今日から始める自然観察「あわ泡バブル植物!」
2026年11・12月号 自然観察ツール 会報電子版 今日から始める自然観察
2026年11月1日
公園などに落ちているオレンジ色のムクロジの実。なんとせっけんの代わりになるのです。このムクロジの他にも、いろんな植物が泡立ちます。今回は泡立つ植物を集めて、実際に泡立ててみた様子をご紹介します!
岩谷 美苗(いわたに みなえ)
樹木医。
著書:『木ぐらし手帳』(文一総合出版)ほか
もしせっけんがなかったら、皆さんはどうしますか? 我が家では「じゃあ、ムクロジでいっか」となります。このムクロジ、なかなかの実力者。ソープナッツとも呼ばれ、しっかり泡立ち、汚れも落ちます。
日本では、井戸のそばや川べりなど、昔の洗濯場だった場所に植えられていることが多く、ムクロジがある場所は、かつて人々がおしゃべりしながら洗濯していた場所なのかもしれません。一般的なせっけんの洗浄成分は、脂肪酸ナトリウムなどですが、ムクロジの洗浄効果は、果皮に含まれる天然のサポニンという成分のおかげです。

ムクロジの実。秋から春にかけてバラバラ落ちる。黒い種子は羽根つきの羽根に使わるほか、炒れば中身を食べられる。豆の味

100円ショップでも売っている洗顔泡立て器に、少量の水とちぎった果皮1個分を入れて泡立てると、すばらしい泡立ち! キンモクセイで香り付け
ムクロジで洗ってみた
ムクロジの果皮は、簡単に水で泡立ちます。ペットボトルに5分の1ぐらいの水を入れ、果皮1個分をちぎって入れ、シェイクするとたちまち泡立ちます。ただ、ムクロジの実の匂いは不評で、やや酢昆布のような酸っぱい匂い。泡立てると生臭く、子どもたちに「臭い以外で表現して」と頼んだら「やる気が出ない匂い」と、精一杯考えてくれました。果皮を15分ぐらい煮出すと匂いが弱まり、泡立ちもさらに良く、実用的です。同じ果皮を2回は煮出すことができます。ローズマリーなどのハーブやキンモクセイの花、モモなどの皮などで香り付けすると楽しいです。合成洗剤より汚れ落ちは弱いので、温かい目で見てください。


外部サイト:樹木医の偏った植生活(岩谷美苗)
YouTube動画「拾った木の実でモコモコ泡 キャンプ編」
大豆やお茶にもサポニン!
サポニンを含む植物は、探すと意外と身近にあります。ダイズやチャノキ(特に実)にも含まれ、抹茶が泡立つのもこのおかげです。食べられるサポニンもあれば、食べてはいけないサポニンもあり、そもそも植物にとっては、他の生きものに食べられないための防御物質のようです。
花壇に植栽されるサボンソウは根に、困りものの外来種セイタカアワダチソウは花に、それぞれサポニンを多く蓄えています。トチノキの種子、エゴノキの果皮、サイカチのサヤも、昔からせっけん代わりに利用されてきました。中でもサイカチのサヤは、洗い上がりがほんのり茶色になるのが特徴です。汚れが落ちても白くならないなんて、どういうこと?
サポニンで武装した実にも、平気で立ち向かう生きものがいます。ムクロジを保管していると中からメイガが出てきます。エゴヒゲナガゾウムシは、サポニンがあるエゴノキの果皮をかじって中の種子に卵を産みます。ヤマガラは果皮をむいて種子を食べるほか、種子内のゾウムシの幼虫も食べます。実にサポニンがあっても、したたかに利用しているのです。

エゴノキの実を加えるヤマガラ。サポニンを含む果皮ではなく、中の種子を食べる(写真:伊藤信男)
泡立つ植物いろいろ
ムクロジ、エゴノキ、トチノキ、サイカチの実は水で泡立ちます。サボンソウ、セイタカアワダチソウ、チャノキ(お茶)の実は煮出さないとあまり泡立ちません。

エゴノキ・トチノキ
エゴノキの実も果皮にサポニンが多く、灰汁などアルカリ水と一緒に洗うと洗浄力が高くなるようだ。トチノキの実を割って入れ、シェイクするとキメ細かい泡立ち

サイカチ
「戦時中、サイカチのサヤを水につけ、内側のぬるっとしたところで洗っていた」とのこと。サイカチをつけた水は茶色になり、白い布が茶色に!「洗濯の正解」は今と昔では、違ったのかもしれない

サボンソウ(外来種)
サボンソウの葉を煮出した液は、汚れ落ち抜群。根に特にサポニンが多い

セイタカアワダチソウ(外来種)
黄色い花の穂を煮出し、泡立て器で泡立てるとあわあわ! 名の由来は花の見た目のようで、泡立つのは偶然の一致

アワブキ(おまけ)
枝を燃やすとだらりと泡が出てくるが、この泡は他のものと違ってサボニン由来ではなく洗浄力はない。泡立っても洗浄力があるとは限らない
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