陸の保護区
をつくる

白神山地ブナ林(根深 誠氏撮影)
日本自然保護協会(NACS-J)は、開発問題から尾瀬ヶ原を守るために誕生して以来、森林や湿地、里山など、貴重な自然環境を守るため国立公園・国定公園などの保護地域化や適正な管理に向けたさまざまな取り組みを行ってきました。
国立公園・国定公園の拡充
国立公園は、その風景の美しさや豊かな自然を求めて、観光や登山などで訪れる方も多い場所ですが、日本の生物多様性を保全するための重要な「保護地域」でもあります。
近年、生物多様性保全の必要性が高まる中で、国立公園・国定公園の保護地域としての重要性はますます増しています。NACS-Jは環境省や地元自治体と協力して、国立公園・国定公園のエリア拡張を目指しています。最近では、長野・岐阜県の御嶽山の国定公園化に向けた取り組みに関わっています。

国定公園化を目指す御嶽山
OECM
OECMとは、Other Effective area based Conservation Measures(保護地域以外の生物多様性保全に資する保全手段)の頭文字で、2010年、名古屋で開かれた生物多様性条約締約国会議(COP10)で生まれました。
OECMは、例えば、日本の昔ながらの里山のように、自然保護区になっていなくても、人の適切な管理によって結果的に自然が守られているような場所です。
現在、日本を含めた世界的な目標として2030年までに、陸と海のそれぞれ30%を、OECMを含めた保護地域化することを宣言しています。NACS-Jは保護地域の拡張と同時にOECMの拡張を目指しています。

里山も、必ずしも自然を守ることが目的ではないですが、人の適切な管理によって結果的に自然が守られている場所です
森林の保護
日本の国土面積の約7割は森林です。そして、森林の約3割が国有林野です。国有林野の多くは山岳地域や水源地帯であり、良質な水の供給、土砂災害の防止・軽減、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など私たちの生活にとって重要な役割を果たしています。
NACS-Jは、従来、木材生産の場所とされてきた国有林野の中でも、生物多様性上重要な場所を守る森林生態系保護地域の設立、保護林の拡張、保護林を結ぶ緑の回廊の誕生など、国有林野で生物多様性保全を進めるためさまざまな活動をしてきました。
今後も、日本の森林において、生物多様性保全への取り組みがよりよく進むよう、現場での実践や法制度への働きかけを続けます。

2021年世界自然遺産に登録された“やんばるの森”。NACS-Jは森林生態系保護地域の検討など、この森を守るしくみづくりに努めてきました。