。
この貢献証書は、ネイチャーポジティブの実現に向けて生物多様性の保全や再生に力を入れる企業の取組が、世界目標(昆明・モントリオール生物多様性枠組)や市町村の設定した目標にどれくらい貢献しているかを定量的に評価することで、自社のネイチャーポジティブに向けた取組の状況を客観的に可視化することができます。これは、TNFD※2など企業の自然関連情報開示においても活用できる情報となります。

図:付属書のイメージ
評価結果の詳細は、貢献証書の付属書に記載しています。生物多様性保全への貢献度は、気候変動対策の二酸化炭素の削減量などとは異なり、その評価がとても難しいと言われています。
NACS-Jは、全国の専門家や研究機関にも協力していただき最新の科学的知見を活かして定量的に評価しています。評価に用いている手法は、現在国際的にも議論されているTNFD等における「自然の状態(State of Nature)の評価」の考え方に即したものになっています。また、国連環境計画でもその重要性が訴えられている「自然に根ざした解決策(NbS:Nature-based Solutions※3)」の観点から評価する方法なども用いており、包括的な手法で評価しています。
なお、NACS-Jと協力関係にある市町村では、地域のネイチャーポジティブへの企業の貢献をより公的に証明するため、NACS-Jと市町村の連名で貢献証書を発行しています。今回は4つの市町村(所沢市、みなかみ町、甲賀市、只見町)と連名で発行しました。
今後もNACS-Jは、ランドスケープアプローチで生物多様性の保全や再生に取り組んでいる企業に対して貢献証書を毎年発行していく予定です。ただし、現在は、企業の皆様に貢献証書を発行させていただくにあたり以下の要件を満たしていただけることをお願いしています。
現在の発行要件
- 地域(市町村)全体を見据えたランドスケープアプローチで生物多様性の保全や再生に取り組みネイチャーポジティブへの貢献を目指していることが何らかの形で明文化されている。
- 当該市町村において自治体との連携がある、もしくは連携にむけた働きかけをしている。
- 当該市町村の自然環境に顕著な負の影響を及ぼすような企業活動やその計画が無い。
- 当該市町村内の自社敷地以外の場所に対して生物多様性の保全や再生に資する貢献がある。
発行を希望する企業の皆様や、協力してくださる自治体の皆様は是非お問い合わせください。
※1:ランドスケープアプローチ
一定の広がりのある地域において、土地・空間計画をベースに多様な人間活動と自然環境を総合的に取り扱い、課題解決を導き出す手法。
※2:TNFD
企業活動が自然にどの程度依存し影響を与えているかを評価し、自然関連リスク・機会への対応を株主や投資家等に対して開示する枠組み。自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が2023年に国際的な開示ガイドラインを公表した。
※3:自然に根ざした解決策(NbS:Nature-based Solutions)
生物多様性の保全や再生、持続可能な管理を通じて社会的な課題にも対処し、人間と自然の両方に利益をもたらす取組のこと。社会課題解決におけるアプローチとして世界的に注目されており、国連環境計画でもその重要性が訴えられている。
お問い合せ先
日本自然保護協会 担当:高川・原田・出島
Tel: 03-3553-4101 Email: naturepositive@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F