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(仮称)西久慈風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書を提出しました

2026年1月8日

日本自然保護協会(NACS-J)は、岩手県久慈市、九戸村、葛巻町及び軽米町で計画されている(仮称)西久慈風力発電事業(事業者:西久慈ウインド合同会社、最大120,400 kW、基数:最大28基)の環境影響評価方法書(作成委託事業者:一般財団法人日本気象協会、応用地質株式会社)に対し、この地域の豊かな自然環境や生物多様性への悪影響が強く懸念されることから、事業を中止すべきとの意見書を提出しました。

(仮称)西久慈風力発電事業 環境影響評価方法書に関する意見書(687KB)PDF

2025年1月8日

西久慈ウインド合同会社  御中

(仮称)西久慈風力発電事業
環境影響評価方法書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

公益財団法人日本自然保護協会(以下、日本自然保護協会)は、岩手県久慈市、九戸村、葛巻町及び軽米町で計画されている(仮称) 西久慈風力発電事業(事業者:西久慈ウインド合同会社、最大120,400 kW、基数:最大28基)の環境影響評価方法書(作成委託事業者:一般財団法人日本気象協会、応用地質株式会社)に以下の意見を述べる。

1. 本事業は岩手県知事意見を踏まえておらず事業を中止すべき

本事業は、今回発行された環境影響評価方法書(以下、本アセス図書)と2022年に発行済の環境影響評価配慮書(以下、配慮書)を比べると、風力発電機の最大出力と設置予定基数が大幅に減少していることがわかる。本アセス図書には、「エリアの絞り込みの際に、環境影響の低減を図った」(p.459)とあり、事業対象実施区域から保安林の一部、久慈平庭県立自然公園の西側エリアの一部が除外されたことがわかる。一見すると、自然環境への一定の配慮がなされたように伺えるものの、全く不十分である。

本アセス図書によれば、設置予定の風力発電機28基のうち23基がいまだに保安林内に計画されている。さらに、久慈平庭県立自然公園の第2種特別地域に6基、同じく第3種特別地域に1基の設置が予定されている。本事業は、風力発電機設置予定の28基全てが、保安林または県立自然公園の双方もしくは片方に重なっており、日本の自然環境や生物多様性にとって重要な場所を破壊してつくられる計画に変わりはない。
岩手県知事からも、配慮書段階において、「風力発電機等の位置等の検討に当たっては、保安林を除外すること」、「風力発電機等の位置等の検討に当たっては、自然公園を除外すること」との意見が出されている。しかし、この法に基づいた地元地方公共団体からの真摯な意見にもほとんど配慮することなく、事業者である西久慈ウインド合同会社は、計画を推し進めようとしている。

本事業は、設置を予定している全ての風力発電機が配慮書段階の岩手県知事意見を無視した計画であり、事業を中止すべきである。

2. 本事業は自然環境面での悪影響が全国でも注目されるべき大きな計画の1つであり中止すべき

岩手県は、陸上風力発電事業に係る環境影響評価ガイドラインにおける立地選定に関する基準として、鳥類(希少猛禽類)の情報を公開している。なかでも、岩手県の地域特性を踏まえた重要種であるイヌワシ(絶滅危惧IB類)については、バードストライクや生息及び繁殖に与えるインパクトに応じ、生息地域を3段階にゾーニングしている。3段階のうちレッドゾーンは、「イヌワシの重要な生息地」として区域化されており、「頻繁に利用される繁殖場所や高い頻度で飛来のある採餌場所など、イヌワシの生息に特に重要な地域であり、自然環境の保全上の支障を防止する観点から、対象事業実施区域に含めることが適切でない区域」と定義されている。

しかし、本事業で設置予定の風力発電機のうち、南エリアの16基全て、北エリアの12基のうち6基がレッドゾーン内で計画されている。
本アセス図書においても、「15年程前までイヌワシが生息していたが現在は不在である一方で、過去に生息していた場所は、生息環境としてのポテンシャルがあることから戻ってくる可能性」(p.315)があることが、意見を聴取した鳥類専門家に指摘されている。
イヌワシは、種の保存法に基づいて国の施策により保護増殖が実施されており、ワシントン条約にも掲載されている日本の絶滅危惧種であり天然記念物である。たとえ現在は本事業の計画地でイヌワシが確認されていなかったとしても、生息環境としてのポテンシャルがある場所に風力発電機が設置されてしまえば、増殖の機会を奪いかねない。

岩手県のガイドラインを無視し、国の施策とも逆行するような事業はおこなうべきでなく、中止すべきである。
また、本事業対象事業実施区域は、一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンによって「生物多様性保全の鍵になる地域(KBA)」に指定されている「平庭遠島」が含まれている。
さらに、自然環境保全法に基づく自然環境保全基礎調査の第2回調査(特定植物群落)において選定されている特定植物群落「平庭高原のシラカンバ林」の全域が対象事業実施区域に含まれている。
他にも、岩手県自然環境保全指針における保全区分において、設置を予定している風力発電機28基中8基が、保全の必要性が2番目に高いエリアの「B」に該当している。
このように、本事業は、岩手県内でも有数の自然環境上優れた地域で計画されており、本事業の実施によってもたらされる自然環境や生物多様性への悪影響は計り知れない。

日本自然保護協会は、2025年11月、「大型陸上風力発電計画の自然環境影響レポート2025」を発表した。本事業は、アセス調査中の202件ある事業計画のうち、配慮書段階における自然環境への悪影響が全国ワースト6位の事業計画である。
本アセス図書では、先に述べた保安林の一部や緑の回廊を対象区域から除外するなど一定の配慮も伺えるものの、依然として自然環境への悪影響は全国でも注目されるべき大きな事業であり、事業は実施すべきでない。

3. 本事業はインベナジー・グループの方針とは相反するものであり中止すべき

本事業の実施会社である西久慈ウインド合同会社の親会社であるインベナジー・ウインド合同会社のウェブサイトには、「持続可能な社会への挑戦」や「地域の皆様と共に、風力で日本にクリーンエネルギーを」という標語が見てとれる(2025年12月現在)。しかし、本事業は、地域の代表である岩手県知事の意見を無視し、岩手県が公開しているガイドラインをも無視した計画であり、到底「地域の皆様と共に」ある事業になっていないと考えられる。さらには、この地域の豊かな自然環境や生物多様性に不可逆的な影響を及ぼしかねない計画であり、「クリーン」でもなければ「持続可能」でもないと言わざるを得ない。ウェブサイトに並んでいる標語は、うわべだけの、世にいう「グリーンウォッシュ」そのものではないだろうか。

気候変動対策と生物多様性保全は両輪である。生物多様性を棄損する再生可能エネルギー施設の増加は、気候変動対策の推進にも悪影響があることは明白である。「持続可能な社会への挑戦」を掲げ、クリーンエネルギーの普及と地域共生を軸として、地域の自然環境と共存するためのプロジェクト設計を大事にしているインベナジー・グループの一員として、責任ある行動をとられることを強く望む。

以上

風車建設予定地の写真

風車建設予定地の様子