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企業連携事例Corporate Partnership Case Studies

廃校のプールを地域の生きものたちの住処に 福島県いわき市でビオトープづくりをスタート

連携企業株式会社起点、真如苑

連携・協働事例

2025年10月10日

日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、福島県いわき市内で廃校になった小学校のプールをビオトープにする活動を地域の皆様とスタートさせました。

現在この小学校は、NACS-Jの活動を応援してくれている株式会社起点(以下、起点)がオフィスとして活用しています。起点は東日本大震災以降この地でオーガニックコットンの栽培や製品づくりを頑張っている会社です。

起点はNACS-Jが進めている日本版ネイチャーポジティブアプローチの取組に賛同してくださり、いわき市でも何か生物多様性の保全と再生の取組ができないか一緒に検討を進めていました。この2年間は福島県の助成金を活用してコットン畑周辺(いわき市四倉町大野地区)の生きもの調査も実施。どのような自然環境が広がっているのか生物多様性の現状を調べたりもしました。

生きもの調査の様子は、地域をほぐす情報紙「大野ヲ耕スvol.1」と「大野ヲ耕スvol.2」に掲載されているのでぜひご覧ください。

「大野ヲ耕スvol.1」(2.6MB)PDF 「大野ヲ耕スvol.2」(2.2MB)PDF

生きもの調査は須田真一先生(東京大学 総合研究博物館 研究事業協力者)に協力していただき、主に昆虫から見えてくる生物多様性を調べました。コットン畑周辺は、いわゆる日本の典型的な里山の自然環境が広がってはいるものの、周囲の田んぼは慣行栽培が進み、ため池にはアメリカザリガニやウシガエルなどの外来種がまん延しており、決して生物多様性が豊かとは言い切れない状況であることがわかってきました。

貴重なトンボや水生昆虫も僅かに確認することができたものの、このままではその消失も時間の問題だろうと話合い、小学校のプールをビオトープにして生きものたちの一時的なレフュージア(避難場所)として活用しようとなりました。

そして、今年、旧大野第二小学校のプールをビオトープにする計画を本格的に始動。9月22日(月)と23日(火)、2日間かけて、プールの掃除や近くのため池などから採取してきた水草の移植作業を行いました。

ため池での作業風景1

ため池を管理している地域の方に許可をいただき水草と生きもの採取活動を実施。かつては一面がジュンサイで覆われていたというお話を伺い、ジュンサイのタネが泥の中に眠っている可能性があるので泥も採取して撒き出すことに。

ため池での作業風景2

この地域で生きものたちにとって比較的状態の良いであろうため池は数えるほどしか見つけることができず。このため池も特定外来生物のブラックバスがぴょんぴょん跳ねていました。その影響なのか、ヤゴなどの水生昆虫はほとんど見ることができませんでした。

一見すると自然が豊かに思えてしまうため池も、調べてみると生きものの種類や数は想像以上に質の悪さがわかります。

プールの掃除風景

おそらく5年以上使用されていないプールには雨水とともにスカムがたまっていたのでみんなで掃除。

プールにいた生きも

取り除いたスカムからはヤゴやゲンゴロウの仲間などがたくさん出てきました。すでにこのプールが生きものたちにとって一定のレフュージアとして機能していることもわかりました。もちろん、スカムに混ざってしまっていた生きものたちは救出します。

水草の移植風景

掃除の後、採取してきた水草や生きものたちを移植しました。ヒシ、サンカクイ、ミクリなどの水草をはじめ、ドジョウやギバチなどの魚類も移植しました。ジュンサイのタネが眠っている可能性のある泥も撒き出し完了。

もともとプールにいた生きものや新たに導入した生きものは全て記録してその変化をしっかりモニタリングしていきます。

移植後のプールの風景 移植後のプールの風景

こうして25mプールを活用したとっても贅沢なビオトープづくりがスタートしました。果たして、移植した水草たちはうまく定着するのか、ジュンサイは芽を出すのか、新たな生きものたちはやってくるのか、これからが楽しみです。

拠点としている旧大野二小のプールを使って、ビオトープ作りを開始しました!(KITEN Co.,Ltd.Facebookページ)

今回の活動でビオトープづくりの土台はできあがりました。次回からは地域の子どもたちを巻き込んで、モニタリング活動や自然観察会も開催していく予定です。

集合写真

今回の活動は、NACS-Jの活動を寄付サポーターとして支えてくださっている真如苑のご支援を活用させていただきました。温かいご支援をくださり本当にありがとうございました。

日本版ネイチャーポジティブアプローチ
いま世界では、生物多様性の損失を止め、自然を回復させる「ネイチャーポジティブ」の実現が求められています。 NACS-Jは、「日本版ネイチャーポジティブアプローチ」として、自治体や企業などとのパートナーシップの構築と、生物多様性の定量的な評価に取り組み、地域からのネイチャーポジティブを実践しています。

以上

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