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活動レポート

2025年度モニ1000里地調査シンポジウムを開催しました(後編)

2026年1月30日

フィールド

里山

長文のため前後編に分けてお送りします。前編はこちら

こんにちは、日本自然保護協会でインターン活動を行なっております、中央大学学部4年の佐藤羽南です。

本日は2025年11月22日に開催されたモニタリング1000里地調査シンポジウム「里地調査を通した次世代の自然の守り手育成〜学校や学生との連携を事例に〜」の内容をお届けします。

調査サイトの事例から

後半は、学校や学生と連携したモニ1000里地調査(以降、里地調査)を行っている全国3か所のサイトから、学校や学生と連携した調査活動についてご共有いただきました。

事例紹介① 奈良川原流域(源流域周辺の里山地域) (神奈川県)

山田 健一氏(奈良川源流域を守る会)、守屋 大地氏(玉川大学生物自然研究部)

奈良川は鶴見川の支流の一つで、横浜市北部の青葉区を流れています。そのうち、玉川大学に隣接する奈良川源流域は、谷戸と呼ばれる地形によって構成され、その地形を活かした人の営みによって典型的な里山が形成されています。山田氏からは、このような豊かな自然環境を守るために奈良川源流域を守る会を創設する際に、玉川大学の学長をはじめとした大学教員たちの協力があったことをきっかけに、長期にわたる生物自然科学部の学生との連携が築かれてきことをご説明いただきました。守屋氏からは地域の方と連携して里地調査に携わることで得られたこととして、OBや地域の方々と貴重な交流を持てることや、実践を通して生物や環境保全について学べることを挙げました。こうした点から、里地調査は学生にとって良い影響をもたらしていることが伺えました。

お二方の発表を通して、私は調査を通して人のつながりが広がっていることを強く感じました。特に学生と奈良川源流域を守る会の方々が区画を分担して調査を行い、その後に一カ所へ集まって結果を共有するという形は、効率的な調査を可能にすると同時に、双方が結果について議論したり、学生が知識豊富な方々から学んだりできる交流の場にもなっており、大変すばらしい取り組みだと思いました。

守屋氏のスライド

▲守屋氏(玉川大学生物自然研究部)より、学生・学校との連携を進めるにあたっての提案スライド

事例紹介② 長池公園 (東京都)

片山 敦氏(NPO法人 フュージョン長池)

長池公園は、東京都八王子市の閑静な住宅街の中に位置する都市公園です。公園内にはニュータウン開発から逃れた貴重な里山環境が残っており、環境省が重要植物群落に指定しているハンノキ林があるなど生物多様性保全に寄与しています。この公園を管理しているNPO法人フュージョン長池の片山氏に、小中学校・専門学校・大学生の授業やインターン、登録制のパークキッズレンジャーといった参加期間やできることが異なる人々に里地調査に参加してもらう上で、それぞれの活動の特徴や関わる上で心がけていることなどをご紹介いただきました。

長池公園の里地調査では、哺乳類調査を教育機関などと連携して行っています。長池公園では、学校からの相談に精一杯応えるために、里地調査を含む多様な授業内容を用意し、依頼に応えられない場合には他団体を紹介し、教員の方々との信頼関係を築いてきたことで、現在の年間を通した教育機関との連携につながっているそうです。

片山氏の発表を通して、私は里地調査に加え、落ち葉掃き、防災、高齢者福祉、キャリア形成など多様な授業内容を実施されていることに驚いたとともに、幅広い教育機関と連携するための工夫が凝らされていることに深く感銘を受けました。また、里地調査への参加をはじめとした公園での体験を通して、将来子どもたちが地域の自然環境を守る担い手になることが何よりのメリットだと語る片山氏の言葉から、教育機関との調査の連携の意義を強く感じました。

片山氏のスライド

▲片山氏(NPO法人 フュージョン長池)より、教育機関との連携の秘訣についてのスライド

事例紹介③ 池子の森自然公園 (神奈川県)

森 拓也氏(逗子市役所)、山浦 安曇氏(理科ハウス)

三浦半島の付け根に位置する逗子市にある池子の森公園は米軍用地の共同使用地で、2016年に開園した緑地エリアは約70年の間、ほとんど人の手が入らなかったことから、今でも豊かな自然環境が残っています。公園の開園時からボランティアとして強く関わっている自然環境調査会が2018年から池子の森公園で里地調査を行っています。そのうち、哺乳類調査で中学校、高校と連携した活動を行っています。

森氏からは、池子の森公園の成り立ちについてご紹介いただき、山浦氏からは中学校、高校と連携するようになったきっかけや、実際の活動の様子などについてご紹介いただきました。連携するきっかけになったのは、山浦氏が所属する理科ハウスに科学部訪れた際に部屋に置いていた回収後のセンサーカメラを部員が偶然見かけ、興味を持ってくれたことでした。連携している学校のうち現在の2校は公園まで遠い場所に位置しますが、公園が日米共同使用地であることや、調査地が立入禁止区域であることから、非日常的な体験としてむしろ喜んで来てくれるそうです。

お二方の発表を通して、学生の興味が思わぬ形で引き出されたことや、学生側から興味をもってくれたことがきっかけになったという点がとても印象的でした。普段は目にする機会の少ないセンサーカメラを自分たちで設置し、回収し、映像を確認するといった一連の調査を体験できることは、学生にとって大きな学びと価値があるのだと感じました。

山浦氏のスライド

▲山浦氏(理科ハウス)より、学生たちによる哺乳類調査結果の確認・入力の様子

多様な主体と連携した調査のためのポイント

事例発表の最後に、今回ご発表いただいた3つのサイトの事例から学校・学生との連携におけるポイントをまとめ、発表者の皆さんから一言いただき、最後に鬼丸氏から多様な主体との連携ポイントについて再度共有していただきました。

連携ポイントをまとめたスライド

閉会にあたり、モニ1000里地調査検討委員の畠佐代子氏から、縦と横の繋がりを上手く活用することが担い手の育成において重要であること、今回の発表事例が他の調査地の方々にとってヒントとなることを期待しているとのお話しがありました。また、環境省生物多様性センターの常富豊センター長からは、里地調査において多様な主体との連携が、活動継続に寄与することを期待しているとのコメントをいただきました。

おわりに

今回のシンポジウムを通じて、多様な主体、特に学校や学生と連携している3サイトの皆様は、きっかけこそ様々であっても、連携を長く続けるためにそれぞれ工夫を重ねており、その結果として調査がより豊かなものになっていることを強く感じました。また、里地調査を継続していく上で、新たな担い手へとつないでいくことが最も重要であり、そのためには他主体、特に教育機関との連携が鍵になると実感しました。また今回の3サイトでの事例では、さまざまな連携の仕方、活動内容を含んでおり、連携を検討している他サイトの方々にとって前向きな気持ちを抱かせる内容でした。学生であり、まだモニ1000調査に参加したことのない私にとっても、里地調査が保全に役立つだけでなく、人とのつながりを生み出す場であることを認識する貴重な機会となりました。

多様な主体、特に学校や学生との連携は、現在の活動を支える担い手を補うだけでなく、「未来の担い手となる子どもたち」を育てることにもつながっています。その成果が数年後により明確な形で表れることを期待しています。

最後に、今回のシンポジウムにご参加いただいた皆さまへ、心より御礼申し上げます。

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