2006年11月赤谷の日レポート

11月赤谷の日レポート(2006年11月4−5日)

 地元の食堂でも「今年は気持ち悪いぐらい暖かいねー」という会話が聞かれるほど、赤谷の森も暖かい日が多いようです。その影響か、紅葉の具合も例年に比べて綺麗とは言えない様子です。それでも、日差も風も心地よく、落ち葉を踏みながら歩く森は楽しいですね。秋の森を楽しめた二日間ではなかったでしょうか。

ウリハダカエデ ウリハダカエデ
ムラサキシキブ たくみ小屋の冬支度 クサギ"

↑上左と右:ウリハダカエデの紅葉の様子。下左:ムラサキシキブ、下右:クサギ
下中:たくみ小屋に薪ストーブを設置しました。春までのイメージを元に、同じように取り付けようとするのですが意外と難しい。。。ああでもない、こうでもないと言いながら、設置完了です。



ホンドテン・モニタリング

<はじめに>

紅葉の中をサンプリング↓

紅葉の中をサンプリング

 足立先生から今冬のテンの食性を予測するため、昨年主に食されていた食植物とその他の液果(ジューシーな実を付ける植物:甘い必要はないので注意)の実付きの状態を把握して欲しいという依頼がありました。糞(サンプル)に含まれている植物が、そのサンプルからから半径500m以内に存在するかどうかもチェックしたいとのこと。
 サルナシ、ナナカマド、その他の液果等については11月の赤谷の日では既に遅く、調査は困難であること、サルナシはともかくナナカマドその他の液果については、現在の赤谷サポーターにおけるテンモニ隊では、そもそも糞に含まれている種子から樹木を識別するスキルに達していないこと、糞の落ちていた場所から半径500mにその樹を識別することはかなりの労力を要し、テンモニ隊に参加できる人数も限られている現状から、可能な範囲で果実の結実状況も調査することとしました。
 小出俣林道については、11月の赤谷の日では落葉のためカラマツ漸伐前の状況を的確に把握出来ないと考え、一週間前の10月28日に青木・鈴木で調査を行いました。今月は参加人数も少ないので、その他の調査ルートを優先させることとしました。

下を向いて歩くテンモニ隊↓

下を向いて歩くテンモニ隊

4日
1.ムタコ林道(青木・鈴木)

 4日は、午前中にいきもの村の冬支度をサポーター全員で行い、調査は午後からとなったことから、ムタコ林道の橋を中心に調査を行いました。調査結果は、テン23(?1を含む)、イタチ1の計23をサンプリング。テンの食性は、動物5、動物+植物7、植物10(ヤマブドウとサルナシが主)でした。食植物の結実状況は、ツルウメモドキ(橋の下流部と上流部)を確認したものの、糞には含まれていませんでした。ヤマブドウは、含んだ糞を橋の欄干近くで確認し、すぐ近くにで朽ち果てる寸前の房を確認しましたが、豊作か凶作かの判断は出来ませんでした。サルナシは、糞には含まれているものの、どのツルに結実いていたかの確認はできませんでした。
 ちなみに10月の赤谷の日でサルナシが19の糞に含まれていました。10月の赤谷の日の調査が雨だったため、昨年よりサルナシ食のサンプル数は減るのではないかと思われます。


2.合瀬(雨見林道)金井・平井

 調査結果 テン5(1つ?を含む)サンプルを採取しました。
糞に含まれていた食植物は、ヤマブドウとサルナシでした。半径500m以内にヤマブドウとサルナシの樹があったどうかの確認はできませんでしたが、雨見林道に存在ことは確認しています。糞のサンプリング場所は、林道の轍が主でした。雨見林道は、併用林道ですので、車が多く通行します。轍に残された糞をサンプリングすることは困難なようです。

轍のサンプルを発見 轍のサンプルを発見 轍のサンプルを発見

3.いきもの村(青木・鈴木)

集合時間前にいきもの村周辺の県道、旧県道及びいきもの村内にある送電線鉄塔の周辺を調査しました。調査結果は、テン3、?1をサンプリングしました。雨による流出で獣毛のみのサンプリングとなりました。

轍のサンプルを発見

5日赤谷林道
1.ゲートから石積バリケードまで(青木・平井・鈴木)

 調査結果はテン15、イタチ4(?1を含む)をサンプリングしました。食性は、イタチを含め動物8、動物+植物5、植物5(イタチ?は不明)でした。食植物のうちアズキナシ1サンプルは、同定できましたが樹を見つけることは出来ませんでした。ヤマブドウも糞に含まれていました。ヤマブドウは、房が朽ち果てる寸前のものを確認することが出来ましたが、豊作であったかどうかまでは判断できませんでした。ツルウメモドキは、糞に含まれており、また結実状況は良好でした。食動物では、明らかに昆虫と思われるものもありました。
 赤谷林道においても、車の轍でのサンプリングが主でした。ゲートから中間地点まででのサンプリングは、落ち葉の影響もあり、少なかったものの、アカマツ林から石積みバリケードまでは多くサンプルサンプリングすることが出来ました。テンの食植物になるであろう植物としては、ムラサキシキブとエゾエノキの樹を発見しましたが、果実は既に無く、豊作かどうかまでの判断は出来ませんでした。

2.石積バリケードから調査終了地点先まで(金井・長浜)

 調査結果は、テン12をサンプリングしました。なお、調査終了地点先の並トタン(蛇腹状)のカルバートで溜糞5をサンプリグしました。食性は、動物6、動物+植物1、植物5サンプルでした。

3.猛禽チーム(横山・松井)

林道奧の赤谷橋で、テン2をサンプリングしました。食性は、1つは動物+植物、残る1つは不明でした。

(サポーター鈴木)

木の実豊凶調査隊

回収作業中。落ち葉の中から木の実を探す。 ムタコ沢のトラップ群。 内容物をその場で分別

↑左:回収作業中。落ち葉の中から木の実を探す。中:ムタコ沢のトラップ群。右:内容物をその場で分別

秋の紅葉の中、21トラップの内容物を回収しました。予想していた通り、木の実はほぼ0(ゼロ)。回収しながら、カウントも終わってしまうトラップが、多くありました。今年の結果を整理して、来年の調査のための「手引き書」を整理したいと思っています。(サポーター川端)


No.260のコナラの梢。黄葉も今ひとつでした。 No.247のブナの梢。樹冠の輪郭線がはっきり見えます。 No.251のミズナラの梢。 No.248のクリの梢。今年はクリだけが豊作でした。

↑左:コナラ(No.260)、中左:ブナ(No.247)、中右:ミズナラ(No.251)、右:クリ(No.248)

No.267のイヌブナの梢。 No.253のトチノキの梢。葉はほとんど落ちていました。

↑左:イヌブナの梢(No.267)、右:トチノキ(No.253)の梢。葉はほとんど落ちていました。

最大積雪深計づくり

 3回目の冬を迎えるにあたって、初めての試みに挑戦し始めました。それは、手作りのアナログ計測器で、冬の間に最大何cm雪が積もるかを測ってみようというものです。その計測器は、「最大積雪深計」と言って、細い丸太の両側に何本もの針金棒が張り出したアンテナのような形をしています。それを積雪期の間地面に立てておくと、雪の沈降雪圧によって針金が曲がり、春になって雪が解けた時に、どの高さの針金まで曲がっているかで最大積雪深がわかる、という仕掛けです。つくり方はいたって簡単!(でも、たまに日曜大工をやると握力の無さを痛感・・・。)

クリーニング店からもらえる針金ハンガー トンカチで伸ばします 穴に針金を差し込みます

材料/直径7〜8cm・長さ2〜3mほどの丸太1本、クリーニング店でもらった針金ハンガー約10本
道具/ペンチ、トンカチ、穴あけドリル、木工用ボンド
手順/(1)針金ハンガーをまっすぐにのばし、30cmほどの長さに切り分ける。(2)丸太に目盛りをつける。地面に埋める部分を50cmほど残しておいた上で、1m以上のところに10cm刻みで目盛りをつけていく。(3)目盛りの両側に、針金が入る程度の小さな穴を深さ2〜3cmほど開け、ボンドを少しつけて針金を刺していく。(4)測定したい場所に、丸太を立てて出来上がり!
一直線伸ばした針金 出来上がり! 穴を掘って埋めます 雨量計と最大積雪深計

↑左:まっすぐに伸ばした針金 中左:できあがり! 中右:穴を掘って埋めます 右:最大積雪深計と雨量計

この仕掛けは、気象学の研究者によってかつて考え出されたもので、ハイテク機器が開発される以前は、専門的な調査にも使われていたそうです。そこで、AKAYAプロジェクトでは、かつての「技」を取り入れてみようということになりました。まだ製作途中ですが、これを5本ほど作り、プロジェクトエリア内のいくつかのポイントに設置したいと考えています。さて、うまく測ることができるでしょうか? 来年の春が楽しみです!(NACS-J芝小路)


炭俵づくり

 今年の3月、いきもの村に炭窯が完成し、6月には炭が焼けました。この炭を利用する一つの方法として、ミニ炭俵をつくりたいと考えていました。師匠の一人、笛木正幸さんのミニ炭俵を見てから、いつかこれをいきもの村で作りたい!と思い続けていました。

笛木正幸さんの炭俵 笛木正幸さんの炭俵 笛木正幸さんの炭俵

↑左:笛木正幸さんのミニ炭俵(2005年4月撮影) 中:刈ったススキをクズで束ねます  右:スギに括りつけました

来月から本格的に炭俵づくりをするため、今月は材料となる萱の準備をしました。刈った直後のススキでは水分が多すぎ、刈ったものを一ヶ月間倉庫に置いておいては、乾きすぎるということで、刈ったススキをクズを紐代わりにして束ねて、木にくくりつけておきました。うれしいことにススキもクズも、いきもの村には幾らでもあります。さあ、来月から炭俵づくりに挑戦です!(NACS-J出島)



さて、来月は12月、長い冬の始まりですね。小出俣の自然再生試験地では伐採作業が行われ、その様子も見ることができると思います。日中は炭焼きの準備をして、夜は炭俵づくりも行いたいと思います。冬の夜に薪ストーブを囲んで、夜なべ仕事をご一緒に如何でしょうか?


写真/文:鈴木誠樹、青木邦夫、平井希一、川端自人、芝小路晴子、出島誠一

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