(仮称)佐藤ヶ平風力発電事業計画段階環境方法書に関する意見書を提出しました
2026年3月4日
(仮称)佐藤ヶ平風力発電事業計画段階環境方法書に関する意見書 (635KB)PDF
2026年3月4日
株式会社ユーラスエナジーホールディングス 御中
(仮称)佐藤ヶ平風力発電事業計画段階環境方法書に関する意見書
〒104-0033
東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸
日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、青森県むつ市で計画されている(仮称)佐藤ヶ平風力発電事業(事業者:株式会社ユーラスエナジーホールディングス、最大 84,000 kW、基数:14 基程度)の計画段階環境方法書(作成委託事業者:いであ株式会社、以下本アセス図書と言う)に関する意見を述べる。
1. 特定植物群落や自然林が大規模に改変される本事業は大幅な計画変更が必要である
環境配慮書への意見書で述べたように、本事業の事業実施想定区域は、国指定の特定植物群落「燧岳山腹ブナ群落」のうち約 40%の範囲を含み、チシマザサ-ブナ群団やヒノキアスナロ群落など植生自然度9の自然林が全体の約52%を占める地域である。さらには本事業の事業実施想定区域のほぼ全域は国有林であり、水源かん養保安林に指定されており、風力発電機設置のためには保安林を解除して、大規模な森林伐採を行う必要がある。
特に特定植物群落と大規模な自然林が広がる北西部には、大型風力発電機を搬入可能な車道も林道も存在しないため、発電機の建設および送電線の設置を実施するには、長距離の林道建設、大規模な土地改変などが必要となる。広範囲な自然林の伐採が想定される本事業の実施は、ネイチャーポジティブの観点に沿うものではなく、特に国指定の特定植物群落 「燧岳山腹ブナ群落」 である事業実施想定区域の北西部では事業を実施しないよう計画変更すべきである。
2. 環境省作成の鳥類センシティビティマップA3に該当しイヌワシやクマタカの生息の可能性がある事業予定地北西部を除外すべきである
本事業の事業実施想定区域では、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)において国内希少野生動植物種に指定されているイヌワシ(絶滅危惧IB類)とクマタカ(絶滅危惧IB類)の生息が確認されている。クマタカについては、本アセス図書P.304(配慮書引用部)の専門家ヒアリングで繁殖の可能性についても指摘されている。
さらに、環境省作成の鳥類のセンシティビティマップ(陸域版)における注意喚起メッシュ図では、本事業の事業実施想定区域の北西部が「風車の建設には注意を要するエリア(A3)」に含まれている。イヌワシやクマタカなどの希少猛禽類が生息・繁殖するこのような地域に風車が建設されれば、バードストライクの危険に晒される可能性が高くなるため、同地域での事業は慎重に判断すべきであり、特にセンシティビティマップ(A3)に該当する事業実施想定区域の北西部では事業を実施すべきではない。
3. 「佐藤ヶ平ヒバ遺伝資源希少個体群保護林」の改変の可能性を伴う風力発電機搬入路は計画から除外すべきである
本事業では事業実施想定区域内の東側から風力発電機の搬入を計画している。搬入を計画している林道には、東北森林管理局が設定した「佐藤ヶ平ヒバ遺伝資源希少個体群保護林」が隣接している。環境配慮書への意見書でも「風力発電機の搬入路としては不十分な舗装および路幅」と述べたが、本方法書によれば設置する発電機14基全てが定格出力の大きい機種に変更されており、この林道を風力発電機の搬入路として利用する場合、林道沿いの保護林や隣接する森林を伐採する必要が出てくると考えられる。
したがって、当該保護林に対して多大な影響が懸念され、保護林本来の機能喪失につながる恐れがあることから、「佐藤ヶ平ヒバ遺伝資源希少個体群保護林」に隣接する林道は、風力発電機搬入路として計画から除外するべきである。
4. 事業実施想定区域の北西部における調査地点数を増やすべきである
本事業のように、原生林的な森林および希少な植物群落のある地域で大規模な改変を伴う開発を進める際には、事業実施想定区域内の環境影響調査は必須である。調査遂行上の理由から調査地点数が限られてしまう場合も、調査地点の半数以上は事業実施想定区域内で行い、十分なデータを取得することが重要である。
しかし、本方法書で示されている事業実施想定区域内で予定している調査地点数は少なすぎる。例えば、哺乳類・鳥類・昆虫類では、全調査地点の1/4~1/3と半数にも及ばず、このような少ない調査地点数で事業による環境影響を正確に把握できるのかは甚だ疑問である。
特に、自然環境上最も重要な特定植物群落「燧岳山腹ブナ群落」や、自然林が広がる北西部に関しては、鳥類の調査地点が1地点しかなく、哺乳類と昆虫類の調査地点は設置されていない。このように、現時点での調査地点数およびその配置では、適切に自然環境への影響を評価しているとは言えない。したがって、事業実施想定区域の北西部における哺乳類・鳥類・昆虫類の調査地点数を増やすべきである。
以 上

