だから乳幼児との自然観察は面白い!〜乳幼児との自然観察会を行う自然観察指導員の思い〜
2021年11月1日
乳幼児との自然観察会を行っているNACS-J自然観察指導員に、その魅力とやりがいを教えてもらいました。
生きものとしての感覚を観察を通してともに楽しむ
山梨県
伏見 勝 (ふしみ まさる)
自然観察指導員(講習会講師)。八ヶ岳自然観察の会代表。八ヶ岳の森連絡会議会長。環境省環境カウンセラーや環境省自然公園指導員としても活躍。

幼稚園児との「水辺の生きもの観察」。「そーっと、じーっと観察することで、生きものの変な形や顔、気持ち悪さも親しみに変わります」と伏見さん。
県立病院の産婦人科で生後数日の赤ちゃんとお母さんたち3組ほどで自然観察会をしたことがあります。病院の庭のケヤキの下で30分ほど、幹に触ったり揺れる葉から風を感じたりしました。
赤ちゃんはまだ揺れる葉を認識できないはずなのに、母親の腕の中で、まるで葉っぱを見ているかのように両手を広げて動かしていました。それを見て私は、人間は生きもので自然の一部であること、そして生きものとしての感覚が赤ちゃんにあることを確信しました。今ではこの「生きものとしての感覚」がまだしっかりある乳幼児期にこそ、自然に親しみ生きものとして感じる原体験としての自然観察が大切なのではないかと考えています。
自然は五感道場です。乳幼児期こそ言葉では表現できない感性によって獲得する「知」が大切なのではないでしょうか。「理屈抜きで自然が好き」という思いと上手な付き合い方を育てる大切な時期だと思います。自然観察はしなやかな体と豊かな感性を同時に「総合的な生きる力」として与えてくれると考えています。
乳幼児は研ぎ澄まされた感性で自然や生きものからのメッセージを受け取っていますので、一緒に観察を楽しむ指導員にとっても「生きものとしての感覚」を思い出すきっかけになっているように思います。
こんな観察をしています新鮮な驚きに触れることで身近な自然の価値を再確認
熊本県
益田 勝行 (ますだ かつゆき)
立田山自然探検隊事務局長。自然観察指導員熊本連絡会所属。モニタリングサイト1000 里地調査(一般サイト:カエル類)に参加。

幼稚園児との観察会のひとコマ。楽しい観察会は、自己紹介から始まる。
私たちの「立田山自然探検隊」は熊本市にある立田山の自然に遊び学ぶことを目的に自然観察会を行っています。
探検隊には乳幼児もたくさん参加します。2歳ごろまでは親から離れられず、3~4歳は興味のおもむくまま動き回り、5歳になると思ったことを口に出してしゃべりはじめます。言葉で説明すれば理解してもらえる年齢に達していない子どもたち相手の自然観察会は、予期せぬ展開の連続で新鮮な驚きに満ちています。
乳幼児期は目の前の生きものを何でも見たがり、触りたがるものです。この時期の子どもたちは、何にでも興味津々。「きも!(気持ち悪い)」という感覚もほとんどありません。話せる子は次から次に「これなあに?」「どうして?」と思い付くままに質問しますが、これこそが自然を観る目と感じる心が育まれている瞬間と感じています。すべてに答えられなくても大丈夫。「不思議だよね」と一緒に観察しながら会話を楽しんでいます。「自然観察してもらう」というよりも「自然遊びを一緒に楽しむ」感覚です。
自然観察指導員である私にとっても、小さな子どもたちの新鮮な驚きに触れることで「どこにでもあるような草花や生きものでも子どもたちにとってはすべてが宝物なんだ」と、見慣れたフィールドの身近な自然の価値を見直すいい機会になります。それが観察会や調査、そして保護活動へのモチベーションにもつながっていると思います。
こんな観察をしています



