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活動レポート

3年間の取り組みの成果 ! 所沢市のネイチャーポジティブを目指した活動

2026年5月1日

フィールド

里山湿地

かいぼりやトンボ調査などの保全活動を実施している所沢市の里山保全地域

日本自然保護協会(NACS-J)と所沢市、NTTドコモは、市内の生物多様性保全上の重要地域の一つである菩提樹池里山保全地域(以下、菩提樹池)で、里山の保全・再生活動の促進と、ICT技術の活用を進めてきました。2023年5月に、ネイチャーポジティブ実現を目指し、三者連携協定を締結して3年、その取り組みの成果をご報告します。

1. 里山の保全再生活動の促進

菩提樹池では、これまで地元団体と所沢市が連携し、里山の保全活動を行われていました。しかし、活動には多くの人手を必要とする作業もあり、担い手の確保が課題となっていました。こうした背景を踏まえ、地元団体が取り組むこの里山保全活動に、ドコモ社員とNACS-Jが、6月頃に行われる「かいぼり」と、2月頃に行われる「保全管理活動」に継続的に参加しました。

かいぼりでは、ため池に堆積した泥のかき出しに加え、ウシガエルやアメリカザリガニなどの外来生物の駆除も行いました。保全管理活動では、繁殖力の強いクサギの除去や倒木処理など、里山を維持するために必要な作業に取り組みました。活動にはドコモ社員の皆さまが中心となり、これまでに延べ135名が参加されました。この取り組みを通じて、菩提樹池の生物多様性保全に貢献するとともに、地域外からの交流人口の増加にもつながりました。

かいぼりの風景 昼食のおにぎり

2. ドコモの ICT技術の活用

保全活動の効果を把握し改善につなげていくためには、適切なモニタリングが極めて重要です。一方で、調査を定期的に行うための労力や、専門的な知識をもつ人材の必要性など、モニタリングの実施に課題を感じる現場も多く存在します。そこで本取り組みでは、こういった課題解決を目指しドコモのICT技術を活用したモニタリングに挑戦しました。

本取り組みでは、環境の状態を反映しやすい「指標種」として、水辺と林地の両方を利用するトンボに着目しました。トンボは、生息環境の良好さに応じた「入れ子構造*1」が見られることから、指標種として適しています。

具体的には、AIによる種同定に挑戦し、①教師データによる学習、②現地での撮影、③画像による種同定の3段階で検証を行いました。さらに、結果の妥当性を確認するため、④専門家による現地調査も実施しました。

「自然環境の良い水辺」には種 A/B/C が、「自然環境が普通の水辺」には A/B が、「自然環境が良くない水辺」には C のみが生息するという場合があり、このような「良くない水辺」に生息する生きものが「良い水辺」に生息する生きものの一部であることを入れ子構造という。

① 教師データによる学習

まず、比較的撮影しやすく指標となり得るトンボについて、種ごとに約150枚の写真を用意し、AIが種の違いを学習できるようにしました。その結果、判別の正確さは平均で約85%となりました。

~学習したトンボの一覧~
アキアカネ、ヒメアカネ、ナツアカネ、マユタテアカネ、ミヤマアカネ、ノシメトンボ、ハラビロトンボ、ヨツボシトンボ、キイトトンボ、シオカラトンボ

② 菩提樹池でのトンボの撮影

次に、菩提樹池で実際にトンボの撮影を行いました。専門家でなくても実施できるよう、市販のビデオカメラやスマートフォンを用いて撮影しています。撮影は、2024年8月のテスト実施、同年10月上旬、2025年9月下旬の計3回実施しました。

③ 撮影したトンボの種同定

撮影した映像をもとに、特定のトンボを検出・識別する実証実験を行いました。撮影した動画から、トンボが写っている場面を1秒間隔で切り出し、AIによる種の判別を行いました。そのうえで、できる限り同じ個体を重複して数えないよう、一定時間内の連続した検出をまとめて1回としてカウントするなどの工夫を加えています。

2024年10月撮影分の判定結果
2024年10月カメラ撮影のトンボ種一覧表

2025年9月撮影分の判定結果
2025年9月カメラ撮影のトンボ種一覧表

今回のAIによる種同定の結果、現在、菩提樹池に生息していると考えられるトンボ類について、検出・識別が可能であることを確認しました。

④ 専門家による現地調査

専門家による現地調査は、2025年9月下旬に菩提樹池で実施しました。調査では、あらかじめ設定したルートを一定の速度で歩きながら、トンボの種類や個体数、雌雄(判別可能な範囲)を確認しました。基本的には調査ルートから約5mの範囲を対象とし、それ以上離れている場合でも、目視で確実に種類を判別できる個体は記録を行いました。なお、本調査は、日本トンボ学会および関東トンボ研究会の方々にご協力いただきました。

2025年9月の現地確認結果
2025年9月の目視確認トンボ種の一覧表

今回のAIによる種同定と専門家による現地調査の結果、アキアカネはいずれの手法でも多く確認されました。一方、それ以外のトンボについては、AIによる種同定結果および専門家による現地調査結果のいずれにおいても、種数・個体数ともに想定を下回ることが明らかとなりました。

本取り組みを通じて、AIによる種同定は一定の信頼性をもって種判別が可能であること、また種によって判別精度や検出されやすさに違いがあることを確認することができました。さらには、AIおよび専門家のそれぞれの調査結果から、トンボ類の危機的状況もみえてきたため、保全活動として耕作放棄地となっている水田の再生活動も開始しました。

水田とトンボの画像 水田の再生活動の風景

3. ドコモによる活動の貢献度の可視化

本取り組みを通じて、企業参画がネイチャーポジティブの実現にどの程度貢献しているかを把握するため、企業の貢献度を可視化しました。2025年10月に、所沢市とNACS-Jは、この可視化をもとに「ネイチャーポジティブ貢献証書」としてドコモに交付しました。また、所沢市が豊かな自然を大切にした地域づくりを継続的に実践している点を評価し、NACS-Jは所沢市をネイチャーポジティブ自治体の第1号として認証し、「ネイチャーポジティブ自治体認証書」を交付しました。
ネイチャーポジティブ自治体認証制度 参加登録団体および認証自治体一覧

4. 今後の展望

今後は、菩提樹池での活動に加え、ICT技術のさらなる活用に向けた検証を行い、現地におけるモニタリング調査の負担軽減に寄与できるよう取り組んでいきます*2
また、これらの取組を通じて得られたデータについては、自然共生サイト登録への活用をはじめ、多様な活用方法を検討していきます。引き続き、三者連携による所沢市でのネイチャーポジティブの取組に、ぜひご注目ください。

所沢市、ドコモ、日本自然保護協会が衛星画像データを活用した、植生および生物の広域推定技術の実証を開始~所沢市におけるネイチャーポジティブの更なる加速をめざす~

【2026年3月】 ニュースリリース & 連携協定の2025年度までの活動成果まとめPDF

担当者からひと言

原田さん顔写真

原田 和樹 (はらだ かずき)日本自然保護協会(NACS-J)ネイチャーポジティブ担当

NTTドコモ、所沢市、地域の皆さまとの取り組みは今度も続きます。引き続き活動にご注目ください。

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