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自然を知るWEBマガジン「知ろう、自然のこと。」会報「自然保護」電子版

四半世紀で7倍に!? この先、どこまで増えるのか? 全国で急増するシカの現状

ここ20~30年で爆発的に急増したニホンジカ(以下シカ)。全国的な生息数の伸び率は近年20%を超え、四半世紀で7倍以上になったという推定もあります。シカ研究者の梶 光一先生のお話と、昨年環境省が発表した資料をもとに、シカ増加の現状を紹介します。

お話を聞いた人

梶先生の顔写真

梶 光一 (かじ こういち)東京農工大学大学院農学研究院 教授。農学博士。ニホンジカの個体群動態と管理を専門とするシカ研究の第一人者。近著に『日本のシカ』(東京大学出版会・共著)

三重県大台ケ原の画像

三重県大台ケ原。急増したシカが、森林をササ原に変えてしまった
※出典:近畿中国森林管理局web サイト(www.rinya.maff.go.jp)

数・分布域ともに急増 まさに ”爆発的増加”

「通常の動物はある程度数が増えると増加率は落ち着いてくるものですが、ここ20~30年のシカの増加を見ると、そうはならず急激に増え続け、農林業被害や植生の変質、森林更新の阻害など、多くの問題を引き起こしています。”爆発的増加”という言葉がありますが、今のシカは、まさにそれです。餌を食べ尽くしたら減ってしまう、というのではなく、新たな餌をどんどん開拓しながら増えていくんですね」とは、シカ研究の第一人者である梶光一先生。

シカ問題の最前線で、その異常とも言える増え方を目の当たりにしていると言います。2017年に環境省が発表した「ニホンジカ生息個体数推定値の推移」によると、2015年の北海道を除く日本全国の推定個体数は、中央値で約304万頭(同年の北海道の推定個体数は約49~55万頭)。1989年の中央値が約40万頭だから、26年間で約7・6倍にも増えたことになり、近年の増加率は20%にも達しています。
また、シカの捕獲数は1990年の4万2千頭から2013年の51万3千頭と、24年間で12倍に増えています。

生息個体数推定値のグラフ(1989〜2015年

図1 ニホンジカの生息個体数推定値の推移 ※環境省(2017)より引用 *クリックで拡大

まさしく急増し続けるさなかにあると言えますが、一方で環境省による生息個体数推定値のグラフ(図1)を見ると、増え続けていた個体数が2015年(平成27年)に減少へと転じています。これはよい兆しなのでしょうか?

「減少に転じたとの判断は、あと数年の個体数の増減の傾向をもとに慎重に行う必要があります。2015年の推定値の中央値である約304万頭に増加率の20%を乗じると約61万頭になり、これが増加数ですが、実際の捕獲数は約45万頭です。また生息数はいくつかの仮定を入れて推定されているため、推定誤差もあります。推定された増加数以上に捕獲することができて、はじめてシカは減ります。それが数年間続いたときに、ようやく減少傾向にあると言えるのではないでしょうか」

ニホンジカの捕獲数のグラフ(1999〜2015年)

図2 ニホンジカの捕獲数 ※鳥獣関係統計より改変、2015値は暫定値

分布域も拡大中 高山帯への進出も

また、分布域も年を追うごとに拡大しています。1978年から2014年までの37年間で2.5倍に拡大したというデータもあります。それまでシカが生息していなかった雪の多い東日本や高山帯へも分布域を広げており、希少な植生が消失してしまう問題も起こっています。

ニホンジカの分布域(メッシュ数)

図3 ニホンジカの分布状況の比較 ※環境省(2017)より引用