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2025.07.01(2025.07.01 更新)

新しい洋上風力のアセス制度が成立

解説

専門度:専門度3

新たな洋上風力発電に係る環境アセスメント制度

図:新たな洋上風力発電に係る環境アセスメント制度(環境省資料よりNACS-J 改変)

テーマ:海の保全

フィールド:風力発電

地球温暖化対策として、再生可能エネルギー導入の推進が急務となっています。政府は、2030年までに電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を36~38%にすることを目指しています。洋上風力発電は、2024年時点の5.1ギガワット(以下、GW)を、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWにすることが目標として設定されています。

現在、洋上風力発電の設置は、都道府県からの情報提供により、国が領海内で促進区域を指定後、公募で事業者を選定しています。公募に応じる際、事業者は環境アセスメント(以下、アセス)手続きのうち方法書までの手続きを行う必要があるため、同一海域で複数の事業者によるアセス手続きが重複して行われます。その結果、異なる事業者による説明会が複数開催され地域住民が困惑したり、行政は大量のチェックが必要になったりするなどの問題が生じています。また、経済性も考えなければならない事業者に、正しく自然環境を把握し、事業による影響を低減する計画が策定できるのか疑念が残ります。

事業者に任せていた自然環境の調査を環境省が実施

このような状況を改善することを目的に、環境省は検討会※1を開き、NACS-Jもオブザーバーとして継続して出席し意見を述べてきました。この検討会で、公募前に自然環境の現地調査などを環境省が実施し、自然環境の影響を評価する新制度の策定方針がまとまりました。2024年の通常国会で法案※2が審議されてきましたが、スケジュールの関係で一度廃案になり、2025年5~6月の通常国会で、改めて審議が行われ、成立しました。改正法では、稼働後のモニタリングも環境省が選定事業者と協力して実施する方針も示されており、これにより、今まで不十分であった風力発電による自然環境への影響の科学的知見の蓄積が期待されます。

またこの改正法では、自然環境への影響がより少ないと考えられる排他的経済水域での洋上風力発電の導入を国が主導して進められることが明記されており、環境調査についても環境省など国が行うことが示されています。日本の海の生物に関する基礎データを早急に整え、生物多様性の保全と再生可能エネルギー推進の両立が図られることが期待されます。

※1 洋上風力発電の環境影響評価制度の最適な在り方に関する検討会

※2 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

担当者から一言

若松さん顔写真

リポーター
自然のちから推進部 
若松伸彦
環境省が責任を持ち環境調査を実施する意義は大きいです。成立が一年延びてしまいましたが大きな一歩です。

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