N-Cafe 会員投稿コーナー
2026年1月1日
Contents
『クマタカ生態モノグラフ』を出版しました
滋賀県
山﨑 亨(クマタカ生態研究グループ)
『クマタカ生態モノグラフ』はクマタカの生態をさまざまな側面の科学的データに基づいて明らかにしたアジアで初めての試みです。クマタカの生態を明らかにすることは、クマタカの保全のみならず、森林保全にとっても極めて重要なことですが、クマタカは生活のほとんどを森林内で過ごしているため、その生態の全容解析は不可能だと思われていました。
クマタカ生態研究グループは1983年から、複数のメンバーによる合同調査に加え、位置だけでなく、行動も推定できる小型アクトグラム発信器、個体識別を可能とするウィングマーカー、レーザーによる環境解析、地域個体群を明らかにする遺伝解析など、さまざまな技術を駆使した調査に取り組み、ようやくクマタカの真の生態に迫ることができました。生物の豊かさと多様性に富む森林生態系の指標種であるクマタカの生態を初めて明らかにしたのが本書であり、クマタカと森林生態系の保全に役立つものと信じています。

『クマタカ生態モノグラフ』
編著:クマタカ生態研究グループ
発行:平凡社/B5変形判カラー432
ページ/価格:7480円(税込み)
勤務先の敷地で、初めての自然観察会を開催しました
東京都
遠藤文継(自然観察指導員)
環境関連業務へ異動し、専門用語や資格取得など難易度の高い内容に戸惑い、私にできることは何だろうと悩み続けていました。知識がない中で「自信をつけたい」「行動したい」という思いで模索する中、生物多様性という言葉に出会い、調べるうちに自然界の奥深さに魅了されました。異常気象や生態系の変化を知るほど、何か行動したいという思いから、自然観察指導員登録のための研修に参加しました。
最初の取り組みは、職場の仲間に自然の大切さを感じてもらうことです。そこで、会社の敷地内の自然エリアで、60分の自然観察プログラムを企画しました。初回ということでまずは同じ部署の数名と観察会を開催しました。趣旨説明から始まり、以前、ギンランなど絶滅危惧種が確認されたエリアの分析、野外探索、最後に気付きを共有する流れで進めました。
活動前後にアンケートを実施したところ、「身近な自然に気付けた」「自然を守る行動を考えたい」という声が多く、知識不足や今後の調査の必要性も挙がりました。数字や効率が重視される職場で、自然と触れ合う時間は新鮮な体験だったようです。敷地内にギンランが生息していますが、花が咲いた姿を見たことがありません。いつかその瞬間に立ち会いたいと思っています。今は小規模で活動していますが、今後は社内で参加者を増やし、さらに地域にも広げ、自然観察活動の場を広げていきたいと考えています。

(左)夏に撮影したギンラン、(右)観察会時に撮影したギンラン
内閣総理大臣賞受賞! 記念フォーラムを開催しました
埼玉県
高橋絹世(NPO法人和光・緑と湧き水の会 代表理事、自然観察指導員)
1999年からNACS-Jの協力で、埼玉県和光市の湧水・緑地調査を行い、その市民調査会として「和光・緑と湧き水の会」は発足しました。その後調査経験を活かし、身近な自然を知り、守り、活かす活動を継続、2007年法人に移行しました。
これまで、冨澤湧水や大坂ふれあいの森など和光市の特徴的な湧水地での保全活動、学校の環境学習や市民への観察会を行ってきました。和光市と協働で湧水環境調査を実施し、その結果は各種行政計画に取り入れられ、自然環境マップも出版しました。絵本や紙芝居で地層の話を解りやすく表現、会報などでの情報発信も行っています。
このような活動に対して、緑化推進運動功労者として内閣総理大臣賞を受賞、天皇皇后両陛下ご臨席の緑の式典で表彰されました。御懇談という時間が設けられ、水の研究をされておられる天皇陛下から「湧き水は減ってきてはいませんか」というお言葉をいただき、湧き水保全への新たな意欲が湧いてきました。
この受賞を記念してフォーラムを2025年10月に企画しました。現地の見学から始まり、NACS-Jの福田真由子氏からモニタリング調査から見えてきた自然の急激な変化について、牧野記念庭園学芸員田中純子氏から「ヒロハアマナ」について講演いただき、最後に当会の各地域活動の紹介、特に武蔵野台地末端部の特徴的湧水環境を発表しました。満席の会場で有意義なフォーラムでした。NACS-Jのご協力に感謝です。

フォーラム当日の「大坂ふれあいの森」見学の様子
ネイチャーポジティブの流れを、守られた海「三番瀬」に活かしたい!
千葉県
佐野郷美(市川緑の市民フォーラム 事務局長)
東京湾最奥部にある三番瀬は干潟と浅瀬の約1800haの海域です。ラムサール条約の登録湿地の条件を満たし、かつて千葉県が発表した三番瀬埋立計画を県民が白紙撤回させた「守られた海」です。その三番瀬の浅海域に幅100mにわたり市川航路浚渫土砂を入れ人工干潟を造成する計画を2023年夏に市川市が発表しました。
私たち「市川緑の市民フォーラム」だけでなく多数の市民の会が市に対して「市民が海に触れ合える自然干潟がすでにある。人工干潟はいらない。」と要望し、1万3000筆以上の署名も提出しています。
2025年10月25日に市民団体主催の「三番瀬人工干潟意見交換会」がありました。ネイチャーポジティブ(自然再興)の時代に、生態的機能を有する浅海域は保全すべきであり、ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」にも反します。市は人工干潟計画地に隣接する市所有の空地3.8haを整備し、5つのプールやレストラン、BBQ場を運営する事業者を募ろうとしています。当フォーラムは、この土地を海域環境に戻し、かつてこの地に江戸幕府に保護された塩田があったことから塩づくりを体験できる塩田や、海と触れ合う場として汐入庭園を整備し、周囲に市川市の木であるクロマツを植える提案しました。すると、多くの参加者から賛同の声をいただきました。今後さらに説得力を持ったネイチャーポジティブプランとして市に提案するつもりです。

市川緑の市民フォーラムが提案したイメージ図
人工干潟の造成をやめ、埋立地3.8haを海域環境に復元する案
イベント案内、活動報告、成果物紹介や、自然観察で撮影した面白い写真などの投稿を大募集!
あて先
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F NACS-J編集室
Eメール:kaiho2@nacsj.or.jp(送信の際は、@を半角にしてください)



