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自然を知るWEBマガジン「知ろう、自然のこと。」会報「自然保護」電子版

【配付資料】今日から始める自然観察「バラのような葉っぱ ロゼットで冬をこす植物」

<会報『自然保護』No.609より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
【今日から始める自然観察】バラのような葉っぱ ロゼットで冬をこす植物(1.8MB)PDF

冬場、公園などの日当たりの良い場所を歩いていると、地面にべったりと葉を広げた植物の姿を見ることができます。これは植物の冬越し戦略の一つでロゼットと言います。今回はそのロゼットの観察を楽しむための視点の例を紹介します。

岩槻いわつき 秀明ひであき(自然科学系ライター)


ロゼットは植物の冬越し方法の一つで、地面にべったり張り付くように葉を放射状に広げた植物形態です。ローズ、つまりバラに由来する言葉で、その姿がまるでバラの花のように見えることにちなみます。特に春に花が咲く「冬型一年草」(後述)は、冬の間も光合成をして養分を蓄えていく必要があるため、ロゼットの形態を取るものが多く見られます。ロゼットの形を取ることで、体いっぱいに太陽光を受けることができます。また乾燥した寒風や積雪の影響を最小限にすることもできます。

さまざまな植物のロゼッタの写真

いろんな形
冬の公園を散策中に見つけた地面の様子。写真のフレームに納まる範囲内だけでも、これだけの種類の植物が「ロゼット」になって冬越ししていた。ロゼットの形は種類によって異なる。数多く観察し、共通する特徴をつかんでいけば、ロゼットから種類を言い当てられるようになるのも夢ではない。

オオバコのロゼットの写真

ギザギザじゃない葉っぱ
他にもキュウリグサ、ノヂシャ、ヘラオオバコ、チチコグサ、ムシトリナデシコなど

ニガナのロゼットの写真

ギザギザの葉っぱ
他にもオオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、ノボロギクなど

スカシタゴボウのロゼットの写真

深いギザギザの葉っぱ
他にもタンポポ、アブラナ、ナズナ、ノアザミ、コオニタビラコなど

イヌナズナのロゼットの写真

毛深い葉っぱ
他にもハハコグサ、コウゾリナ、ブタナ、ビロードモウズイカなど

ロゼットを色で輪に並べた図

いろんな色
撮影したロゼットを切り抜いて、色相環のように並べてみた。ロゼットの色は種類によっても異なるほか、厳しい寒さなどの環境要因で色付くこともある。タンポポやメマツヨイグサ、キュウリグサなどは赤く色付きやすい。またオニノゲシやヒメムカシヨモギなど紫がかりやすい種類もある

草の生活と寿命

植物のうち、ロゼットを形成するのは主に草本です。草本の生活史は、大きく一年草、二年草、多年草の3つに分けられます。一年草は株の寿命が1年未満のもので、さらに夏型一年草(春に発芽、越冬しない)と、冬型一年草(秋に発芽、越冬後、開花結実。越年草ともいう)に分けられます。二年草は発芽後数年かけて成長し、開花結実後に枯死します。多年草は株の寿命が長く、開花結実を何年も繰り返します。

これらのうち、株が生きた状態で越冬する冬型一年草と二年草、多年草が種類によってロゼットになります。植物の姿を季節ごとに追って、どの種類がロゼット状態になりやすいか観察してみると良いでしょう。

ロゼットはまるで地面に咲いた「冬の花」のように美しいものです。まずは色や形の美しさをよく見てから、手で触れてみて、つるつる・ざらざらなどの感触を楽しんでみましょう。またロゼットはどういう場所に多く見られるかを調べてみると意外な発見があるかもしれません。ロゼットの写真をたくさん撮って、共通する特徴をもとに、どれとどれが同じ種類なのか推測し、図鑑を使って同定にも挑戦してみてください。

ロゼットをつくる草の暮らし

タネツケバナ(冬型一年草)の場合

タネツケバナの生活史の図

タネツケバナのロゼットと花の写真

タネツケバナは秋に発芽し、ロゼットで越冬。気温の上昇とともに茎が立ち上がり3~5月ごろに開花。速やかに結実し夏前には枯れてしまう。一年草のうち年をまたいで生育するものを冬型一年草(越年草)という

ダイコンソウ(多年草)の場合

ダイコンソウのロゼットと花の写真

夏に黄色い花を咲かせた後、秋にタネを付ける。寒くなると地上の茎は枯れるが、株元にロゼットを形成し、越冬する。多年草なので株の寿命は長く、何年も開花結実を繰り返す


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