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自然を知るWEBマガジン「知ろう、自然のこと。」会報「自然保護」電子版

国が再開させたい群馬県・倉渕ダム計画
烏川上流を子どもたちに残したい

烏川上流で遊ぶ里山学校の“川ガキ”たち

高崎市の烏川上流では、ほとんど見ることができなくなった水遊びにはしゃぐ子どもたちの姿が今もあります。しかし、この川が再びダム計画の候補地にされています。なぜなのか、「流域」を研究する保屋野氏に報告していただきます。

保屋野 初子(ほやの はつこ)
元星槎大学教授、元NACS-J理事

群馬県高崎市の農業、水道などの水源となっている烏川上流、倉渕地区。市の生命線のような流域で、群馬県の水源涵養保安林にも指定されています。

「NPO法人アグレコ」と「烏川源流の会」は、ここで絶滅危惧種の猛禽類クマタカや他の生物の調査を続けています。同定できた702種のうち環境省あるいは群馬県のレッドリスト掲載種は29、隣接県でいずれかのカテゴリーでリストアップされている種は105(8月26日時点)。代替や再生が不可能な生物多様性のホットスポットであることを示しています。

しかし、ここが国のダム計画にさらされています。以前には県の倉渕ダム計画が立てられ、高崎市民の反対運動や費用対効果の低さなどから、2003年、当時の小寺弘之県知事が凍結を決断し、2015年に正式に中止、市内沿川の治水工事もほぼ完了しています。

ダム計画中の地図

計画地の場所。鼻曲山と榛名山から集まる水が、広葉樹林と砂礫などに濾され清浄で豊富な流れを生んでいる

さらに必要な新規ダムが10以上?

国土交通省は2024年、「気候変動」を理由に、長期の河川整備基本方針を利根川水系の治水能力を強化するものに改定。下流の洪水流量を従来見積りの約1.2倍に引き上げ、上流ダム群で調整する洪水流量も既存のダムに加え10~20ものダムが必要となる現実的ではないものとしました。それを受け、今年、倉渕ダム計画再開に向けた調査を開始。小さな倉渕ダムが戸倉ダム(片品村)とともに計画再開の候補とされた主な理由は、これまでに「中止」となった6ダムのうち用地買収済みで工期が短いというもの。しかし、倉渕ダムの治水効果は利根川下流での洪水調節流量の1%余りしか見込めません。県内の自然保護団体は国交省に質問書や意見書を次々と提出しています。

今年8月から千葉県はじめ各地で発生した豪雨は、ダム集水域でなく下流の都市部に直接降り注ぐ、新たな様相の水害です。「気候変動」による水害の変化に適応する治水政策の根本的転換が必須です。二酸化炭素吸収源であり調整サービス機能の大きい上流域を損壊し、二酸化炭素を大量に排出する大規模開発はむしろ気候変動を助長します。倉渕地区に移住して“川ガキ”姉弟を育てる青木美和さんは、子どもたちには自然との共存を学んでほしいと話します。そのままの自然を残し共生していく選択こそが、未来世代のためになすべきことでしょう。

森林の写真

ダムができると水没する烏川上流域。市の「自然共生ゾーン」