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2025.04.28(2025.04.30 更新)

「イヌワシ保護増殖事業計画」が29年ぶりに変更

報告

専門度:専門度3

2017年に赤谷の森で巣立った幼鳥(写真:上田大志)

テーマ:生息環境創出生息環境保全絶滅危惧種

フィールド:絶滅危惧種生物多様性保全

イヌワシ保全を全国に展開する重要な変更

1996年に策定された「イヌワシ保護増殖事業計画」(以下、保護増計画)が、2025年4月、29年ぶりに変更されました。保護増計画は、種の保存法に基づき策定され、イヌワシの絶滅を回避するために国が定める重要な計画です。しかし、イヌワシの生息環境が悪化し続けても、この計画は30年近く更新されていませんでした。

国は、保護増計画に基づき「イヌワシ保護増殖事業マスタープラン」(2015年)、動物園などでの飼育下個体群の管理方針の策定(2019年)、「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」(2021年)を策定してきましたが、繁殖成功率は低下し続けてきました。

NACS-Jは2015年から群馬県みなかみ町の赤谷プロジェクトにおいて、生息地保全を推進するとともに、その結果を保護増計画の検討会などに情報提供してきました。また、2022年には、日本初の「浅間山におけるイヌワシ保護増殖事業実施計画」の策定を支援し、環境省との非公式な意見交換も重ねてきました。今回の保護増計画の変更は、今後、イヌワシ保全を全国で展開するために重要と考えています。

浅間山イヌワ復活復活プロジェクトのパンフレットの画像2021年に開始した「浅間山イヌワシ復活プロジェクト」では、カラマツ人工林の伐採による狩場創出が継続されており、今後の展開に期待が持てる状況です

飼育下の個体の野生復帰と、環境の維持・改善

最も重要な変更点は、事業内容に「生息適地又は継続して生息環境整備に取り組んでいる地域において、飼育下で繁殖させた個体の放鳥による野生復帰の取組を検討する」という文言が追加されたことです。全国で、イヌワシの繁殖成功率が低下するだけでなく、つがいの消失が相次ぎ、分布域が縮小している危機的な状況を踏まえての追記です。その他、保護増計画の所管に文部科学省が加わったことや、事業の目標に「本種の生息に必要な環境の維持及び改善」が追記されたこと、連携する対象として民間団体、農林業団体を加えたことは、意義のある変更です。

NACS-Jでは、2023年から宮城県南三陸地域で、イヌワシの飼育下個体群を放鳥するための検討を進めてきました。今年度は、実施計画を策定し環境省などの関連団体との調整を進める予定です。日本のイヌワシを未来へ引き継ぐために、皆様からのご支援をよろしくお願いします。

南三陸谷田丸の画像南三陸地域では2015年から生息環境改善を進めてきたが、イヌワシの出現は減少している

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担当者から一言

出島さんの顔写真

リポーター
生物多様性保全部 出島誠一
群馬県みなかみ町では、昨年4月に「イヌワシストア」がオープンし、赤谷の森を通過する県道の愛称が「みなかみイヌワシライン」になりました。

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