900名近く参加したSBSTTA28。会議場の様子
2025年10月、UAEで開催されたIUCN世界自然保護会議(WCC2025)と、パナマで開かれた生物多様性条約・科学技術助言補助機関会合(SBSTTA27)に参加しました。WCCは4年に1度、国際自然保護連合(IUCN)の方向性を決める最大の会議で、今回は対面だけでも約1万人が集まりました。最大の成果は、今後20年の指針となる「2045ビジョン」を採択したことです。これは「自然をどう守るか」だけでなく、自然保護を通じてどのような社会や産業を実現するのかを示したもので、公正なエネルギー移行や持続可能な海の経済(ブルーエコノミー)など、社会変革の方向性が明確に示されました。自然の回復を前提とした経済設計、企業活動への生物多様性の組み込み、地域社会の権利の尊重など、IUCNとしてネイチャーポジティブの姿を共有した意義は非常に大きいといえます。
また、企業・市民社会が連携する場が増え、政策や金融、技術といった多様な分野でネイチャーポジティブが議論されました。国際自然保護連合日本委員会(IUCN-J)として15名以上のユース参加を支援し、現地から40本を超えるレポートを発信しました。
一方、同時期のSBSTTA27は、本来は昆明・モントリオール生物多様性枠組の進捗評価や気候変動など重要テーマを科学的根拠に基づき議論する場でしたが、実際には政治的な駆け引きが多く、成果は極めて限定的でした。
WCC2025が示した意欲的な社会変革ビジョンと、政府レベルの意思決定の停滞が際立ったSBSTTA27。この対照は、国際社会がネイチャーポジティブへ進む上での課題を象徴しているように感じられました。

WCC2025では日本ブースを設置。グローバルネイチャーポジティブサミット日本開催をPR
担当者からひと言
道家 哲平 (どうけ てっぺい)日本自然保護協会(NACS-J)国際担当
後半の出張時に初めて訪れたパナマ運河。気候変動による水不足で運行障害が起きているそうです。


