自然環境モニタリング

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渓流環境復元ワーキンググループ

2009年10月26日撤去作業のはじまった茂倉沢No.2ダム 2009年12月1日撤去終了後の茂倉沢No.2ダム

 治山事業による防災機能の向上と引き替えに損なわれた渓流の連続性を回復させ、生物多様性の修復を行います。防災機能を果たす一方で渓流の連続性を阻害している治山ダムの中央部分を撤去して人工的な渓流の段差を解消し、その後の土砂移動や生物の生息状況の変化を注意深く観測しながら、防災機能と生物多様性を両立させる治山事業をすすめています。


茂倉沢治山事業について


撤去作業前の茂倉沢No.2ダム

1.はじめに

 「赤谷の森」の国道17号線から茂倉沢にかけての旧三国街道エリアでは、旧街道を理想的な自然観察路とするための森づくりと渓流環境の復元を目標に掲げておりますが、このたび、渓流環境を復元する取組として、茂倉沢の治山ダムの改修工事に当たり、治山ダムの中央部を基礎部分から撤去し、上流と下流の沢の連続性を復活させ、渓流本来の姿を復元していく取り組みを進めています。


2.茂倉沢治山事業

治山ダムにより砂の堆積が進んだ渓畔

 茂倉沢には本流に12基、支流に5基の治山ダムがあります。これらは、昭和22年のカスリン台風の影響と思われる深層崩壊が渓流周辺に多発したことなどから、昭和20〜30年代に順次設置された施設です。
 設置から50年以上経過し、老朽化が目立ってきたことから、関東森林管理局において、平成17年度に新治地区茂倉沢治山事業全体計画作成調査委員会(現・茂倉沢治山事業施設整備計画調査検討委員会、以下「検討委員会」という。)が設置され、茂倉沢全体の治山事業計画や事業実施のあり方について、様々な角度から検討を進めております。
 一方、人為・人工的手段による渓流環境の改善を図るのではなく、自然本来のプロセスを重視して、渓流環境を復元させる赤谷プロジェクトの理念を反映させるために、赤谷プロジェクト内に渓流環境復元ワーキンググループを平成18年度に設置し、検討委員会等の場を通じて、具体的な提案を行っています。


茂倉沢治山事業の枠組み

図:茂倉治山事業の枠組み


左岸側底抜けの様子

3.治山ダムの中央部撤去

 中央部撤去の対象となる治山ダムは、通称No.2ダムと呼んでいますが、このダムは、平成14年の台風でダム左岸下部が底抜けし、堆積していた土砂のほとんどが流出してしまったため、新たに大量の土砂が流出する危険性は低いと考えています。
 なお、No.2ダム下流200mの地点に、土砂流出を制御する保全工を設置し、防災上の機能を担保しています。


4.防災と渓流環境復元の両立

 工事完了後は、防災と渓流環境復元の両面からモニタリング調査を実施します。中央部撤去に伴う土砂流出への影響、継続的な植生調査、イワナなどの魚類の遡上、渓流に特有なカワネズミや水生生物の生息状況などの追跡調査を行い、蓄積されたデータに基づき、科学的知見から防災と渓流環境復元の両立を可能とする治山事業について、調査研究を進めます。


5.これから

 北海道知床半島でも、北海道森林管理局が世界自然遺産登録を目指して、サケ科魚類が遡上できるよう、河川の工作物を改良した事例(参考:http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/policy/business/pr/siritoko_wh/pdf/kasen-panfu.pdf)がありますが、既存の治山ダムを中央部のみとはいえ、基礎から撤去した事例は全国初の取組です。
 今後は、防災と渓流環境の復元の両立を目指した治山技術の開発を関東森林管理局が中心となって進め、赤谷プロジェクトエリアのみならず、他の渓流における自然再生に役立てていくことを目標としています。赤谷プロジェクトとしても専門の有識者と連携しながら、渓流環境復元のため積極的な提言・活動に取り組んでまいります。


関東森林管理局プレスリリース( 8月31日)
関東森林管理局プレスリリース(10月23日)



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