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(仮称)板小屋山風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書を提出しました

2026年11月2日

日本自然保護協会(NACS-J)は、福島県岩瀬郡天栄村及び福島県西白河郡西郷村で計画されている(仮称)板小屋山風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大103,200kW、基数:最大24基)の計画段階環境配慮書に対し、「森林生態系の連続性」の機能喪失や希少な野生鳥類のバードストライクなど自然環境への多大な影響が予測されることから、事業計画の抜本的な見直し(計画の中止または白紙撤回を含む)を求めて意見書を提出しました。

(仮称)板小屋山風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書(638KB)PDF


2026年11月2日

株式会社ユーラスエナジーホールディングス 御中

(仮称)板小屋山風力発電事業 計画段階環境配慮書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

公益財団法人日本自然保護協会(以下、「当会」という)は、自然環境および生物多様性の保全の観点から、福島県岩瀬郡天栄村及び福島県西白河郡西郷村で計画されている(仮称)板小屋山風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大103,200kW、基数:最大24基)の計画段階環境配慮書(作成委託事業者:いであ株式会社)に関し、以下のとおり意見を述べる。
本事業計画は、重大な環境保全上の懸念が存在し、生物多様性の喪失をはじめとする自然環境への多大な影響が予測されることから、事業計画の抜本的な見直し(計画の中止または白紙撤回を含む)を行うべきである。

1. 緑の回廊の連続性の喪失

本事業の事業実施想定区域は、その約66%が「日光・吾妻山地緑の回廊」に指定されている。「緑の回廊」は、森林生態系保護地域をはじめとする国有林内の「保護林」を相互につなぎ、野生生物の移動経路の確保、生息・生育地の拡大および個体群間の相互交流を促すこと(総じて「森林生態系の連続性」の確保)を目的として、当会などが林野庁へ働きかけを行い創設された制度である。ここで、保護林制度は、希少かつ特徴的な森林群落を恒久的に保存し、その生態や推移を学術研究および森林施業の規範とすることを目的とした林野庁の制度であり、「保護林」と「緑の回廊」は相互に機能を補完するものとして一体として保全される必要がある。

本事業計画では、「日光・吾妻山地緑の回廊」において風力発電機の設置が想定されている。事業が実施された場合、その悪影響は改変区域のみにとどまらず、緑の回廊が担う「森林生態系の連続性」の確保という根幹的な機能を喪失させることになる。さらに、事業実施想定区域の南側に位置する鎌房山東側の稜線付近は、「甲子・二岐山周辺生物群集保護林」に隣接している。風力発電機本体の設置や資機材搬入路の造成等によって保護林に隣接する尾根部および林縁部を改変することは、当該保護林に多大な環境負荷を与え、本来有する機能の喪失につながるおそれが極めて高い。

したがって事業者は、緑の回廊内における事業実施を回避するとともに、隣接する保護林への悪影響を未然に防ぐため、保護林境界から十分な離隔距離を確保するよう事業計画を再考すべきである。

2. 鳥類のバードストライクへの懸念

事業実施想定区域およびその周辺では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)に基づく国内希少野生動植物種であるイヌワシやクマタカの生息が確認・示唆されている(本配慮書p.94、96、97)。また、当該地域はノスリをはじめとする猛禽類や渡り鳥の移動経路でもある(本配慮書p.105)。さらに、環境省が公表している「陸域版センシティビティマップ」の注意喚起メッシュ図において、事業実施想定区域の全域が、風力発電機の設置に際し特に鳥類への配慮・注意を要するエリア(区分A3)に該当している(本配慮書p.125)。本配慮書p.307の専門家等へのヒアリング結果によれば、2024年11月~2025年10月(月1回)の調査期間において、事業実施想定区域内でのイヌワシの直接確認は記録されていないものの、事業実施想定区域から約10km強の距離に既知の営巣地が存在することが明記されている。イヌワシの一般的な行動圏(半径十数km以上におよぶ)に鑑みれば、事業実施想定区域が飛翔・採餌等の利用域に含まれている可能性もある。

「日光・吾妻山地緑の回廊」の管理・保全方針では、環境影響評価手続等において確認すべき事項として、イヌワシおよびクマタカについて「衝突死のリスクを限りなくゼロにするため、営巣地を中心とした行動圏とその内部構造(狩場等)を把握し、風車の設置予定地が高利用域と重ならないようにすること」と定められている。

したがって事業者は、鳥類への影響について最大限の回避措置を講じる義務がある。安易な計画推進を慎み、複数年にわたる十分な現地調査を実施するとともに、衝突死リスクが排除できない場合には対象箇所での風力発電機の設置を取りやめるなど、計画の根本的な見直しを行うべきである。

以上

計画区域の約3分の2が緑の回廊と重なり 生物群集保護林にも隣接を示した地図

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イヌワシ・クマタカの生息記録がある地域に風車計画を示した地図

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