法制度への働きかけ

日本自然保護協会(NACS-J)は、自然とともにある社会の実現に向けて、世界の動向を見据え、科学的な知見を基に、国立公園、環境影響評価、絶滅危惧種の保護などの様々な法制度への政策提言を行っています。
自然環境と法制度
日本には、不適切な自然資源利用や開発を抑制するため、環境や生物資源に関連するさまざまな法制度があります。例えば、「種の保存法」は希少な動植物種を指定し、捕獲や取引、生息地の保護を進めることで、野生動植物の絶滅を防ぎます。「鳥獣保護管理法」は、鳥獣の保護と狩猟の適正化のため、鳥獣管理や鳥獣保護区を定めます。「外来生物法」は、侵略的な外来生物を指定し、その防除に向けた規制や指針を示します。開発事業による重大な環境影響を防止するために、あらかじめ調査、予測、評価をし、市民・自治体の意見を聴き、環境の保全をよく考えていように「環境影響評価法(アセス法)」が制定されました。こうした法律は時代の変化やニーズ、問題提起によって制定から改正を繰り返してきました。

日本自然保護協会と法制度
NACS-Jは、シンポジウムでの問題提議、政府への意見や要望、交渉、審議会での解説、国会議員や各政党への説明、要請などを通じて、自然保護のための政策提言と法制度の改善に取り組んできました。1960年代からは、国立公園の適正管理や拡充を求め、「自然公園法」の改正や「自然環境保全法」の制定に貢献。1990年代には生物多様性の重要性を訴え、「生物多様性条約」批准、「種の保存法」改正に影響を与えました。また、1992年には「世界遺産条約」の批准を推進し、白神山地をはじめ各地の世界自然遺産の登録にも寄与しました。2008年には「生物多様性基本法」の成立を後押し、「生物多様性国家戦略」の策定、更新の際には世界基準となるよう提言してきました。
詳しくは「日本自然保護協会の歴史」ページもご参照ください。

今後に向けて
NACS-Jは、ナショナルNGOとして、今後も日本の自然環境を守るため、政府や政策決定者に働きかけ、法制度の強化や政策提言を積極的に進めていきます。例えば、環境影響評価法の見直しを提案し、大規模な風力発電開発による自然破壊を未然に防ぐしくみの改善に取り組みます。また、30by30※の実現に向け、国立公園や自然保護区の拡充や質の向上を推進していきます。自然環境について所管する環境省だけでなく、農林水産省や国土交通省に対しても、生物多様性の保全への具体的な施策を求めていきます。加えて、企業や自治体と連携し、市民参加型の保全活動を拡大し、法制度の改善を社会全体で後押しする環境づくりにもつなげていきます。
※30by30:2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標。
